新型コロナウイルスの感染拡大が若者の財布のひもを締め、貯蓄志向を高めているようだ。20代の平均貯蓄額はコロナ禍前に比べ19 万円増え、特に既婚者では56万円も増えていることが、SMBCコンシューマーファイナンスの調査で分かった。結婚しようと思える年収のハードルもコロナ禍前より上昇。最低水準の住宅ローン金利や住宅ローンの減税などの影響で住宅需要は旺盛だが、20代の半数以上が住宅を購入しようと思えるのは「年収900万円」と回答した。コロナ禍の影響で「堅実志向」が強まっていることが浮き彫りとなった。
20代既婚者の貯蓄額は56万円増
20代の金銭感覚についての意識調査によると、20代の平均貯蓄額は未婚者で61万円となり、2019年12月の前回調査に比べ14万円増加した。既婚者の平均貯蓄額は未婚者の約2倍の126万円で、前回調査から一気に56万円も増えた。一方で、貯蓄額で最も多かったのは「50万円以下」の40.8%。貯蓄額「ゼロ」は18.2%だった。
同社は「外出自粛要請等により外食費、旅行レジャー費、衣類、ファッション用品費などが貯蓄に回ったこと、『おうち時間』の増加により家計を見直す機会ができたことなどが要因として挙げられる」と分析している。
20代全体の平均貯蓄額も72万円と、前回調査から19 万円増えているものの、57.7%の人が自分の貯蓄状況について不安を感じていることも判明した。
若者の堅実志向は支出先からもうかがえる。勉強や資格取得など「自己投資」にお金をかけたいと思っている人は49.6%。実際に自己投資に支出している人は 24.4%だった。自己投資に充てる金額は男性が月額平均5737円、女性は同4899円だった。有職者の29.5%が「コロナ禍前より収入が減った」と回答しているが、スキルアップにつながる自己投資には支出を惜しまないと考える若者も少なくないようだ。
コロナ禍で支出額が減ったのが「外食費」(49.8%)。次いで「旅行・レジャー費」(43.6%)、「衣類・ファッション用品費」(30.3%)などが続いた。若者の「車離れ」「レジャー離れ」などが指摘されて久しいが、支出額の減少はコロナ禍の影響が大きいとみられる。
実際、コロナ禍が落ち着いたら支出額を増やしたいものに「旅行・レジャー費」(26.9%)、「外食費」(16.2%)、「衣類・ファッション用品費」(12.9%)が挙がっており、コロナ禍が収束すれば、旅行や外食、おしゃれを楽しみたいと考えている様子がうかがえる。
20代の2割「結婚したくない」
政府は2025年までに出生率1.8を達成する目標を掲げるが、少子化傾向は歯止めがかからない。
若者が考える結婚のハードルも高くなっているようだ。20 代の半数以上(57.5%)が結婚しようと思えるのは「年収 600 万円」。前回調査では56.0%が「年収 500 万円」あれば結婚しようと思えるとの回答だったため、コロナ禍前より結婚へのハードルが上昇したことになる。
また、「年収がどんなに多くても結婚したいと思えない」と回答した人は、前回調査から 7.9 ポイント増の21.8%だった。リタイヤ時にあれば安心できる貯蓄金額の平均は1884 万円。毎月のお小遣いは平均 2万9398 円で、「毎月自由に使えるお金は1万円以下」と回答した人が39.4%だった。
住宅を購入しようと思える世帯年収額について20 代の半数以上がイメージできるのは、前回調査では年収 700 万円(51.5%)だった。これに対し、今回の調査では年収 900 万円(52.4%)と、こちらもハードルが大幅に上がる結果になった。
このほか、20代の78.7%が「無理をせず買える範囲で良いものを選びたい」と回答。多くの人が「最安値は必ずチェック」(75.7%)、「口コミは必ずチェック」(72.6%)と回答しており、消費でも、決して「背伸び」はせず「身の丈に合った」ものを選ぶ傾向が浮かび上がる。
調査は20~29歳の男女1000人を対象に2020年11月に実施した。コロナ禍で20代の貯蓄額が急増する一方で、貯蓄状況に不安を感じている人も少なくない背景について、同社は「新型コロナウイルスという先の見えない社会情勢の不安から、貯蓄志向の若者が増えているのではないか」と推察している。