成田市×歌舞伎

市川海老蔵さん「何事も前向きに、積極的に」 成人式でビデオメッセージ

SankeiBiz編集部

 「成田屋」の屋号を名乗る歌舞伎俳優、市川海老蔵さん(43)が20日、千葉県成田市で開かれた成人式で、新成人たちに「皆さんは名実ともに大人の仲間入りです。社会の一員としての自覚を持ち、何事も前向きに、積極的に日々励んでください」とビデオメッセージを寄せた。マスクをつけた新成人たちは海老蔵さんの突然の登場に驚きつつ、「熱意が感じられる言葉」に感銘を受けたようだった。

新成人「説得力のある方」

 「成田市にゆかりのある方からメッセージが届いています」。厳かに進む式典の途中で照明が落とされ、壇上のスクリーンに海老蔵さんの姿が映し出されると会場にどよめきが起こった。

 海老蔵さんは「私が11代市川海老蔵として舞台で演じることができるのは、これまで多くの方々に支えられてきたからです。きょうは皆さんの晴れの舞台です。一人一人お世話になった方を思い浮かべて感謝する、そのような日にしてください」と語り、「この成田の地から未来に向かって羽ばたいていく皆さんの今後のご活躍を祈念します」と大人の門出を祝った。

 式典は新成人が企画運営に参加する実行委員会形式で行われた。実行委員長を務めた大学生、鈴木啓太さん(20)が、海老蔵さんにメッセージを依頼した理由を語る。

 「成田市にゆかりのある方ということで、候補として出てきたのが海老蔵さんでした。いろいろな人生を経験されていて、私たちに対して説得力がある方だと思いました」

 成田市にある成田山新勝寺と市川團十郎家とは、初代團十郎が子の誕生を本尊の不動明王に祈願して以来の縁。江戸元禄以来、成田山不動尊信仰の絆で結ばれ、屋号「成田屋」の由来になっている。実行委によると、昨年8月ごろに海老蔵さんに白羽の矢を立て、新成人へのメッセージを依頼したという。

 若者たちの依頼を快諾

 副実行委員長を務めた専門学校生、浅野拳矢さん(20)は「コロナ禍でもあり、海老蔵さんは(依頼を)受けてくれないかもしれないという思いもありました。断られた時のことも考えて、別の候補も考えていました」と振り返る。

 だが、海老蔵さんは依頼を快諾。浅野さんは「海老蔵さんがスクリーンに登場して会場がどよめいた時はうれしかったです」と目を細めた。

 海老蔵さんは2015年、日本の伝統芸能・文化と連動しながら、成田の魅力を発信する「成田市御案内人」に任命された。例年は2月に成田山新勝寺で行われる節分会で、長男の堀越勸玄(かんげん)ちゃんとともに「福は内」の掛け声に合わせて豆まきを行ってきたが、今年は感染拡大防止の観点から海老蔵さんら著名人による豆まきが中止に。

 成人式の式典を取りやめる自治体も相次いたが、成田市では感染状況を考慮し3月に延期した上で、「3密」(密閉、密集、密接)を避けるため式典を3回に分けるなどの感染防止対策を徹底し、この日の実施に至ったという。

 「3部構成の式典やソーシャルディスタンス(社会的距離)の確保など、ゼロから作ったのでやりがいがありました」と、副実行委員長を務めた大学生の宍倉涼乃さん(20)。海老蔵さんについては「小学校の頃から、歌舞伎を体育館で見せてもらっていましたので、割と身近な存在でした」という。成田市民は幼少のころから歌舞伎と親しむ機会が少なくないようだ。

 実行委員長の鈴木さんは「海老蔵さんの言葉は熱意が感じられる内容でした。とてもありがたかったです」と話した。

市長「どんな経験も将来への原動力に」

 式典では、小泉一成市長が「新型コロナウイルスの収束が見通せない中、今は辛くても、必ず笑える日がやってきます。どんな経験も将来への原動力になります。これからの人生に大きな支えになります」と新成人たちを励ました。

 新成人を代表する「はたちの意見」では、佐久間しんじゅさんが「自分の人生の主人公は自分自身。人生の選択権は自分にあるということです。何かの決断を下すときに、その決断は本当に自分の望むものなのか考えてください」と呼びかけ、高橋侑里さんは「この成人としての決意を忘れず、さらなる飛躍に向けて努力していきます」と誓った。

SankeiBiz編集部 SankeiBiz編集部員
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