京都のコロナ患者用病床 確保数と運用可能数が大幅乖離、使用率跳ね上がる
新型コロナウイルス患者を受け入れる病床数について、京都府は先月、すぐに使える病床は従来の半分以下の330床にとどまると明らかにした。これに伴う病床使用率は80%台と一気に跳ね上がった。これまでは720床(1月19日現在)を確保し、使用率は年末以降も30%台と公表していたが、確保病床と実際の運用病床で大幅な乖離が露呈した。(秋山紀浩)
「これ以上の受け入れは厳しい…」。感染「第3波」に伴い、感染者が急増した昨年12月、コロナ患者を受け入れる病院では、次々と病床が埋まり、対応する看護師らの手が回らない状態だった。それでも、専用病床には空きがあった。
すでに府が「確保病床720」と公表し続けていた水面下で、医療体制はほころびを見せていた。それでも、府内の病床使用率は30%台で推移。緊急事態宣言再発令直前の1月12日時点でも、感染状況を判断する6指標のうち、PCR陽性率など4項目が、最も深刻な「ステージ4」(爆発的感染拡大)に到達していたが、病床使用率は基準に満たない状態だった。府立医大病院の夜久(やく)均院長は「あきらかにおかしいと感じていた。肌感覚ではほぼ満床だった」と明かす。
12月には、コロナ患者を受け入れる病院長らが共同で医療崩壊の懸念を示した緊急声明を発表。しかし、府が公表する病床使用率は30%台と他の自治体と比べてひときわ低く、夜久院長は「他府県に比べて京都は逼迫していないとの認識を持った人が多かったはずだ」と指摘する。
確保病床720床は、府内初の感染者が出た昨年1月以降、コロナ患者を収容できる数を積み上げただけの数字で、実際の治療に必要な看護師らの人数は考慮されていなかった。それでも府幹部は「第1波や夏の感染拡大では問題なく機能していた。実際の使用率を公表するまでの危機意識はなかった」と説明する。
12月以降の感染急拡大で、看護師らが不足。コロナ患者受け入れ病院では、運用可能な病床数の把握が始まり、府側にも厳しい状況が伝えられていたが、府が本格的に実態を見直したのは年明け後だった。
こうした中、入院先が見つからなかった京都市の80代女性が、年末に自宅で死亡した問題が発覚。府は急遽3日後の1月19日、実際に使える病床数は330に限られると公表、これを基にした病床使用率は84・2%と大阪や兵庫並みに逼迫していることが判明した。
この事態に西脇隆俊知事は「酸素吸入が必要な中等症の患者や、介護が必要な高齢患者が増え、多くのマンパワーが必要になった」と釈明。「年末年始で一定の人の動きが止まるとの前提にあった」と見通しの甘さを認めた。
府は実際に運用できる病床確保のため、私立病院協会にも協力を要請。夜久院長は「重症を脱した患者を民間病院で受け入れてもらうなど、役割分担をしっかりできれば改善される部分もある」と指摘している。
■学習院大の鈴木亘教授(医療経済学)の話「確保病床のみを把握するという当初の調査自体がずさんだった。実態に即した数字が把握できなければ適切な対策は打てない。余っている人員や病床を活用できていないケースもあり、府県をまたいだ入院調整を図るなど、協力体制の構築が必要だ」