5時から作家塾

自宅にいながらジム気分を味わえる 今、ペロトンが熱い

岡真由美

 冬が近づき気温が下がったためか、アメリカでは新型コロナウイルスが再び勢いを盛り返している。バスケットボールなどの屋内スポーツを制限する動きもあり、徐々にクラスを再開していたスポーツジムも再び厳しい状況に立たされている。さらに寒くなれば、温暖な地域を除けば、アウトドアスポーツも楽しめなくなるだろう。

 そうした状況の中、少しでも身体を動かそうと、自宅でエクササイズをする人が増えている。ユーチューブやズームを利用したクラスを受講する人も多いが、今、アメリカや欧州で注目を集めているのが「ペロトン(Peloton)」だ。

 ペロトンは、ヨガや各種エクササイズクラスをオンラインで提供するだけでなく、専用のエクササイズバイクとトレッドミルも合わせて提供している。これらを購入し会員登録をすると(有料)、自宅にいながらにしてスポーツジム気分が味わえる。クラスはオンデマンドなら24時間受講が可能、もちろんリアルタイムのライブクラスにも参加できる。バイクなどを購入せずに、デジタル会員となることも可能(月額12.99ドル)だが、バイクやトレッドミルを合わせて購入する会員が圧倒的に多いようだ。

 ペロトンが販売する専用エクササイズバイクは現在、オリジナルの「バイク」と、夏に登場したばかりの機能向上した新モデル「バイク+」の2種類があり、前者は1895ドル、後者は2495ドル。トレッドミルの「トレッド+」は4295ドルと、いずれも決して安くはない。しかし特にバイクは大人気で、原稿執筆時点(11月初め)では、「バイク」は注文してから納品されるまで5週間から10週間、「バイク+」に至っては納品まで12週間以上かかるという。ちなみにトレッドミルの廉価版「トレッド」(2495ドル)は、2021年初めに発売予定だ。

 ではなぜペロトンがこれほどまでに人気を集めているのだろうか。

 一部の人々を除けば、エクササイズを継続するのは簡単なことではない。特に自宅で、たったひとりで毎日運動するというのは、なかなかハードルが高い。

 ペロトンのバイクやトレッドミルの前面には大型のタッチスクリーン(バイクは22インチ、バイク+は24インチ、トレッド+は32インチ)が搭載されていて、この画面に映し出される動画を見ながらバイクを漕いだり、トレッドミル上を走ったりする。前述したようにクラスはライブのものと、いつでも好きなときに視聴できるオンデマンドとがあり、自分のスケジュールに合わせて運動することが可能だ。

 オンデマンドもいいが、スポーツジムのクラスを受けている感覚を味わいたいなら、ライブクラスの受講がお勧めだ。画面右端には現在同じクラスを受けているメンバーのユーザー名とデータ(達成度など)が表示される。表示するメンバーは年齢や性別などによって自分で選ぶことができ、「頑張っている仲間」に声援(SNSの「いいね」のようなもの)を送ることもできる。つまり自宅にいながらにして、ひとりではなく、仲間とともにエクササイズしている気分になれるのだ。会員同士によるコミュニティも形成されており、いわゆる「オフ会」のような集まりもあるらしい。

 また自分で目標を設定、エクササイズした時間や消費カロリー、心拍数、エクササイズの難易度などがすべて記録され、目標を達成すればバッジなどがもらえる。

 そして魅力的な有名インストラクターを30人以上と数多く揃えているのも、ペロトンの人気のひとつだ。

 ニューヨークを拠点とするペロトンは2012年創業、2013年にクラウドファンディングサイト、キックスターターで資金を獲得。当初は米国のみで事業を展開していたが、2018年にはカナダとイギリスに進出した。その後ライバル会社の買収などを経て順調に事業を拡大、2020年に入ってからは新型コロナウイルスの影響で人気が爆発、5月には株価が36%増も上昇した。

 新型コロナウイルスが沈静化しても、人々はジムへ戻らないかもしれない。(岡真由美/5時から作家塾(R)

5時から作家塾(R) 編集ディレクター&ライター集団
1999年1月、著者デビュー志願者を支援することを目的に、書籍プロデューサー、ライター、ISEZE_BOOKへの書評寄稿者などから成るグループとして発足。その後、現在の代表である吉田克己の独立・起業に伴い、2002年4月にNPO法人化。現在は、Webサイトのコーナー企画、コンテンツ提供、原稿執筆など、編集ディレクター&ライター集団として活動中。

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