2021年1~4月 主要な宇宙イベントスケジュール
日本人宇宙飛行士が乗る民間有人宇宙船の打ち上げや「はやぶさ2」のサンプルリターンなど、2020年はさまざまな宇宙イベントが目白押しでした。今年2021年には、さらに重要なイベントが数多く予定されています。ということで今回の当コラムでは、2021年の注目すべき宇宙イベントスケジュールをご紹介します(※日時はすべて2020年12月時点での予定。JST日本標準時)。
▼1月
火星植民へ準備着々「スターシップ SN9」
《打上予定》
昨年12月10日、スペースX社による超大型宇宙船のプロト機「スターシップSN8」が打ち上げられたことは前回(関連記事)ご紹介しましたが、それに続く「SN9」が、すでにテキサス州にある発射台にセットされており、その打ち上げが迫っています。
スペースX社が独自開発したラプター・エンジンを3基搭載(完成型は6基搭載予定)したSN9は、前回同様、高度12.5kmまで上昇してエンジンを停止。機体が水平姿勢になる独特なマニューバを演じながら降下し、着陸直前にエンジンを再始動して垂直姿勢で地上に着陸するテストを行います。
また、これに続くSN10もすでに完成していて、SN9に続いてすぐに打ち上げられる予定。現地メディアによると、2021年度中にスターシップは、地球周回軌道上に打ち上げられると見込まれています。イーロン・マスク氏による火星植民計画(関連記事)は着々と進行しているのです。
▼毎月
衛星1万2000基で世界中にインターネット設置「スターリンク」
《打上予定》
同じくスペースX社が進めているプロジェクトに「スターリンク」ミッションがあります。この計画は、1万2000基の小型通信衛星を地球周回軌道に配置し、世界中に高速インターネット・サービスを提供するというものです。
2018年2月のテスト打ち上げを実施して以降、2019年11月からは月1回のペースで打ち上げられていて、1回の打ち上げで約60基の小型衛星を軌道に投入。すでに1000基以上が軌道上にあり、カナダと北米ではそのテストサービス運用が開始されています。
その打ち上げの様子は、スペースX社のYouTubeでライブ配信される予定です。
▼2月18日
植民の可能性探る探査ローバー「パーセヴェランス」
《火星着陸予定》
昨年7月、火星に向けて打ち上げられたNASAの火星探査ローバー「パーセヴェランス」は、2月18日に火星大気圏に突入し、その約7分後、火星地表に着陸する予定です。パーセヴェランスの現在位置などはNASAによるミッションウェブサイト(外部サイト)で公開されていて、そのテレメトリ・データを見ると秒速23.39kmで航行していることがわかります。
同時期に打ち上げられた中国の探査ローバー「天問1号」と、アラブ首長国連邦の火星探査機「HOPE」も、ほぼ同時期に火星へ到達する予定であり、天問1号は火星へ着陸し、HOPEは火星周回軌道に投入される予定です。
【最新の着陸動画(12月21日公開)】
▼3月20日
日本のデブリ除去衛星「ELSA-d」
《打上予定》
3月には日本の民間企業によるデブリ除去衛星が、カザフスタンにあるバイコヌール宇宙基地からソユーズ2.1aロケットによって打ち上げられる予定です。アストロ・スケール社(東京都墨田区)の「ELSA-d」は、世界初の民間企業によるデブリ除去衛星であり、今回打ち上げられる機体はその技術実証機(テスト機)です。
デブリとは宇宙ゴミのことであり、10cm以上の大きさのものが2020年時点で約3万4000個、1cm未満のものまで含めると約1億3000個ものデブリが軌道上にあるとされています。
このELSA-dでは、サービサーと呼ばれる親機(約175kg)から、クライアントと呼ばれる子機(約17kg)が軌道上でリリースされ、再度軌道上でドッキングするなどのテストが行われます。不規則に回転する子機に合わせて姿勢を変えながら再ドッキングしたり、故意に子機をロストさせてそれを追跡・捕捉するその技術は、過去に例がないほど高度なものと言えます。その複雑なミッションを解説した動画がYouTubeで公開されています。
【デブリ除去衛星「ELSA-d」】
▼3月29日
ボーイングによる宇宙船「CST-100スターライナー」
《無人テスト打上予定》
ボーイング社が開発中の民間有人宇宙船「CST-100スターライナー」の無人テスト打ち上げが3月29日に予定されています。
ISSへの人員輸送を目的とする当機は、2019年12月に第一回の無人テスト打ち上げが行われましたが、その際、打ち上げ自体は成功したものの、ソフトウェア設定に不具合によって燃料を使い過ぎたため、ISSとのドッキングは中止されました。そのリベンジとなるのがこのテスト打ち上げです。6月以降には初の有人テスト打ち上げが行われ、12月以降には初号機が打ち上げられる予定です。
▼3月30日
星出彰彦氏が搭乗する「クルー・ドラゴン 2号機」打ち上げ
▼4月
野口聡一氏が再び搭乗する「クルー・ドラゴン初号機」帰還
昨年11月15日、野口聡一氏は史上初の民間有人宇宙船「クルー・ドラゴン」(Crew 1)に搭乗してISSへ赴きました。そして、多種多様な実験、超小型衛星の放出、ISSのメンテナンス作業などに従事していて、2月15日にはロシアの「プログレス」、2月20日には米国の「シグナス」など、無人補給機の受け入れが予定されています。
3月29日には、先に紹介した宇宙船「CST-100スターライナー」の無人によるISSドッキング・テストに立ち会います。その翌日30日には、星出彰彦氏を含む4名のクルーがクルー・ドラゴン(Crew 2)に搭乗して打ち上げられ、野口氏のチームの交代要員としてISSに向かいますが、日本人宇宙飛行士2名がISSに同時に滞在するのは2010年以来、10年ぶりです。
まだ日程は公表されていませんが、交代要員が到着して間もなく、野口氏のチームは宇宙船クルー・ドラゴン(Crew 1)に搭乗し、地球へ帰還する予定です。
【宇宙開発のボラティリティ】は宇宙プロジェクトのニュース、次期スケジュール、歴史のほか、宇宙の基礎知識を解説するコラムです。50年代にはじまる米ソ宇宙開発競争から近年の成果まで、激動の宇宙プロジェクトのポイントをご紹介します。アーカイブはこちら