デキる男は住まいから

引っ越し準備の「正解」 いつから始める? どこから手をつける?

香村薫

 2月~3月は一年で一番引っ越しの需要が増えます。私は片付けのプロとしてお客様の家で片付け作業を行っていますが、年末の大掃除タイミングに次いで多いのが3月の引っ越し片付けです。

 引っ越しは「自分の持ち物すべてを目にして触れる」という絶好の機会。片付けをするのにこんなにいいタイミングは他にありません。ここで片付けしないでいつ片付けるの? と言いたくなるほどです。

 異動にともなう引っ越しも、コロナ禍で様変わりしているようです。在宅勤務の機会が増える一方で、送別会など、仕事がらみの人付き合いも減っています。コロナ下の引っ越しは妻任せにせず、作業を通じて「いてくれて助かった」と感謝されるような存在になりたいものです。

 今回は引っ越しを控えているご家族に向けて、引っ越し前にぜひ夫婦そろってやってほしい片付けについてご紹介します。

1.引っ越し前片付けはいつから始めるべきか

 引っ越しが決まると「片付けをしなければなぁ」と思う方は多いと思います。では具体的にいつから始めればよいのでしょうか。

 私がいつもお客様にお伝えするのは「引っ越し業者への見積もりを取る前段階である程度片付けを終わらせておく」です。もちろん時期やお住まいの地域によって業者に早めに依頼をしないといけない場合もありますが、一般的には引っ越しの1カ月前に見積もりを取る場合が多いです。それまでにある程度、モノの総量を想定するとなると、引っ越し日の1.5カ月前には片付けをスタートさせた方が良いでしょう。

モノは、手放したくてもすぐには手放せない

 なぜこんなにも早くに取り組む必要があるかというと、引っ越し前に片付けた「手放す物の行き先」がすぐには決まらないからです。

  • 可燃ごみ…ごみの日をチェックして出す
  • 大物…地域の粗大ごみ回収を予約する(もしくは民間回収業者の手配を行う)
  • 売る場合…ヤフオクやメルカリに出品する(売れるまで待つ、売れたら梱包、配送)

 これらの作業を終えてから引っ越ししようと思うと、早めのアクションが必要なのもうなずけますよね。

 正直、引っ越しとなると、妻はやることが多すぎて不安になりがちです。「いつから引っ越しに向けてアクションする必要があるのか」「具体的に何をしていけばよいのか」ということをご夫婦で話し合うことが大切ですね。

2.引っ越しの片付けはどこからやるべき?

 先に述べたとおり、引っ越し片付けは引っ越しの1.5カ月前から取り組みます。普段の片付けと違うところは、「片付けながら梱包するものを選別していくこと」です。

 その中でも手を付けやすいのが「衣類」です。衣類は季節感が明確なので分けやすいのです。

 先に選別を終わらせておき、後日段ボールが届いたら順番に詰めていきます。このとき、段ボールにマジックで「お母さん 冬服 上着 20枚 クローゼット①の引き出し最上段」と書いておくのがポイント。そうすれば運ぶ人もどこに置けばよいかが明確ですし、だれが開梱してもどこに収納すればよいかが一目瞭然です。

新居の「どこに置くか」をシミュレーション

 ここで重要なのは、引っ越し後のモノの配置を事前にしっかりとシミュレーションしておくことです。

 具体的には、引っ越し前に、住んでいる家の状態で、各収納に入っているモノを付箋に書き出し、それらを新居ではどこに置くのか? を新居の間取り上に配置させてみるのです。ぜひその様子を写メしておいてくださいね。手伝いにきてくれる友人や親に渡しておくと伝わりやすいですよ。

 新居のどの部屋に置くかが決まったら、段ボール箱にも、新居内のどの部屋の荷物なのかということを明記しましょう。引っ越し当日、業者の方が依頼主に逐一確認せずに運び入れることができますね。

 次に手を付けたいのが「食品」と「日用品」などのストック類です。引っ越しまでにストック品はできるかぎり消費させておきたいものです。

引っ越し前3日間は食事が作れない

 食品であれば、引っ越しが決まった日から当日までに少しずつ減らしていくようにします。特に引っ越し前最後の3日間はほぼ食事が作れない状況になりますのでそこに対して残しておくメニューをあらかじめ決めておき、それ以外のものを少しずつ食べていくという流れにするとスムーズかと思います。

 このあたりも妻一人で決めるのではなく、家族で話し合いましょう。またトイレットペーパーなどの嵩張る日用品も使いきるために買いダメしないように家族みんなで気を付けていきます。

 そうすることで引っ越し時の段ボールの数が減り、梱包や開梱にかかる時間と労力を軽減することができますね。

3.事務処理を見える化して手分けする

 引っ越しに際しては沢山の事務処理が必要になります。

【引っ越し前】

  • 転出届(他の市区町村へ引っ越す場合)
  • 社会保険・国民健康保険の住所変更
  • インターネットの契約
  • 固定電話の手続き
  • 郵便局の転居転送
  • ガス・電気・水道の停止手続き/開始手続き

【引っ越し後】

  • 転入届
  • マイナンバーの住所変更
  • 印鑑登録の手続き
  • 国民年金・国民健康保険の手続き
  • 免許証・車庫証明・車検証

【その他住所変更】

  • クレジットカード
  • 銀行口座
  • 通販サイト
  • インターネットサービス

 こういった事務処理は目に見えにくいのに、電話で待たされたりと時間がとてもかかるものです。夫婦でリスト化したうえで、分担させるといいですね。

立ち合いが必要な工事もある

 実際には、妻は子どもの学校や習い事の手続きなどでも頭がいっぱいです。ここはぜひ夫が率先して、問い合わせや手続きをおこないましょう。

 中には、電話やネットで完了せず、ガスの開栓やインターネットの開通工事など、立ち合いが必要なものもあります。「○時~○時の間に訪問します」といった時間幅のある予定をこなすだけでも妻は大助かりです。

 今回は引っ越し前にやっておくべき片付けについてお伝えしました。参考になりましたら幸いです。

香村薫(こうむら・かおる) 片づけの専門家
ライフオーガナイザー
大学卒業後、トヨタグループ会社に入社。そこで学んだトヨタメソッドを家事に応用した「トヨタ式おうち片づけ」を提案。片づけサポート業務「ミニマライフ」を起業。全国での講演活動、個人宅での片づけサポートを行う。著書に「トヨタ式おうち片づけ」「トヨタ式超ラク家事」(ともに実務教育出版)「トヨタ式家事シェア」(主婦の友社)がある。NHKをはじめTVや新聞・雑誌などメディア出演多数。

【デキる男は住まいから】は株式会社ミニマライフ代表取締役で、ライフオーガナイザーの香村薫さんが、トヨタ自動車のグループ会社で学んだメソッドを家事に応用し、ビジネスパーソンが今すぐ実践できる「家事シェア」のノウハウなどを伝授するコラムです。更新は原則隔週月曜日。アーカイブはこちら