今年になって、公務員の人気が高まっているらしい。なぜか? 近々、公務員の給料が上がるとか、男性公務員にモテ期が訪れた―といったことではない。いや、ひょっとすると、近い将来、モテ期はやってくるかもしれない。
不況期にはよく見られる現象ではあるが、就職先としての公務員人気が上がっているというのだ。
リンクモンスター社が来春卒業予定の大学生を対象に行った「就職したい企業・業種ランキング調査」によると、1位:「地方公務員」(回答率26.7%)、2位:「国家公務員」(同16.8%)となっている。また、LINEリサーチによる「高校生のなりたい職業ランキング」によると、女子高校生では、1位:「看護師」(7.5%)、2位「教師・教員・大学教授」(6.9%)、3位「国家公務員・地方公務員」(5.8%)、男子高校生では、1位「国家公務員・地方公務員」(6.7%)などとなっている。
そして驚くなかれ、いやこのご時勢、むしろ当然か、クラレ社が4月に発表した「新小学1年生の将来就きたい職業 親の就かせたい職業」によると、親が男の子に就かせたい職業では、1位:「公務員」(19.8%)、2位:「医師」(8.6%)、3位:「会社員」(8.2%)…、親が女の子に就かせたい職業では、1位:「看護師」(17.9%)、2位:「公務員」(11.9%)、3位:「薬剤師」(7.9%)…となっている。
もっとも、親が子どもに就かせたい職業は、ここ20年ものあいだそれほど大きな変化はないが、筆者にはたいへん気になる点が一つある。それは、男の子と女の子とでは、ベスト20とベスト10の違いはあれど、「就きたい職業」「就かせたい職業」とも「教員」人気が急落していることだ。
「教員」は子どもたちにとっても、もはや「なりたい職業」ではなくなってきているということ以上に、「親が就かせたい職業」ですらなくなってきていることから、長時間労働、パワハラ、教育格差(学力低下)、改革の遅れ…といったさまざまな問題が透けて見えるようで、憂慮に堪えない。
とは言え、女子高校生の「なりたい職業ランキング」の2位は「教師・教員・大学教授」であり、「教員も公務員のうち」と解釈すれば、社会人間近の世代には人気職種の一つであり、「まだ大丈夫かな」という感覚もある。
地方出身者が東京で就職することの合理性とは
一方で、同じ公務員志望でも、子どもたちの志望動機は10年以上前とはかなり変化しているのではないかと感じている(親のほうは相変わらずのようだが)。あくまでも実感値ではあるが、「地域・地元に貢献したい」「社会貢献できる仕事に就きたい」「親と一緒に暮らしたい」と考える学生が増えているように感じている。実際―本連載の第20回でも少し触れたが―「新卒で地銀に就職したが、仕事の中身に失望して数年で退職を決め、公務員試験合格を経て転職した」という例が増えているという。
筆者が思うに、志望動機の変移は東日本大震災に起因するところが大だろう。そして、今般のコロナ禍である。筆者は、30年以上前に地方政令都市から東京に就職してきた口であるが、その当時は公務員になろうなどとは露ほどにも思っていなかった。だが、今の時代なら(職種を度外視すれば)地元就職は大ありだと思える。
また、年収に関しては、公務員よりも民間のほうが高いと思われがちであるが(かつてはそうであったし、都会ほどその差は大きかった)、それは大企業に限ってのことである。
都道府県別にサラリーマンの平均年収と地方公務員の年収を比較してみると、すでに大きく逆転していることが分かる。ちなみに、筆者の出身地では、サラリーマンの平均年収が約490万円であるのに対し、地方公務員の年収は660万円余りである(ただし、公務員の都道府県別の年収は中心化傾向が強く、700万円以上を望むには出世しなければならない)。
大学入学時や就職時に東京に出てきて、家賃(住宅ローン)を払い続けながらの年収500万円と、親元で暮らす(独立しても安い家賃で暮らす)年収600万円とでは、どちらにゆとりがあるか。そこには「公務員は安定だから」というだけではない歴然さがある。
これはあくまでも筆者の主観だが、高給が取れる企業に就職できない限り、地方出身者が東京で就職することに合理性はないし、高給が取れる仕事に就ける見込みがない大学に進学する優位性もない。
公務員として就職するためのルート
さて、大括りに「公務員」と言っても、職種はさまざまである。一般的には役所勤めが想像されるが、先に触れたように、小・中・高校の教諭も公立であれば公務員だし、看護師や管理栄養士、理学療法士なども公立の医療機関に勤めていれば公務員である。税務職員、裁判所の事務官、衆参両院の事務局職員や、自衛官・警察官・消防官(救急救命士)・食品衛生監視員といった国民の生命と安全を守る仕事も公務員である。
では、昨今の公務員人気のなか、高卒または大卒資格で公務員として就職したい場合、どんなルートがあるのだろうか?
なお、ここからは、話を単純にするため、看護師や国税専門官といった専門性の高い職種や、国家公務員の総合職を筆頭とする難易度の高い職種ではなく、国家公務員の一般職(大卒程度、高卒・社会人)と地方公務員の行政職(事務系職種/初級、中級、上級)、及び難易度的にそれらに準ずる公務員試験を念頭に話を進める。
大学全入時代となって久しい折、高校3年生のうちに、あるいは高校卒業直後に、国家公務員の一般職(高卒・社会人)や地方公務員の行政職(初級)の試験を受けて公務員になろうとするケースは少ないだろう。たいがいは、大学・短大・専門学校在学中に国家公務員の一般職(大卒程度、高卒・社会人)、あるいは地方公務員の行政職(事務系職種/中級、上級)を受験することになる。
もし、あなたの子どもが高校生で就職先の第一志望が公務員なら、とくに地元の地方公務員を考えているのなら、「少しでも上位の大学へ」とばかりに大学受験にばかり血眼になるのは、親子共々止めたほうがいい。
偏差値的には中堅以下が中心となるが、公務員試験対策講座を開設している大学・短大は何百校とあるし、学科として公務員専攻を設置している専門学校もある。場合によっては2年間、短大か専門学校に通いながら、大学編入試験(3年次)と公務員試験の両立てで学生生活をスタートするという手もある。
一般職の公務員であれば、必ずしも学歴がものを言うとは限らない。一次選考を通過できても人物重視の二次選考(面接)で不合格となることも少なくはない(仄聞するところによると、二次選考重視の傾向が高まっているようだ)。実際、筆者が知るところで、MARCHに在学中の学生(男)が一次選考を通過しながらも二次選考で不合格となった例がある(けっきょく留年して、翌年に別の県に合格したのであるが)。
ルートごとに、必要とされる学力などが異なってくるため、向き不向きがあることを踏まえ、子どもそれぞれにとっての最適解を見つけたい。
【受験指導の現場から】は、吉田克己さんが日々受験を志す生徒に接している現場実感に照らし、教育に関する様々な情報をお届けする連載コラムです。受験生予備軍をもつ家庭を応援します。更新は原則第1水曜日。アーカイブはこちら