禁煙のカギは支援者のレベルアップ
これまで何度か、たばこの有害性について書いてきたが、たばこをやめると、どんな効果があるだろうか。
まず、周囲に対して受動喫煙を強いることが全くなくなり、たばこが原因の火災もなくなる。厚生労働省の「生活習慣病予防のための健康情報サイト・e-ヘルスネット」には、後述するような禁煙の健康効果が掲載されており、10年程度でさまざまな病気のリスクが非喫煙者のレベルに近づくという。
また、禁煙すれば、たばこを買う必要がなくなる。1日1箱吸っていた人が、たばこをやめると、たばこ1箱500円として、ひと月で1万5000円、1年で18万円の出費が節約できる。
このように、たばこをやめると、健康上も経済的にもよいことは誰もが理解できるが、実際は、なかなか難しい。たばこがやめられないのは、たばこに含まれるニコチンが、脳内でニコチン受容体に結合してドーパミンを放出させることで、快楽を感じるからである。この状態をニコチン依存症といい、WHO(世界保健機関)はこれを病気として認定しており、わが国では健康保険による治療を受けることができる。
「禁煙は簡単だよ。何度でもできるから」といった小話があるほど、喫煙者が一人で取り組むのは難しいことであった。しかし最近は禁煙外来で薬を使った禁煙治療が行われるようになり、禁煙成功率は70%程度に高まってきた。医師が処方する禁煙補助薬にはニコチンパッチとバレニクリンの2種類がある。前者はニコチンを補いながら体内のニコチン濃度を徐々に下げていく。後者は飲み薬で、日本では車を運転する人には処方しないことになっている。禁煙成功率は同程度とされ、禁煙外来以外では、薬局で一般用医薬品として販売しているニコチンガムを利用し、薬剤師の指導を受ける方法もある。
こうした治療に関わる医師、薬剤師、看護師らの役割はますます重要になってきている。禁煙治療や禁煙支援に従事する人々の研修の場として日本禁煙科学会では「全国禁煙アドバイザー育成講習会」(以下、アド講習会)を開催、「禁煙支援士」の認定試験も行っている。
群馬県内では、同学会、群馬禁煙支援医歯薬ネット、高崎健康福祉大学などが共催で、平成21(2009)年11月15日、初の「アド講習会in群馬」を開催し、以来、毎年1回同大学で実施している。今年も新型コロナ感染症対策を講じた上の対面方式で11月8日に開催した。講師に、日本禁煙科学会理事長・高橋裕子先生、群馬県医師会副会長・川島崇先生、群馬県薬剤師会副会長・島田光明先生を招き、禁煙支援の実際、加熱式たばこの最新情報、新型コロナ対策と禁煙支援、薬局における禁煙支援などを学んだ。
職種別参加者は医師5人、薬剤師36人、看護師・保健師が5人、事務部門1人の計47人。禁煙治療においては、禁煙に挑戦する患者を支える医療職の言葉が重要な役割を果たす。禁煙支援者のレベルアップにつながる研修会は、今後も継続的に開催していきたいと考えている。(高崎健康福祉大教授 東福寺幾夫)
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■たばこをやめた場合の変化
《8時間後》血中の一酸化炭素濃度が下がり、酸素濃度が上がる
《24時間後》心臓発作(狭心症・心筋梗塞など)の可能性が下がる
《数日後》味覚・嗅覚が改善し、歩行が楽になる
《2週間~3カ月後》心臓や血管などの循環機能が改善する
《1カ月~9カ月後》咳や喘鳴(ぜんめい)が改善、気道の自浄作用も改善して感染しにくくなる
《1年後》軽度・中度のCOPD(慢性閉塞性肺疾患)患者の肺機能が改善する
《2~4年後》狭心症や心筋梗塞などのリスクが喫煙継続時に比べ35%下がる
《5~9年後》肺がんのリスクが喫煙継続時に比べ低下する
《10~15年後》さまざまな病気のリスクが非喫煙者レベルに近づく