グローバルリーダーの育て方

日本語との決定的な違い ネイティブ流の英語学習「フォニックス」って何?

龍芳乃

英語圏の子どもはこうして英語の読み書きを学ぶ

 日本語の読み書きを学んだときのことを思い起こしてみてください。「あいうえお」からはじまり、「らりるれろ~わをん」までを覚えましたよね。そして、これをマスターすれば、「くるま」と書いてあれば読めるし、自分の名前を書こうと思えば、組み合わせることで「よしの」と書ける。

 英語はどうでしょう? 「ABC(エービーシー)」からはじまり「Z(ゼット)」までのアルファベットを覚えても、「猫=CAT(キャット)」が読めるようにはならないのです。アルファベットを知っているだけでは、CATはただの「シーエーティー」になってしまいますね。英語は、アルファベット(CAT=シーエーティー)に加え、そのアルファベットそれぞれの発音(C=ク、A=アッ、T=トゥ)をすべて学んでからやっとスタートできるのです。

 日本語の場合、ひらがなを学んだあとにカタカナ、そして漢字…と時間をかけながら、段階を踏んで漢字の読み書きまで到達します。一方、英語の場合はひらがなやカタカナのようなものはなく、アルファベットの組み合わせしかないため一見簡単かと思いきや最初からアルファベットを使ってたくさんのルールを覚えなければなりません。

 そのため、単純比較するわけではありませんが、読み書きにおいては「日本語は入り口(ひがらな)が優しく、英語は入り口(アルファベットに加えて複雑な発音ルール)から難しい」ということができるでしょう。

 そこで、小さな子どもたちでも「難しい」英語をマスターするために登場するのが、発音ルール!

  • A=アッ
  • B=ブッ
  • C=クッ

 この発音ルールを覚える学習法を「フォニックス(Phonics)」といいます。「アルファベット」と「発音」の関係について基本的なルールを学ぶのです。多少の例外などもたくさん目にすると、日本語と同様、大体の文字を予測することができるようになります。

 私が運営するインターナショナルスクール「GGIS」には、赤ちゃんから小学生まで幅広い年齢の生徒が通っています。英語の読み書きをマスターするまでに必要な過程は、年齢に関わらずほとんど一緒です。ただ、それぞれの年齢によって、気をつけなければならないポイントが異なるため、ご説明させていただきます。

 では「GGIS流! 0~3歳頃までの読み書きとの付き合い方」をご紹介します。

生まれてから、読み書きをマスターするまでの「奇跡」

 赤ちゃんが生まれてからの身体的・心理的な成長過程はとても神秘的で、高度で、美しいと感じています。

 赤ちゃんはまず、「耳」を頼りに生活します。ママ・パパから発せられる言葉やまわりの環境の音をたくさん聞いて、様々な種類の音を区別できるようになっていきます。1歳ごろまでに、より多くの情報を「目」からも入手するようになり、モノの特徴をつかみ、違いを認識し始めます。「ブーブー(車)とわんわん(犬)は違う」と認識できるから、赤ちゃんはそれを見たときに喜べるのです。

 成長や発達のメカニズムはまだまだ解明されていないことも多いようです。難しい話は苦手なので詳細は控えますが、赤ちゃんが読み書きできるようになるって…うん、シンプルにすごい!

 では、GGISが、英語の読み書きができるようになるための「取っ掛かり」をどのように作っているのかをご紹介させてください。

馴染んで、見慣れてもらう

 GGISでは、アルファベットのみならず、数字や形をいろいろな方法で目にする機会を設けています。教室内の至るところに、アルファベットが飾られていますし、まだ読めない年齢でも、さりげなくアルファベットの形をクラフトに織り交ぜてみたり。

 例えば、1才児クラスのPink Pig(ピンクのブタさん)のクラフト。「P=プッ」というアルファベット&フォニックスについても、レッスンの中で先生は何度か触れますが、もちろんフォニックスを学ばせようという目的では行っていません。まだ文字という概念さえ理解できない年齢です。

 耳・目・鼻とクネクネしたしっぽをくっつけて手先を鍛えるアクティビティ(英語ではモータースキルアといいます)の中で、Pという「形=文字」を目にすることで、「こういう形見たことあるな」と馴染んでもらうだけで十分なのです。

 こちらは別の例です。スライムで遊ぶ際にさりげなくアルファベットの形をしたクッキーの型抜きを用意しておくと、これで遊べ! と言わなくても、自ら、スライムに何度も型を押し付けます。しかも、そこに置くアルファベットもランダムではなくて、本人達の名前に含まれるアルファベットを先生は準備しているのです(細かい演出にあっぱれ!)。

 もちろん、一緒に遊びながらタイミングを見計らって「Kはクッっていう音だね」と声がけもしています。

 こちらは「ふわふわ」という感触に触れてもらうこと、そして、色について学ぶアクティビティでした。紙にそれぞれの名前のイニシャルを書いておくと、生徒によっては、アルファベットをなぞってみたり、ふわふわをMに乗っけてみたり、アルファベットを使って遊んでくれることもあります。全く見向きしないこともありますが、問題ないです。

 こちらは、自分好みのネックレスを作っているようですね。よーーく見ると、アルファベットの飾りに紐を通しています。

2歳以降はより実践的に

2歳前後になると理解力が追い付いてくるので、しれっと、でもがっつりとフォニックスを学びます。0~1歳児にくらべて手先のコントロールもだいぶ上手になってくるため、トレーシング(なぞり書き)も上手!!

 アルファベットには音があることを説明し続け、そのルールを楽しみながら、まるでゲームのルールを学ぶ感覚で習得していきます。2歳だと、「フォニックスを習得すると読めるようになる」という因果関係もまだまだ完全には理解できていないかもしれないのですが、過程が楽しければ結果もついてきます(そのように先生が設計しているのです)。

 「L(エル)」はもう認識しているので、Lには「ルッ」という音があることを学び、そのマッチングゲームをしているところです。ライオンはLかな? ピンク(Pink)にはLが入っているかな? と。

楽しまなきゃ学べない!

 「楽しまなきゃ学べない」というのは、赤ちゃん、子ども、ティーン、大人かは関係なく、すべての年齢に共通することだと思います。

 特にまだ子どもは「意思」によって、自分の感情を制御することができませんので、何かを無理強いすると、「嫌なのにやらされた」「○○○の時はママがいつもイライラしている」というイメージから嫌いになってしまう可能性もあります。

 逆に、クラフトなど楽しいアクティビティと絡め続けると、楽しいというイメージが残ります。ただただルールを述べられて、それを理解してくれたらとっても楽ですが、子どもの場合そうはいかないので、色んな方法で日々の生活&学習の中に取り入れる工夫を最大限するのが先生の役割だと考えています。

龍芳乃(りゅう・よしの) 株式会社G&G 代表取締役
日・英・中のトライリンガル。大学卒業後、PR会社、外資系コンサルティング会社を経て2013年に起業。世界で通じる「人間力」の基礎を育む「GG International School」を経営。「Art to Science」をベースに0歳から小学校高学年まで学べるプログラムを用意し、人格形成の根幹となる揺るぎない自信を育んでいる。2児の母。

【グローバルリーダーの育て方】は、100%英語環境の保育園やアフタースクールを経営する女性社長・龍芳乃さんが、子供が世界で通じる「人間力」「国際競争力」をどう養っていくべきかを説く連載コラムです。アーカイブはこちら