今年4月から、小学生5年生以上の教科としての英語が始まりました。成績もつくので、イヤでも英語教育をどう進めていくかを考えなければならなくなってきましたね。
本来、「学校での英語教育」と塾や英語学童などの「学校外の活動での英語教育」は切っても切れない関係にあり、一緒に語られるべきです。しかし、小学校の授業の進め方や制度については、保護者の考え方や影響力が及びにくいのが現状です。そのため、今回は学校外での活動で学ぶ英語に焦点を絞り、子供が英語を身につけるためのコツを考えます。本気で学校外の活動に力を入れたら、小学校の英語は楽勝になると思いますよ。
我が子には「英語嫌い」になってほしくない
「英語嫌い」の大人が多いというのが私の実感です。「英語はできたらいいなと思うけど諦めている」「憧れるけど、英語アレルギーになってしまった」などの声をたくさん聞いてきました。
皆さんはいかがですか? 我が子には、将来の選択肢を広げるためにも英語ができるようになってもらいたい。たいていの親はそう考えますよね。
子供の場合、いったん感情的に英語を嫌いになってしまうと好きになるのは大変です。
高校生以上であれば、多少「苦手」と思っても、ロジックや頭で目的を理解して取り組めます。「受験のために」「プログラマーは英語ができないと不利だから」「昇進するために」…など、自分で自分をコントロールしながら、モチベーションを与えつつ頑張れます。一方、年齢が小さければ小さいほど自制する力は弱く、「嫌いだけど頑張ろう」とは思いにくいからです。
我が子が、英語嫌いな大人たちと同じ道をたどらないようにするためには、工夫が必要なのです。
やる気の歩調がズレると「詰め込み」になる
「我が子には英語が得意になってほしい」と親が力んだ結果、子供が英語を嫌いになってしまいそうなケースがありました。
私が運営するインターナショナルスクール「GGIS」に通っている、れいかちゃん(仮名・4歳)のご両親は、入学当初から英語教育に対する熱量が高く、やる気満々でした。教室で使っている教科書を同じものを買って自宅で復習したり、高価な英語教材を購入して帰宅後も練習していたそうです。
れいかちゃん自身も期待に応えようと一生懸命でした。実際、ご両親の努力の甲斐もあり、れいかちゃんの英語力は飛躍的に伸びました。
でも、GGISの先生には、れいかちゃんが心から楽しんでいないように見えたようです。中学生のような年齢になっても人間はまだまだ、愛だったり、人間的な関わりだったり、感情の共有などを求めるものです。先生たちには、れいかちゃんが、親との勉強の時間ではなく、親との他愛もない何でもない時間を欲しがっているように映りました。
れいかちゃんはまだ幼いので言葉にはしないかもしれませんが、いつかそのモヤモヤした感情が「英語が嫌い」という言葉と結びついてしまったら、もったいないことになります。
「長期的にみて、このままだと良くない」「家では無理せず、英語教育はGGISにお任せ下さい」とご両親に提案し、家庭での宿題や特訓はしばらく辞めてもらいました。
保護者にやる気があることは悪いことではないです! れいかちゃんも、あと数年したら、家での英語学習が嬉しいと思える時が来るかもしれません。今はたまたまそのタイミングではないというだけのことです。
英語が好きでなくてもいい 継続なくして習得はない
特に年齢が小さければ小さいほど、「好き!」「楽しい!」という気持ちが大きなモチベーションになります。この感情を抱くポイントが英語だったり、その授業内容である必要はありません。
GGISのアフタースクールに通いはじめたばかりの光太君(仮名・4歳)は、最初の一週間、人見知りで来たくなくて、体いっぱい使って抵抗していました。
そんなときのお母さんのアイデアがアッパレ! スナックタイム用に大好きなキャラクターのお菓子を毎日もたせたのです。そうです、モノで釣ったのです。
最初はそのお菓子を食べられること以外にモチベーションはありませんでした。でも、時が経つにつれ少しずつ英語が理解できるようになり、お友達もでき…アフタースクールに行く楽しみができたのです。光太君の今のモチベーションは、スナックタイムに加えてクラフトの時間です。徐々に他のモチベーションを見つけることができ、楽しく通ってくれています。ご褒美に頼りすぎるのは良くないですが、お母さんの工夫が継続につながった例です。
英語教室で「楽しい」「好き」を喚起するポイント
- ALT(外国語指導助手)がご褒美にくれるシールが好き
- 先生自身が好き
- クラフトの時間が好き
- スナックタイムが好き
- 教室で開催されるイベント(ハロウィンやクリスマス会など)が好き
- 教室においてある特定の本が好き
理由はなんでもよいのです。給食や体育だけを楽しみに学校に来ている同級生、いましたよね! 継続できなければ、習得はできません。何事にも共通しますが、まさに子供の英語習得は「好きこそものの上手なれ」なのです。
ワークシートの“罠”
- 「ワークシートをもっと取り入れてほしい」
- 「問題集を使ってほしい」
GGISでも、保護者からこのようなリクエストを受けることがあります。実際、ワークシートを使うこともありますし、英検対策の問題集を授業で使うこともあります。しかしそれ以上に、英語を使ったコミュニケーションを重要視しています。
これはインターナショナルスクールだからではありません。文部科学省の新学習指導要領でも「コミュニケーションを通した学び」が重要とされています。いわゆる「使える英語」を学びましょう! と国の方針も変わってきているのです。GGISでは学習指導要領が変わる前から、使える英語教育を大事にしています。
言語活動を通して英語を学ぶというのは、先生が一方的に知識を伝授するというやり方とは大きく違い、一人一人が積極的に関わりを保つ必要があります。
サラッと「一人一人が積極的に」と書きましたが、実際にはこれが難しい。なぜなら、英語が嫌いだと積極的になれないからです。そのためにも英語を嫌いにならないでいる必要があります。
では国も推進しているのに、なぜワークシートの積極的活用をリクエストする保護者がいるのか…。これは「コミュニケーション」が目に見えにくいからだと思います。子供たちも、学校と家庭で、英語と日本語を使い分けています。すると親はどこまで学んでいるのか不安になります。ワークシートをリクエストする方がいるのも納得です。
ワークシート自体が悪いわけではありません。ただ、インタラクティブに学ぶこととワークシートや問題集に取り組むことと、どちらが楽しいかといえばやはり前者です。自らワークシートに取り込む小中学生は、やはり少数派です。そのため授業の活動の大部分にするものではないと考えています。復習には向いていますので、要所要所で導入していくと効果的かもしれません。
英語とは長い付き合い
まずは好きになって、積極的にコミュニケーションを通して自ら学ぶ。これが、これからの英語の学び方です。
蛇足ですが、そんな学び方をしてきたGGISのアフタースクールに通う小学生の保護者から「英語が上達しすぎてテストの点数が取れない」という面白いお声がありました。
【問題】次の日本語をローマ字で書きましょう
▼パソコン
- 正しい答え: pasokon
- GGISの生徒の答え: computer
▼白
- 正しい答え: shiro
- GGISの生徒の答え: white
世界で活躍するためには、英語はなくてはならないスキルです。英語は、子供がながーく付き合う大切な「相手」です。英語嫌いにならず、楽しく前向きに取り組めるよう、家族でどう付き合っていくか、一度ぜひ話し合ってみて下さい。
【グローバルリーダーの育て方】は、100%英語環境の保育園やアフタースクールを経営する女性社長・龍芳乃さんが、子供が世界で通じる「人間力」「国際競争力」をどう養っていくべきかを説く連載コラムです。アーカイブはこちら