働き方が多様化している中、副業を検討したり、実際に始めたりした人もいるのではないでしょうか。人生100年時代では、1つの仕事やスキルだけでは通用しなくなるとも言われています。また、リモートワークの普及で副業がしやすい時代にもなりました。本業以外の副業や兼業を通して得る知識や経験は、今後のキャリアの中で生きてくるでしょう。とはいえ、副業を始めるにあたり、事前に知っておいた方がいいこともあります。そこで副業にまつわる役立つ情報や知識をお伝えします。
副業でスタートしたFP業
実は筆者自身も現在の仕事を副業から始めたという経緯があります。筆者は現在マネー記事の執筆などを多く手掛けているファイナンシャルプランナー(FP)です。
FPの資格を取得した約10年前は企業に勤めており、資格を新たな仕事につなげたいと考えていました。そんな折、知り合いから紹介されたのがライターの仕事でした。「FPという専門家の立場でお金に関する記事を書く」というものでした。当時の筆者は、「将来FPとして独立したい」という想いはあったのですが、すぐに独立する勇気はありませんでした。けれども「副業なら大きなリスクを背負わず経験値を積める」と思い、ライターの仕事を始めることにしたのです。
副業をするメリット・デメリット
さて副業はさまざまなプラスの効果が期待できる一方で、マイナス面もはらんでいます。副業をする際の一般的なメリットとデメリットを、整理をしてみましょう。
メリット
- 収入がアップする
- 本業では得られない知識やスキルが身に付く
- 人脈が広がる
- 本業の安定した収入を生かして、収入に関係なく自分のやりたいことが実現できる
- 将来起業を考えている場合は副業でやりたいことを試せる
デメリット
- 長時間労働につながることもある
- 本業に注力する時間が短くなり、業務に支障をきたすこともある
- 本業の評価が下がる可能性もある
- 個人情報や機密情報など、情報の管理が難しくなる
- 本業、副業、プライベートでのタスク管理が複雑化する
筆者自身の話に戻します。実際に筆者が副業時代に苦労したのが、「タスク管理の難しさ」でした。
最初は月に4本程度のコラムの執筆だったのですが、本数が徐々に増え、月に10本程度書くようになりました。当然ながら執筆のための時間も増え、本業のみならず、家事や子育ての時間とのバランスが難しくなりました。
結局本業を辞めてフリーランスで仕事をすることになったのですが、副業を始める場合は、本業と副業との間でどのような問題が起きるのか、問題が起きた場合の対処法などを事前に考えておくことが両立を図る上で大切だと言えます。
金銭的な理由で副業を始める人が多い
実際に副業をどのような理由で始める人が多いのでしょうか。マイナビが実施した「副業に関する意識調査 *1」から確認してみましょう。
「副業を始めたいと思った理由」
- 1位 「お小遣い・趣味に使える収入を増やしたいから」(52.8%)
- 2位 「将来への備え・貯金を増やしたいから」(48.3%)
- 3位 「将来の収入への不安を感じたから」(40.4%)
- 4位 「スキル・経験を身に付けたいから」(22.8%)
- 5位 「生きがい、ライフワークを見つけたいから」(22.1%)
このように、1~3位を占めているのが「金銭的な理由」であることがわかります。キャリアップを見据えて副業を始める人(4位と5位)は全体の2割くらいのようです。
次に副業で得ている収入についても確認してみましょう。
「副業で月に得ている収入」
- 1位 「3万円以下」(47.2%)
- 2位 「~5万円」(21.1%)
- 3位 「~10万円」(17.6%)
- 4位 「~20万円」(10.6%)
- 5位 「それ以上」(3.5%)
全体のうち、約7割の人が「~5万円」の収入を得ています。「~20万円」と「それ以上」稼いでいる人の割合を合計すると約1割。それなりに稼いでいる人はまだ少数派のようです。
筆者の副業時代の収入に触れておきます。当時は月に「3万円以下」、良くても「~5万円」のゾーンに入るくらいの収入でした。調べたり書いたりする時間がかかっていることを踏まえると、副業で得た収入は割に合ってはいなかったとも言えます。ただしもし将来やりたいことがあるのなら、「独立を見据えたお試しの場」として、副業で始めてみるのがおすすめです。実際の市場で自分の力を試すことができ、その経験が金額には代えがたいものとなるはずです。
副業を始める前に本業の就業規則を確認
本業と健全な両立を図るためにも、副業を始める前には、本業の就業規則を確認することは大切なことです。
副業や兼業の促進が国を挙げて図られています。副業を解禁する会社も増えてきていますが、禁止しているところもまだあります。副業の可否について本業の就業規則を事前に確認することは、社会人として守るべきルールであり、後々のトラブルを防ぐためにも必ず行いましょう。
所得が20万円を超えたら確定申告を!
副業で得た収入にも、年間の所得が20万円を超えると所得税の確定申告をする必要があります。
フリーランスのような、個人で受け取る報酬は、税制上「雑所得」という扱いになります。他方、企業に雇用され給与を受け取る報酬は「給与所得」となります。「雑所得」には経費が認められるため、収入から経費を引くことができ、その残りが「所得」となります。
たとえば、個人として輸入雑貨を販売し、その売上が50万円、そこに35万円の経費がかかっていたとしたら、15万円の所得となります。つまりこのケースでは確定申告が不要となるのです
一方、「給与所得」には経費の計上ができないことになっています。給与として受け取った額が「給与所得」となり、20万円を超えて受け取ったら確定申告が必要となります。
20万円以下なら確定申告は一切不要?
所得が20万円以下でも、確定申告をした方がよいケースあります。受け取った報酬にあらかじめ所得税が引かれていた(源泉徴収されていた)場合には、確定申告をすることで払い過ぎた税金が戻ってくる場合もあります。源泉徴収されていたかどうかは、給与明細や支払明細書で確認できます。
また、医療費控除やふるさと納税(寄附金控除)などの適用を受ける場合は、副業が20万円以下でも確定申告を行います *2。
20万円以下でも住民税に対する申告は必要
一方、所得に課される税金には所得税のほか、住民税もあります。住民税に対する申告は20万円以下の所得であっても必要です。
そもそも所得税は国税、住民税は地方税という違いがあります。所得税の確定申告をする場合は、税金の情報が自動的に居住する地域の自治体に送られるため、住民税に関する申告は不要となります。しかし所得税の確定申告をしない場合は、自動的に税金の情報が送られないため自分で役所へ行って申告する必要があります。住民税についても忘れずに申告しましょう。
副業でパートやアルバイト 社会保険に加入していますか?
会社員が加入する主な社会保険には、雇用保険、労災保険、健康保険、厚生年金保険(以下、厚生年金)などがあります。フリーランスとして個人で副業する場合は、いくら大きな報酬を得ようと、新たに社会保険に加入する必要はありません。
一方、企業に雇われる形で副業する場合、社会保険の種類によっては新たに届け出が必要となり、保険料の負担が増えることもあります。
雇用保険は2つの事業所で加入できないため、報酬の多いところで加入することになります。労災保険は、本業と副業の事業所両方で加入することになりますが、保険料は事業所が負担するため、働いている人に新たな負担が生じることはありません。
つまり、副業で影響の出る可能性があるのは、健康保険と厚生年金です。以下の要件を満たすと、副業先の事業所でも加入の義務が生じるからです。
《健康保険・厚生年金の加入対象者の要件》
(1)1週間あたりの決まった労働時間が20時間以上あること
(2)1カ月あたりの賃金が8.8万円以上あること
(3)雇用期間の見込みが1年以上あること
(4)学生でないこと
(5)従業員数が501人以上の会社で働いていること※
※従業員数が500人以下の会社でも労使の合意があれば加入できることもある。
上記の要件を満たし、本業と副業先の事業所で加入することになった場合の届け出方法は、次の通りです。
- 厚生年金・・・被保険者がいずれか一方の事業所を選び、その事業所を管轄する年金事務所へ届け出る
- 健康保険・・・保険者(健康保険組合や協会けんぽ)が複数ある場合は、いずれかの保険者を選び届け出る
出典:厚生労働省HP *3
副業を通じて知識も身につける
副業により、経済的な豊かさが得られることや、自分の新たな可能性を見出せる効果が期待できる一方、税金の申告が必要だったり、社会保険の加入にも影響が出てきたりなど、面倒なことが生じてくることは事実です。しかし、確定申告や社会保険の手続きを自分でしてみると、それぞれの制度に関する知識も高まるはずです。ぜひ前向きに捉えて取り組んでみてはいかがでしょうか。
もしわからないことがあった場合は、勤務先や税務署、年金事務所、健康保険組合などに相談してみるとよいでしょう。
*1 マイナビ転職『副業に関する意識調査』
2020年11月13日(金)~11月16日(月)に、3年以内副業経験、または副業意向がある会社員(正社員)・公務員を対象にWEB調査を実施。有効回答数は800名(内訳:20歳~59歳の年代ごとに200名)。
*2 国税庁ウェブサイト
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kakutei/kakutei/fukugyo.htm
*3 厚生労働省HP
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/2810tekiyoukakudai.html
【新時代のマネー戦略】は、FPなどのお金プロが、変化の激しい時代の家計防衛術や資産形成を提案する連載コラムです。毎月第2・第4金曜日に掲載します。アーカイブはこちら