新時代のマネー戦略

お金は使うほうが貯まる? データで見る、貯めてる人の意外な買い物志向

カクワーズ
  • 「いいものに出会えたら、予算オーバーしてもいい」
  • 「できるだけ安くお得に買いたい」
  • 「必要なものを、必要な量だけ買いたい」

 買い物に関する考え方は、人それぞれ。ですが、データによれば、この3つの考え方は、お金が貯まる人と貯まらない人で、明確に支持が分かれました。さて、貯まる人が支持した考えはどれだと思いますか?

 今回は、2020年に実施された調査の結果を踏まえ、「お金が貯まる、お金の使い方」について、検証してみます。

「安さ」では買わない

 参照するデータは、2020年に全国の20歳から64歳までの男女900人を対象として実施したお金と暮らしに関する調査(※1)。この調査結果から、次の定義で「お金が貯まる人」「貯まらない人」を抽出し、両者の違いを比較していきます。

  • 貯まる人…「最近1年間の貯蓄額が100万円以上」(145人)
  • 貯まらない人…「最近1年間の貯蓄額が25万円未満、もしくは赤字」(283人)

 さっそく、貯まる人の、「買い物の決め手」を上位から順にランキングしたデータを見ていきましょう。

 貯まる人が買い物の決め手として、最も重視するのは、「必要性があること」。安く買っても使わない、着ないものはムダです。本当に今買う必要があるかをしっかり判断するわけですね。

 次に「長く使えそうなこと」、「どうしても欲しい気持ちがあること」、「予算内であること」と続きます。

 「値段が安いこと」は5位。貯まる人にとっては値段より優先することが多いことが分かります。特に「欲しいこと」が「値段」より決め手になっているのは、意外に感じる方も多いのではないでしょうか。

 一方、貯まらない人の買い物の決め手は、このようなランキングになりました。

 貯まらない人も、トップは貯まる人と同じく「必要性があること」ですが、2位には「値段が安いこと」がランクイン。

 この調査では、買い物の対象物はあえて提示していません。つまり、買う時の「決め手」を純粋に考えたとき、貯まらない人はすぐに「安さ」を想起したということになります。

 これはランキングの順位としてだけでなく、実際の値にも、はっきりと表れています。次の数値をご覧ください。

 貯まる人では、「値段が安いこと」を買い物の決め手として考えているのは22.1%しかいませんが、貯まらない人では、38.9%と、約4割に上っています。

 面白いのは、「安さ」以外の項目は、貯まる人と貯まらない人でほとんど変わらないことです。つまり、両者の違いは「安さ」に対する意識だけ、といっても過言ではないでしょう。

 そして、貯まらない人ほど「安さ」を重視する傾向は、男性でより顕著であることも分かりました。次の数値は、貯まる人と貯まらない人を男女に分けて、安さに対する意識を比較した結果です。

 結果から分かる通り、貯まらない男性の「値段が安いこと」に対する意識は、女性よりずっと高めです。

「安く買う」の落とし穴

 安く買うことは、もちろん悪いことではありません。同じ収入なら、出費を減らさなければ貯蓄は増えないのは事実だからです。ではなぜ、「安く買う=貯まらない」という結果が出てしまったのか。

 実は、「安く買う」にはさまざまな落とし穴があります。

 まず、安いと購入のハードルが下がります。「安いから買ってもいい」、「少額だし、このぐらいは贅沢しても」と、値段を理由に財布を開いてしまうことはありませんか? お金は使えば減ります。いくら安くても、たくさん買えばそれだけ貯蓄に回せる部分は減ってしまうのです。

 さらに「安く買えた」「お得だった」ことに満足してしまうと、本当に必要だったかどうか、振り返りにくい点も、注意が必要です。“自覚なきムダ”は、見直しにくくなります。

 「本当は欲しいのはAという商品だけど、Bのほうが安いからBにしよう」などと、値段で妥協するのも気をつけたい買い方のひとつ。こうした買い物は、買ったあとの満足感が長く続きません。すぐに飽きたり、「やっぱりあっちが欲しかった」と、結局また買い直すことになったりします。

 「安物買いの銭失い」という言葉が昔からあるように、安さを意識しすぎると、かえって高くつくことになってしまうことが、しばしばあるのです。

欲しいものには妥協しない

 実際に、貯まる人は安さを重視しないだけでなく、「高くてもいいものを、長く使う」ことを意識していることが、データにも表れています。

「出費に対する考え方」の結果の一部を見てみましょう。

 ご覧の通り、いいものを買って長く使いたいという考えは、貯まる人で明確に高い値を示しています。

 実際、3000円の靴を頻繁に買い換えるより、1足3万円でも、大事に何年も履くほうが、経済的です。自分が気に入ったものは、使っていて気持ちがよく、生活の満足度も高まるため、メンタル的にもお得。

 日常的に頻繁に使い、自分がこだわりたいものほど、値段に妥協せず選ぶのが、お金を上手に使う秘訣といえるでしょう。

 この傾向は、データを読み進めていくと、より裏付けられていきます。

 「予算オーバーしてもいい」など、一見、お金が貯まらなそうな考え方ですが、実は、こうした「本当に欲しいものにはお金をかける」という考え方は、貯まる人に支持されているのです。

 もちろん、なんでも予算オーバーしていたら、家計は破綻します。ですが、本当に自分が価値を感じることにお金を使い、そこで高い満足感を得ることは、お金の使い方を磨くことにつながります。

 「自分にとって満足度の高い使い方」が明確になるほど、「自分にとってつまらない出費」も分かり、そうしたものに使うお金を、自然と減らせるからです。

 「毎年大きな旅行はするが、服は興味がないから安くていい」「映画や本は好きなだけ使うが、ランチは買わずに持参する…」というように、本当に欲しいものにお金をかければ、そうでないものを節約するのが苦ではなくなり、同じ収入でも、より上手にお金を使っていくことができます。

 すべてにおいて「安さ」を求めると、ケチケチして疲れますが、メリハリがあればお金と気持ちよくつきあえます。欲しいものが明確なら、貯蓄へのモチベーションも高まり、計画的に進めることもできるでしょう。

 ポイントは、「安いものはダメ」「高ければよい」ということではなく、「本当に欲しいもの」、「本当に自分が価値を感じること」であること。「高いものは安心」、「どうせなら高いほう」という考え方も、値段に振り回されている点で、「安さ」を基準にする買い方と、本質的には似ているからです。

 意外と難しいのですが、過去の取材を見ても、貯まる人ほど、値段以外の判断力を磨いているのは間違いありません。

しっかり者の妻へのねだり方

 さて、男性の中には、「欲しいものにお金を使いたくても、財布の権限は妻が握っているから」という方もいますよね。そこで注目したいのが、貯まる女性で顕著に高かったこのデータです。

 しっかり者で貯めている女性ほど、「計画性のあるお金の使い方」を重視しています。実に、4割。貯まらない女性のほぼ倍です。

 つまり、予算を決め、どのようにそのお金を用意するか、「欲しいもの」と「計画」をセットで提示すれば、高いものでも容認される可能性は高まると考えられます。

 例えば、「新しい釣り竿を買いたい」とただ頼むのではなく、「予算は5万円。家で飲むお酒を月3000円減らせば、1年半で取り戻せる」、「スマホ代や保険の見直しを手伝う」など、家計に協力することを条件に出せば、妻側も「何も考えていないわけではないのね」と、耳を傾けてくれるはずです。

 反対に、こうしたしっかり者の妻になんの計画もなく、ただ「買いたい」と連呼しても却下されるだけでしょう。それどころか、妻は「価値観のズレ」を感じ、夫婦間に溝が生まれる原因になりかねないので、注意したいところです。

お得に買うだけでは、お金の使い方は上達しない

 ここで、貯まらない人のお金の使い方について、もう一度整理してみます。

 調査結果より、「買い物の決め手」、「出費に対する考え方」に関する全項目を、貯まる人と貯まらない人で比較し、その差が貯まらない人で高かったものをランキングしてみました。

 差の値は、「『貯まる人』-『貯まらない人』」で算出しているため、マイナスが大きいほど、貯まらない人で高い項目となります。

 貯まらない人で高かった項目は、「値段」「お得」「ポイント」など、安さに関するものが上位でした。

 もちろん、ムダが出費のない買い方は大切です。ただ、先の結果にも表れているとおり、「値段」「お得」「ポイント」を決め手とする考えは、貯まる人にはあまり支持されていません。つい、買い物は値段や損得で考えがちですが、それらを重視するだけでは、お金が貯まるようにはならないことは、覚えておいたほうがいいでしょう。

 そもそも、自分にとって価値のあるお金の使い方が分からないと、貯蓄してもお金を楽しく使えません。つまらない使い方で長年の努力をムダにしないためにも、「値段」ではない買い方を磨くことは、意味があるのです。

 コロナ禍で、暮らしも働き方も大きく変化しました。ちょうど明日からは三連休。ここで改めて、自分がこれから大切にしたいこと、今年お金をかけたいことを、じっくり考えてみませんか?

  • ※1 2020年7月実施。対象者は全国20歳~64歳の男女900人。インターネットリサーチ。調査企画・データ提供:株式会社カクワーズ
  • ※2 調査時の「貯蓄額」の定義:最近1年に収入から貯蓄した世帯の貯蓄額。預貯金のほか、積立投資、貯蓄型保険などへの積立額など含む(株などの資産は含まない)。同居でも親や兄弟の貯蓄額は含まないものとする
お金が貯まる人への膨大な取材と調査データから「貯まる暮らし」を研究。ファイナンシャルプランナー(AFP認定)資格をもつライターが、定性&定量の両面から「貯まる人」の生活に共通する習慣や考え方を分析し、女性誌やWEBを中心に発信。代表書籍に「お金が勝手に貯まりだす暮らし」(リベラル社)などがある。

【新時代のマネー戦略】は、FPなどのお金プロが、変化の激しい時代の家計防衛術や資産形成を提案する連載コラムです。毎月第2・第4金曜日に掲載します。アーカイブはこちら