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たかが炭酸水、されど炭酸水…コロナ禍で「無糖炭酸水」が売れているワケ

SankeiBiz編集部

 清涼飲料メーカー各社の出荷数が新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出自粛などの影響で前年を割り込む中、「無糖炭酸水」が大きく伸長している。テレワーク(在宅勤務)中の気分転換にと、爽快感のある無糖炭酸水を好んで飲む人が増えているようだ。特に売り上げを大きく伸ばしているのが、少量の果汁やフルーツの香りなどを加えたフレーバー商品だという。たかが炭酸水、されど炭酸水。炭酸の強さや容器、フレーバーには、開発関係者の並々ならぬこだわりが詰まっていた。

無糖炭酸水の開発に携わるサントリー食品インターナショナルブランド開発事業部の村上公規さん(SankeiBiz編集部)
「サントリー天然水 スパークリング」シリーズの中でも「レモン」(中)が好調で、過去最高の売り上げを記録する見込みとなった

オンとオフを“スイッチ”

 炭酸飲料といえばかつて、甘味や酸味で味付けされたサイダーやコーラが主流だったが、近年は無糖炭酸水が急伸。一般社団法人全国清涼飲料連合会によると、「プレーン炭酸水」と呼ばれる無糖炭酸水の生産量は、2009年の3万9500キロリットルから19年には31万3700キロリットルとなり、10年間で約8倍に拡大した。微量の果汁やフレーバーを加えた炭酸水も、14年の11万5800キロリットルから19年には22万2000キロリットルと5年間で約2倍に増加している。

 コロナ禍で飲料市場全体ではダウントレンドが続いているが、無糖炭酸水の勢いは衰えず、堅調に売り上げを伸ばしている。中でも過去最高の売り上げを記録する見込みなのが、「サントリー天然水 スパークリングレモン」だ。

 「テレワークが始まって新しいライフスタイルとなり、炭酸水でリフレッシュしたいというニーズが高まっています。ずっと家にいるとオンとオフの境目が曖昧になりますが、炭酸水が生活のリズムのスイッチを入れることに寄与しているようです」

 サントリー食品インターナショナルブランド開発事業部の村上公規さん(34)はこう分析する。コロナ禍で閉塞感が漂う中、お茶や水から、すっきりと飲める炭酸水に乗り換えるユーザーが増え、家庭内での消費が拡大しているという。

 無糖炭酸水。読んで字のごとく、水に二酸化炭素を圧入しただけの商品に思えるが、さにあらず。村上さんは「炭酸の強さが重要で、ガスの刺激体感が強いことが一つの価値になっています。市場を席巻しているのは圧倒的に『強炭酸』。刺激は強ければ強いほどいいです」と解説する。無糖炭酸水は飲料メーカー各社から発売されているが、「一番のこだわりは、南アルプスの天然水を使った炭酸水ということです。水のおいしさを大事にしながらも、ガス圧の刺激を備えた商品に仕上げています」と胸を張る。

 1991年に「南アルプスの天然水」として全国発売されると、南アルプスの花崗(かこう)岩によって磨き上げられたミネラルウオーターは人気を博した。のちに採水地の異なる「奥大山の天然水」、「阿蘇の天然水」がラインアップに加わり、今年11月から商品名は「サントリー天然水」に統一された。サントリーのミネラルウオーターは来年30周年の節目を迎えるが、今も南アルプスの清冽(せいれつ)な水のイメージを重ねる消費者は少なくない。

容器の首が細くなっている理由

 見た目こそ無色透明でも、口に含むとほのかな香りが漂うフレーバー炭酸水。清涼感や飲み心地のよさを追求して毎年のように改良を重ねており、「表示上は『無果汁』となっていますが、有機レモンの果汁が0.3%入っています。レモンのこだわりは中身を飲んでいただければ分かります。搾りたてのおいしさを目指し、低めの温度で殺菌するようにリニューアルしました」(村上さん)。

 炭酸飲料のペットボトルは炭酸ガスの圧力に耐えられるよう、圧力が均等にかかる丸形が採用されている。そのペットボトルにもこだわりがあるという。「ボトルの首の部分が細くなっています。こうすることで流量が増え、飲んだ時に喉までダイレクトに炭酸水が入るようにしています」と明かす。

 外出自粛の影響で外食の機会も減っており、無糖炭酸水は焼酎やウイスキーなどの「割材」としても需要も高まっている。微量の果汁を含みつつ無糖の炭酸水は、コロナ禍の影響で運動する機会が減り「コロナ太り」を気にするユーザーのニーズにもマッチしているという。

 欧米では食事の際に炭酸水を飲むことが多いが、日本でも幅広いシーンで飲まれる機会が増えているようだ。村上さんは「今年に入って、通勤途中や街でも炭酸水を飲んでいる人をよく見かけるようになりました。炭酸水が広がっているのはとても嬉しく、ブランド担当者として、つい声をかけたくなってしまいます」と目を細めた。

SankeiBiz編集部 SankeiBiz編集部員
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