尿管がん術後、リンパ節に再発
Q 50代の男性です。平成30年6月の検診で血尿を指摘され、超音波検査で調べましたが、異常を認めませんでした。1年後、今度は赤ワインのような血尿が出たので、総合病院で造影CT(コンピューター断層撮影)検査を受けましたが、経過観察になりました。11月、再度の造影CT検査で異常が疑われ、令和2年1月、尿管鏡検査で左尿管がんと診断されました。2月に腹腔(ふくくう)鏡にて左腎臓と尿管を摘出。4月から補助療法として抗がん剤のカルボプラチン+ゲムシタビンの併用を3クール受けました。8月にCT検査で腹部大動脈リンパ節に再発を確認。9月から免疫治療薬キイトルーダがスタートし、12月までに5コース終えました。
A 最初に見つかったリンパ節転移の数と大きさはどのくらいでしたか。
Q リンパ節転移の数は1個で、大きさは1・5センチほどでした。
A その後、リンパ節転移の状態に変化はありましたか。
Q キイトルーダを3コース終了したときのCT検査では、リンパ節転移の数は1個のままでしたが、大きくなっていました。キイトルーダ投与について主治医から「2~3割の有効率だが、後で効果が出ることもあるから6コースは続けたい」と言われました。自分には効いていないのでしょうか。
A もうしばらく経過を見てもよいですが、転移が単発なので、手術か放射線治療の追加についての主治医の見解は?
Q 癒着(ゆちゃく)があるため合併症のリスクが高く、危険だそうです。他に抗がん剤や治験薬はありますか。
A シスプラチンという抗がん剤があります。手術で摘出したため腎臓が1つになっていますので、一度に投与せず2~3日に分けて「分割投与」を行います。この抗がん剤はカルボプラチンより有効性が高く、最初に使ったゲムシタビンとの併用や、さらにパクリタキセルを加える3剤併用療法もあります。
治験薬では現在、FGFR(線維芽細胞増殖因子受容体)阻害薬のほか、エンホルツマブベドチンという抗体・薬物複合体があります。いずれも40%以上の奏効率を示し、米食品医薬品局(FDA)ではすでに承認されています。
ただ、日本国内での治験(臨床試験)への登録には詳しい事前検査や実施期間のしばりがありますので、がんセンターや大学病院に早めに尋ねてみるのがよいでしょう。
Q 今後、病気の進行についてはどのように注意したらいいでしょうか。
A リンパ節のほかに肺、肝、骨などへ転移が広がるリスクがあります。肺転移を除き単純CT検査での早期診断は困難ですが、今後の造影CT検査は腎機能障害のリスクからあまり勧められません。症状や血液検査の結果に応じ、超音波検査やPET-CT(陽電子放射断層撮影+CT)検査で診てもらうのがよいでしょう。(構成 大家俊夫)
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回答は、がん研有明病院顧問(泌尿器科)の福井巌医師が担当しました。
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副流煙も発がんに影響あるのか
尿管がんの発症には喫煙がリスク因子に挙げられている。今回の相談者は喫煙歴がないものの、以前パチンコ店によく通い、受動喫煙にさらされたという。
がんとの関係について福井医師は「受動喫煙の副流煙には、喫煙者本人の主流煙と同じくタールなど有害な成分が含まれており、がん発症に影響します」と話している。