グローバルリーダーの育て方

サイトワーズとは? 子どもが英文を「解読」できるまでの4つのステップ

龍芳乃

 英語の読み書きができるまでの長い道のりの中で、0~2歳頃の生徒には「馴染んで、見慣れてもらう」ことから始めると前回書きました。私が運営するインターナショナルスクール「GGIS」の事例を挙げながら、今回は年少さん、つまり3歳頃の生徒が、英語の読み書きに馴染んで慣れる段階からどのようにステップアップしていくかをご説明します。

 「ステップアップ」と表現してはみましたが、一つのレベルを完全にマスターしてから次に進むわけではありません。ステップ1が、なんとなーくできるようになってから、徐々に次のレベルへ誘導します。生徒によっては、3つのステップを浅く、同時にしたり…生徒の得意不得意によって先生がこれにさじ加減を加えます。先生の質というのは、このさじ加減を適切に的確にできるかにかかっているのかもしれませんね。

基本のキ アルファベット&フォニックス

 アルファベットの形を、大文字と小文字の両方で認識し、フォニックスと呼ばれるそれぞれの「音」のルール(関連記事)を覚えることが基本中のキホンです。このステージが大変なのは、基本的に暗記するしかないからです。しかし、幼い生徒は「丸暗記」ができないため、どの学校も、歌、遊び、ゲームなどを通して、楽しく習得できるように工夫しています。

 「GGIS」でも、パズルとして遊んだり(写真1)、自分でアルファベットの形を作ってみたり(写真2)、歌を歌ったり、神経衰弱のようなゲームで盛り上がったり、おもちゃとして遊んだり…。生徒に飽きられないように、先生は必死です(笑)

A = アルファベットの「エー」、音は「アッ」

 という具合です。

 ちなみに、どの生徒も苦戦するのが、小文字のbとd。年長さんになってもたまに間違えるくらいなので、完璧は目指さず、だいたいできるようになってきたら次のステップに徐々に誘導していきます。

 アルファベットの形と、フォニックスのルール。この2つがある程度身に着いたところで、次にどんなステップを踏んでいくのか、少し詳しく説明します。

ステップ1:音と音を組み合わせて単語にする

 一つ一つのアルファベットと音を理解すると、次はいよいよそれを組み合わせていきます! 幼い生徒にとっては、「音をつなげて読む」のもとっても難しいことなので、時間をかけてマスターしていきます。2文字や3文字の言葉を読んでいきます。

ステップ2:「形」で判断して瞬時に読む

 音と音を組み合わせて単語になることを学ぶと、次に取り組むのが「サイトワーズ」です。サイトワーズ(sight words)というのを聞いたことがあるでしょうか?

 通常は、一つ一つのアルファベットの文字を発音して、つなぎあわせた結果、「単語」が見えてきます。このような感じです。

「C=ク」+「A=アッ」+「T=トゥ」= CAT キャットゥ

 

 一方でサイトワーズは、Sight(視覚)で読むWords(文字)です。よく出てくる単語ひとつひとつの音から解読するのではなく、単語全体を「形」として認識します。つまり、ぱっと見たときに、すぐに読める単語(視覚単語)のことです。

 例えば、「the(ザ)」。どの文書や本にも必ず出てくるこの文字を毎回「th + e」と解読するよりも、“the”という形で覚えるのです。

(「the」については、フォニックスのルール通りに読むと、「ザ」とはならなず「テェ」となってしまいます。このように、フォニックには様々な例外があるのですが、長くなってしまうため、今回は割愛します。)

 英語圏の学校ではこのサイトワーズを、幼稚園から学び始め、小学生までずっと覚え続けます。このサイトワーズが並んだ「単語リスト」には、考え方によって様々な種類がありますが、ドルチ博士がまとめた「Dolch Word List(ドルチ・ワード・リスト)」とフライ博士がつくった「Fry Word List(フライ・ワード・リスト)」があります。

 このサイトワーズも、学校生活の様々な場面で“ちょい出し”していつの間にかマスターしてもらいます。

ステップ3:実践! 本を読む

 アルファベットの組み合わせにより単語がある程度読めて、そしてサイトワーズの中で読める単語が100を超えると、3歳・4歳 の子でも本が読めるんです。学校では、生徒のレベルごとに本を用意しているので、先生と一緒に文字を読んでいきます。

 ここで、先生が気をつけている点をご紹介。生徒が丸暗記しているのか、それとも本当に読んでいるのかを見極めるのは難しいのです!

 子どもの記憶力は本当に驚異的で、絵を見てそのページに書いてある全文を記憶ベースで、スラスラ言えまです。これはこれで褒めてあげたい素晴らしいスキルですが、読み書きをマスターするという目的からはズレるため、先生は絵を隠して文字だけを生徒に読ませます。

 子どもはフォントの大きさ・ページ数・物語の流れでも覚えていたりするので、先生は抜き打ちで、ホワイトボードに本の単語を書き出してみたりもします。…先生と生徒の“攻防“が繰り広げられています(笑)

 ただ、「記憶ベースで読んでるな」と思っても、それが「読める」と本人が思い込めるきっかけでもあるので、うまく使い分けています。さじ加減がなんとも難しい!

 下の動画は、息子(2歳)が、「記憶」で読んでいるところです。

ステップ4:文章の内容を理解する

 文章を読んで内容を理解する。これは、文が読めるようになってから、大人になってもずっと続けていることです。子どもの英語学習でももちろん、読んで、そして内容を理解するということをします。

 とにかく発音して「単語」を理解すればよかったところから、文章をつなげることで「意味」を理解するようになる。これができるようになれば、「本って楽しい!」と気がつけるはずです。

チリツモだけど…知恵を絞って楽しく!

 英語で読み書きができるようになるまでの過程を、ステップごとに紹介してきました。生徒が、ステップ4の「本を読むって楽しい!」と思えるまでの、地味ぃーーな暗記や作業を、楽しく! 楽しく! 楽しく! するために…先生たちは本当に色々と知恵を絞っています。

 私は日々、この習得過程を間近でみていますが、まさにチリツモ、地味な作業の積み重ね。ただ、これが実った時の感動というのは言葉では表せません。数年前は言葉もままならなかった子が読書ができるようになっているんですもん。あとは、それぞれのステップを深く学んでいけば大人のように読めるようになります。

 私は短気なので、正直先生には向いていませんが(笑)、先生たちは日々忍耐強く、子どもたちと向き合ってくれています。保護者としても先生たちに頭が上がりません。

龍芳乃(りゅう・よしの) 株式会社G&G 代表取締役
日・英・中のトライリンガル。大学卒業後、PR会社、外資系コンサルティング会社を経て2013年に起業。世界で通じる「人間力」の基礎を育む「GG International School」を経営。「Art to Science」をベースに0歳から小学校高学年まで学べるプログラムを用意し、人格形成の根幹となる揺るぎない自信を育んでいる。2児の母。

【グローバルリーダーの育て方】は、100%英語環境の保育園やアフタースクールを経営する女性社長・龍芳乃さんが、子供が世界で通じる「人間力」「国際競争力」をどう養っていくべきかを説く連載コラムです。アーカイブはこちら