貯蓄が伸びないのは「収入が少ないせい」、「忙しくてお金のことまで手が回らないから」と思い込んでいませんか? 今年7月にカクワーズが行った調査(※1)によると、貯まる人と貯まらない人には、生活習慣に大きな違いがあることが明らかに。貯蓄を伸ばしたいなら、そもそもムダを招く習慣が定着していないか、生活を見直す必要がありそうです。
今回は、お金が貯まる人、貯まらない人の行動習慣の違いをデータで検証。貯まる暮らしを作るには、どんな生活習慣が有効なのかを分析してみたいと思います。
年100万円貯めてる人は、どのくらいいる?
今回の調査では、20歳から64歳の男女を対象としています。この中から貯まる人と貯まらない人を区分するために、まず「最近1年間の世帯貯蓄額(※2)」をチェック。このうち、「年100万円以上」と回答した人は全体の16.1%でした。
便宜上、この「年100万円以上」は貯蓄がヘビー級ということで『貯蓄H』、「年25万円以上~100万円未満」はミドル級で『貯蓄M』、「年25万円以下」はライト級で『貯蓄L』、「0円」「赤字」は貯蓄がナッシングということで『貯蓄N』とし、ライト級とナッシングを合わせて『貯蓄L・N』と定義します。
【貯蓄額による区分(全体における割合)】
- 年100万円以上(16.1%)=貯蓄H
- 年25万円以上~100万円未満(23.1%)=貯蓄M
- 年25万円以下(20.0%)=貯蓄L
- 年0円(6.3%)+赤字(5.1%)=貯蓄N
「金額は不明」「答えたくない」の回答者は、貯めているのか貯めていないのか分からないため、今回の分析対象から除外します。
さっそく、『貯蓄H』『貯蓄M』『貯蓄L・N』で、行動習慣にどのような違いがあるか見ていきましょう。
「年100万円以上」貯めてる人は、物が少ない
今回の調査では、合わせて17の行動習慣について質問。年100万円以上貯めている『貯蓄H』で特徴的だった行動習慣は次の通りです。
- 1位「物は少なく持ち、部屋はスッキリさせている」(+11.5%)
- 2位「机やテーブルの上はいつも片づけている」(+8.2%)
- 3位「忙しくても趣味や自分の時間を持っている」(+7.4%)
- 4位「早起きしている」(+6.8%)
- 5位「いつも約束の5分前には到着している」(+5.1%)
( )内の数字は、全体平均との差です。たとえば、今回、全体で最も高かった習慣は「天気予報を見る」でしたが、この習慣は、貯まる人にとっても貯まらない人にとっても1位でしたので、普通に数値だけを見るだけでは特徴がつかめません。そこで平均との差がどのくらいあるかを比較することで、貯まる人にとっての特徴的な習慣はなにかを検証しました。
結果、上記のトップ5の行動をとる人の割合は『貯蓄H』で突出して高く、『貯蓄M』、『貯蓄L・N』との差がついていることが判明。つまり、この5つの行動習慣が『貯蓄H』の特徴であるということです。特に、上位2つの「物は少なく持ち、部屋をスッキリ」「机やテーブルはいつも片づけている」では、その差が顕著です。
事実、貯まる人の家は物が非常に少ない
貯まる人の身の回りはスッキリと片付いている。カクワーズでは10年以上に渡り、多くの貯まる人を取材・調査していますが、その立場から見ても、これは大きく頷ける結果です。
事実、貯まる人の自宅を訪れると、床やテーブルに余計なものは出ておらず、とにかく物が少なくてスッキリ。引き出しやクローゼット、冷蔵庫の中も何がどこにあるか、一目瞭然に整理されています。
一方、貯まらない人の家はというと、これが真逆で驚くほど物が多い。玄関には靴と傘があふれ、冷蔵庫はパンパン。賞味期限切れの食材がごろごろ出てきたり、同じ引き出しからハサミが何本も出てきたりします。
年齢や家族構成に関係なく、また全国どこに行っても、この傾向は驚くほど同じです。
そして、特筆すべきは、貯まる人はもともと部屋が整理されていたわけではない、ということです。もちろん、小さい頃から片付けが好きだったという人もいないわけではありませんが、「元・汚部屋」の住人だった人のほうが多数。
むしろ、余計なものに囲まれていたからこそ、片づけをきっかけに自分のお金のムダに気づけ、そこから家計を劇的に改善できたというケースが非常に多いのです。
物が多いと、あらゆるムダが連鎖する生活に
食材でも服でもなんでも、物が多いと、自分が何を持っているのか把握しきれなくなります。すると、買い足しが必要なものが分からず、家にまだ在庫がある食材を買うミスが増えたり、いつも似たような服ばかり選んでタンスの肥やしを作る結果に。
物が多い部屋では欲しいものもすぐに取り出せず、ストレスも蓄積します。散らかった部屋ではくつろげず、外食や外出が増え、外で使うお金も増加。ムダが連鎖するのです。そもそも、物が多いということは、それだけお金を使っているという証でもあります。
貯まる人の家に、物が少ないのは「生活に必要なもの」をよく見極めているから。身の回りを必要なものに絞り込むことによって、買い足すべきものも明確になるので、余計な出費が減るのは当然といえば当然です。
さらに、スッキリと片付いた空間は「想像以上に気持ちがいい」ので、新しく物を買う際も、「この快適さを失っても欲しいか」と慎重になると言います。結果、本当に必要かどうかを落ち着いて吟味でき、どんどんムダな出費をしない生活になっていくのです。
貯まらない人は、「夜ふかし」である
では次に、貯まらない人に特徴的な行動習慣にはどんなものがあるかもチェックしてみましょう。
『貯蓄L・N(年25万円未満)』の層で、全体平均との差が大きかったもので、データを並び替えてみました。すると、トップにきたのは「夜ふかししがちだ」(+9.2%)。これは、『貯蓄L・N』の中でもダントツに高い行動です。さらに『貯蓄M』や『貯蓄H』を見ると、平均より低い結果。つまり、貯蓄が高い層では夜ふかしを「していない」傾向があるということです。
「夜ふかし」以外の行動については、さほど大きな差がありません。これらのことから、「夜ふかし」は貯まらない人における特徴的な行動習慣であるといえるでしょう。
早く寝れば、ムダをまとめて消せる
夜、遅くまで起きていれば、それだけ光熱費がかかります。1日の疲れをいやすために、多少はゴロゴロする時間も必要かもしれませんが、起きていれば小腹も減るので、酒やつまみ、夜食代がかさむことにも。翌朝寝坊して慌てて家を出れば、朝食も外で済ませたり、忘れ物をして間に合わせを買ったりと、余計なムダも生まれます。
1日で見れば大した金額ではなくても、習慣化すれば月に何万円、年に何十万円という出費に。睡眠不足で体調を崩せば、医療費もかかってしまうでしょう。
こうした出費は嗜好品ではないため、“ムダ遣いをしている”という意識を持ちにくいのが厄介です。気がつくと、「そんなにぜいたくをしているつもりはないのに、なぜかお金がない」状態を招いてしまいます。
早く寝れば、そうしたムダをまとめてカットできるのがメリットです。しっかり睡眠を確保すれば、翌日も朝からテキパキと動け、時間に追われずにすみます。
実際にデータでも、『貯蓄H』には「早起きしている」「予定をこまめに確認している」といった行動習慣が高くあらわれています。早寝早起きで自身のコンディションを整え、時間にゆとりを保つ。予定を確認して、効率のよい1日を意識する。こうした行動が貯まる人の特徴といえ、結果的に余計な出費を出さない生活につながっているのです。
貯めてる男性は、特に「時間の管理能力」が高い
ここまでの分析で、貯まる人は「物が少なくスッキリ」、そして「早寝早起き」であるという特徴がつかめてきました。ところが、この結果をより詳しく見てみたところ、男女では違いがあることが判明。「物が少なくスッキリ」はより女性で、「早寝早起き」はより男性の貯まる人にとって特徴的な行動習慣だったのです。
『貯蓄H』『貯蓄M』『貯蓄L・M』を、男女に分けて分析した結果をご覧ください。
グラフは、男性の『貯蓄H(年100万円以上)』で、平均より高く出ている行動の順に並べ替えたもの。最も高かったのは、「早起きしている」で+10.2%。他層と比べても、やや抜きん出ています。さらに、「夜ふかししがちだ」は平均より14.5%も低い。これも、他層と比べてダントツです。「早寝早起き」は貯まる男性で非常に特徴的な行動習慣といえます。
さらに男性の『貯蓄H』では、「いつも約束の5分前には到着している」(+9.0%)、「忙しくても趣味や自分の時間を持っている」(+5.8%)と、『時間』に関する行動がトップ3を占めており、貯まる男性は、時間を管理する力に長けているといえそうです。
一方、「物を少なく持ち、部屋をスッキリさせている」や「机やテーブルはいつも片づけている」が高かったのは、女性の『貯蓄H』。女性は「物」、男性は「時間」の管理が、貯蓄額により影響をもたらすと考えられます。
男性は早寝早起きで、貯蓄効果をさらに上げられそう
実際に、貯まる人の生活を取材していても、大半の人が早寝早起きです。早く起きて、仕事や予定の段取りを確認し、効率よく1日を動かしています。
それがなぜ、貯蓄によいのかというと、前述した通り、先を読んで行動することで、時間に追われなくなるということが大きいのだと思います。
時間ややることに追われて焦ると、お金の使い方は雑になります。早起きして、やることを早め早めに片づけ、自分にゆとりを保てると、お金も落ち着いて使え、ムダな出費のでない1日が続くのです。
今回の調査結果から、特に「早寝早起き」は男性にとって貯蓄に有効な行動習慣であることが分かりました。お金の見直しをする場合は、家計の数字ばかりでなく、早寝早起きにも取り組んでみると、より効果を発揮できるはず。まずは今より「30分早い生活」に、トライしてみませんか?
※1 2020年7月実施。対象者は全国20歳~64歳の男女900人。インターネットリサーチ。調査企画・データ提供:株式会社カクワーズ
※2 調査時の「貯蓄額」の定義:最近1年に収入から貯蓄した世帯の貯蓄額。預貯金のほか、積立投資、貯蓄型保険などへの積立額など含む(株などの資産は含まない)。同居でも親や兄弟の貯蓄額は含まないものとする。
【新時代のマネー戦略】は、FPなどのお金プロが、変化の激しい時代の家計防衛術や資産形成を提案する連載コラムです。毎月第2・第4金曜日に掲載します。アーカイブはこちら