宇宙開発のボラティリティ

NASAの火星探査ローバーが着陸 7分間の「神業」は見逃せない

鈴木喜生

着陸は2月19日(金曜)、早朝5時55分

 昨年7月に打ち上げられたNASAの火星探査ローバー「パーセヴェランス」が、2月19日(金曜)の朝5時55分(日本時間)、ついに火星地表に着陸します。

 質量1t超のローバーが地表に着陸する様子は、同日4時15分から、NASAのYouTubeチャンネルにおいて、リアルタイムで配信される予定です。見どころは、着陸シークエンス完了の速さと着陸精度の高さです。

【パーセヴェランスの火星着陸YouTubeライブ配信】

 NASAはパーセヴェランスをウォッチできる2つのWebページを公開していて、そこではパーセヴェランスが火星へ向けて航行する様子や、火星の大気圏に突入してから着陸するまでの様子が詳細に確認できます。どちらの3D動画も任意の角度、再生速度で視聴することができ、実際の着陸時にはリアルタイムでその行程が確認できます。

火星へ向かうパーセヴェランス(外部サイト)

大気圏突入から着陸まで(外部サイト)

大気圏突入から着陸まで、わずか7分間

 パーセヴェランスとほぼ同時期に、アラブ首長国連邦(UAE)の「HOPE」と、中国の「天問1号」、この2つの火星探査機が打ち上げられました。ともに2月10日、火星周回軌道へ乗ることに成功していますが、パーセヴェランスとこれら2機は、実は着陸方法などが異なります。

 HOPEはそもそも軌道を周回する探査機で、天問1号は探査ローバーを搭載した着陸機を軌道上で分離したうえで、火星地表に着陸させます(今年5月予定)。一方で、パーセヴェランスは火星周回軌道に乗らず、ダイレクトに大気圏に突入して火星地表に着陸します。

 パーセヴェランスは火星へ向かう際、ディセント(降下)・ステージに抱きかかえられた状態にあり、その2機をバック・シェルとヒート・シールドが上下から包んでいます。どら焼きのような形状をしたその宇宙機はさらに、姿勢制御装置などを搭載したクルーズ・ステージに載せられた状態で宇宙空間を航行しています。

 火星に近づくとクルーズ・ステージを切り離し、10分後には火星の大気圏に突入。その4分後にはパラシュートを展開して、ヒート・シールドやバック・シェルを分離します。その分離直後、ディセント・ステージがロケット・エンジンを噴射して降下速度を落とし、そこからワイヤーで吊り下げられたパーセヴェランスが、火星地表にソフト・ランディングするのです。

 この大気圏突入から着陸までのイベントは、わずか7分間ですべて完了します。ちなみに、下に紹介するタイム・スケジュールは、火星からの電波が地球に届いた時点のものであり、実際のこのイベントはすべて11分22秒前に実行されます。

【着陸までの行程とタイム・スケジュール】

《2月19日(金曜、日本時間)》

  • 5時38分  クルーズ・ステージ分離
  • 5時48分  大気圏突入
  • 5時49分  最大過熱
  • 5時52分  パラシュート展開
  • (展開20秒後) ヒート・シールド分離
  • 5時54分  バック・シェル分離
  • 5時55分  ローバー着陸

着陸予定エリアは7.7×6.6km、過去にない着陸精度

 NASAはこれまでに数多くの探査機を火星地表に着陸させてきましたが、パーセヴェランスを着陸させる精度は、かつてなく高いものになっています。上の写真はそれを示すもので、パーセヴェランスと、NASAの過去3機の火星探査機の着陸予定エリアを表しています。

 いちばん外側は1997年に着陸した「マーズ・パスファインダー」のもので、その着陸予定範囲が200km×70kmの楕円で描かれています。また、その内側が2018年の「インサイト」のもので130km×27km。どちらも予定エリアが広大であることを示しています。

 2012年から運用中の「キュリオシティ」は、今回のパーセヴェランスと同様なシステムによって着陸したことにより、25km×20kmまでその範囲が狭くなっていますが、今回のパーセヴェランスでは予定エリアが7.7km×6.6kmまで縮小されています。

 パーセヴェランスが着陸する予定の「ジェゼロ・クレーター」は、かつては湖だったと考えられています。パーセヴェランスはここを探査し、古代の微生物の痕跡を探します。

 また、パーセヴェランスが採取した土壌サンプルは保管容器の中に収納され、地表に接地されます。NASAは欧州宇宙機関(ESA)と協力し、将来的にはそれを他の探査機によって回収し、地球へサンプルリターンする予定です。

出版社の現役編集長。宇宙、科学技術、第二次大戦機、マクロ経済学などのムックや書籍をプロデュースしつつ自らも執筆。趣味は人工衛星観測。これまで手掛けた出版物に『宇宙プロジェクト開発史大全』『これからはじまる科学技術プロジェクト』『零戦五二型 レストアの真実と全記録』『栄発動機取扱説明書 完全復刻版』『コロナショック後の株と世界経済の教科書』(すべてエイ出版社)など。

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