企業には、従業員の労働力の確保や定着、労働意欲の向上などのため、賃金とは別にさまざまなサービスなどを提供する「福利厚生」という制度があります。ところが、せっかくの福利厚生を利用していない人も意外と多いようです。家計改善のための節約や資産形成の一助にもなる福利厚生制度にもう少し目を向けても良いのでは…?
資産形成に福利厚生制度を使わないなんてモッタイナイ
福利厚生は大きな分類として2種類あります。
ひとつは法律で定められている「法定福利」。厚生年金保険料、健康保険料、介護保険料については保険料の2分の1、雇用保険については3分の2、労災保険、子ども・子育て拠出金については全額を、勤務先が負担してくれています。従業員の意思にかかわりませんし、従業員負担分は給与天引きされているので福利厚生と知らない人も多いですが、保険料負担が半額以下で済んでいるのは、実は福利厚生だからです。
もうひとつが「法定外福利」。企業独自で設定しているので都の範囲は多種多様です。
その中で、特に資産形成の一助となるのが「持株会」や「選択制DC(確定拠出年金)」ではないでしょうか。資産形成の相談の時には持株会や選択制DCはどれくらい拠出しているかを伺うようにしていますが、持株会の人気は二極化していると感じます。
▼持株会の株を売却して子どもの教育費に
持株会は、すでにやっている人は積極的にやっていますが、そうでない人が口を揃えたように言うのが「給与も会社、株も会社、会社と心中したくはない」。確かにそれも一理あります。ただ、このように考えている人たちの大半は、無意識のうちに、株を「売却する」というイメージが抜け落ちています。持株会というと毎月定期購入してはいますが、売却してはいけない、売却できないというものではありません。そこで筆者は、ある程度資産として占める割合が大きくなってきたら売却することも視野に入れれば良いのではと伝えています。
たとえば教育資金としての活用です。学資保険、子ども保険などの加入もありますがお子さんが生まれてすぐに加入せず出遅れてしまった場合でも、10年くらい持株会で毎月3万円程度購入すると、投資元本で約360万円。また奨励金を出している企業も多く、中には社員拠出額の10%近い奨励金を出すところもあります。児童手当と合わせれば中学卒業までに500万円以上を準備することも夢ではありません。
もちろん株ですので評価額は上下しますが、そもそも持株会の購入はドルコスト平均法(定期定額購入)ですから、それ自体、長期的な運用を目指す人にとっては王道の買い方といえます。また奨励金は、言い換えれば、約束された利益としてリスクヘッジの役割も果たします。
子どもの教育費がかかる頃に一部売却・換金して充てれば、預貯金を払い出さなくても済みますし、世帯の資産のうち持株会比率を下げることもできます。買いながら売却して使うこともアドバイスすると、言われてみればそうだと納得する人も多いのです。
退職金制度として企業型DCを導入している企業のほか、福利厚生として選択制DCを用意している企業もあります。しかし老後資金づくりがピンとこないのか、活用していない人も少なくないのです。掛金は全額所得控除、運用中の利益は非課税、受取り時の税制優遇など、自営業と違い節税が難しいサラリーマンは、数少ない節税効果のある選択肢を活用しないと効率の良い資産形成ができません。
また海外転勤の可能性がある人に知っておいてもらいたいのが、「国内非居住者」の扱いです。
資産運用として一般的に証券会社などで株や投資信託を保有していても、海外転勤などで国内非居住者となってしまう場合は、金融機関に申告する必要があります。それによりその期間は日本国内での投資が制限されます。金融機関によって扱いは異なりますが、たとえば口座自体を閉鎖しなければならない、特定口座は維持できない、場合によっては売却するしかないなど、「貯蓄から投資へ」を実践し、証券投資に力を入れている人にとってはかなり痛いルールです。
しかし、持株会、確定拠出年金への拠出については海外赴任中でも可能なのです。海外転勤の可能性がある人にとって運用を継続できるメリットは大きいと筆者は考えます。
長期にわたる費用こそ福利厚生制度でコストダウン
もう一つ福利厚生で残念に感じるのは、団体保険や慶弔関連について知っている人が少ないことです。保険加入や見直しも相談希望の多いテーマですが、勤務先の団体保険やグループ保険があればまずそこから検討しましょう。勤務先を通した契約は団体扱いとなり、それだけで保険料が割引されます。
▼損害保険は多くの人がオトクを実感できる
損害保険であれば、自動車保険や火災保険などは多くの人が対象になりますよね。我が家も夫の団体保険で自動車保険のオトク度を実感しています。
▼公的な医療保障をベースに団体保険でカバー
医療保険についてもしかりです。民間の保険に目を向ければ、もちろん圧倒的にバラエティに富んでおり、団体保険にはない保障を確保することもできます。しかし健康保険という公的保障がありますから、その上で最低限必要な医療保障をまずは団体保険などでカバーすることで保険料負担を抑えることも可能です。企業によっては民間の保険を従業員向けにカスタマイズした商品を提供しているところもあるようです。
▼慶弔制度で死亡保障の必要額は大きく変わる
また、生命保険の死亡保障について検討する際、必ず必要となるのが勤務先の慶弔制度の情報です。自分が亡くなった時に勤務先からどれくらいお金を支給されるのかを知らない従業員に制度を説明すると、「こんなにもらえるんですか」と驚く人が多いことに逆に筆者も驚いています。公的保障(遺族年金)のほか慶弔制度を考慮することによって、死亡保障の必要保障額は大きく変わります。シンプルな死亡保障であれば、こちらも団体保険があると思いますので、まずは検討してみましょう。
保険料のように長期にわたる支出こそ、コストダウンの効果は家計改善に直結します。
福利厚生制度で身体や心の健康も確保
冒頭でもご紹介したように、法定外福利は企業によってさまざまですが、スポーツジムや宿泊施設との提携、パック旅行の割引などの余暇関連メニュー、人間ドック費用や予防接種費用の補助など健康関連メニューは比較的多くの企業で採用しています。身体や心が健康であることが、実は一番お金がかかりません。
ちなみに、やや手前味噌にはなりますが、筆者がコラム内で書いている「企業でのFP相談業務」も、福利厚生のメニューのひとつで携わっているものです。最近ではこのような生活設計支援や介護施設優先入居など、昔はなかった新しいサービスやユニークなサービスも提供されています。地味な存在ではありますが、勤務先の福利厚生制度を今一度確認してみてはいかがでしょう。
【新時代のマネー戦略】は、FPなどのお金プロが、変化の激しい時代の家計防衛術や資産形成を提案する連載コラムです。毎月第2・第4金曜日に掲載します。アーカイブはこちら