グローバルリーダーの育て方

3歳児をスピーチコンテストに出場させる理由 「勝ち負け」を決めることは不平等?

龍芳乃

年度末の一大イベント

 4月まであと数日。私が運営しているインターナショナルスクール「GGIS」でも、新年度の準備を始めています。毎年、年度を締める上でGGISにとってとても大切なイベントがあります。

 「Children’s International Public Speaking Competition 2021(チルドレンズ・インターナショナル・パブリック・スピーキング・コンペティション2021)」です。

 public speakingは直訳すれば「演説」ですが、一般的に「スピーチコンテスト」と言われているものです。それを子供が、そして英語でおこなうのです。(本記事内では便宜上スピーチコンテストと記載します。)

 東京では緊急事態宣言が発出されていたため、開催の中止も検討しましたが、規模縮小や当日の感染対策を講じた上で無事に開催することができました。

日常的な「発表会」ではない場を経験する意味は?

 GGISでは、やり抜く力、自己肯定感、他者へ配慮、コミュニケーション能力などの非認知能力を大切にしています。この非認知能力は、目に見えないですし、評価が難しいため、取り組み方もとてもむずかしいのですが、日々の活動の中に沢山の工夫をしながらその発達を促すものを組み込んでいます。

 非認知能力の中で、コミュニケーションや表現力につながる取り組みとして、日常の中で発表する場面をたくさん用意しています。

 その代表はShow and Tellです。文字どおり、提示して説明するスキルを促す、小さな発表会のようなものです。例えば、一番大切なおもちゃを学校に持参してクラスメイトに向けて説明します。質疑応答タイムもあります。また、レッスンで作った自分の作品について紹介し説明することもあります。GGISではその集大成としてスピーチコンテストが位置づけられているのです。

 コンテストの様子ですが、和気あいあいとした発表会ではありません。3歳から小学生の子供が、粛然とした改まった雰囲気の中、広いステージに上がり発表。大人でもこのようなかしこまった場面で発表するという機会はなかなかないですよね。

 緊張感漂うセッティングですが、意図的にそのようにしています。和気あいあいとしたお遊戯会や発表会も大事。でも、緊張感のあるステージを経験すれば、また別の角度から成長が見られると期待しています。

GGIS主催のスピーチコンテストの様子

葛藤を経験して、競争と向き合う

 小学生のほか、最年少では3歳の生徒も参加します。出場できる人数も限られているため、本番に向けて選考もあります。そして、「コンテスト」のため、順位も決められます。

 「こんな小さい時から順位をつけるべきだろうか? 勝てなかった子が可愛そうかな…」

 コンテスト開催にあたっては、そのように思ってしまう自分もいました。しかし、こんなに小さいのに、生徒たちそれぞれが、真剣に取り組み向き合ってくれる姿を見て、毎度感動します。こんなに小さいのに、心の葛藤があり、それを乗り越えていく姿があります。

 まなみちゃん(仮名)は、当日が近づくにつれ、舞台に上がることを想像して怖くなり、「やっぱり出たくない」と言い出しました。でも、保護者のサポートもあり、おうちで一生懸命練習して自信をつけ、当日立派に発表できました。

 去年のコンテストで、賞を貰えず悔しくて号泣したニイナちゃん(仮名)。実は十分には練習していなかったようです。去年の教訓をもとに今年は自ら猛特訓。今年も賞をもらえたわけではないけど、自分がどれくらい頑張ったかを知っているから、泣かずに「また来年頑張る!」と明るく言ってくれました。

 選考に落ち、本番に出られなかった生徒の中には、本番に出る生徒のことを想って、「頑張ってね」とお手紙を書いてくれる子がいました。

 それぞれがそれぞれの立場で最善を尽くしてくれました。

「成功体験を積み上げる」ために「失敗」に向き合う

 GGISは、かけっこでみんなが1位になれる学校ではないです。スピーチコンテストもそうですが、競争を否定していません。

 もし競争で「負けた」と本人が感じるのであれば、それをどう乗り越えるか、気持ちをどう切り替えるか、また「負け」と諦めるのではなくそこからなにを学べるか保護者や先生などと一緒に考えることが重要なのだと思います。競争があるという現実を本人たちから隠しても…いつかは直面する問題です。

 すべての事柄で1番になる必要はないですし、無理です。輝けないところがあるのが自然だし、不得意分野がある自分を受け入れ愛し、不得意に向き合う能力を育む。諦めとは違います。それぞれが輝ける場所で輝ければいいのです! 最善を尽くす努力をできるようになればいいのです。

 と少し精神論で熱くなってしまったところで…ちょっとしたエピソードをご紹介します。

 私は5人兄弟の2番目として育ったのですが、末っ子の弟(誠太・現在28才)は、本当にタフな環境で育ったと思います(笑)

 ゲームをすれば基本的に負けて(もちろん勝たせてあげることもゼロではなかったですが)、鬼ごっこすればずっと鬼にされ、容赦ない兄弟たちに揉みくちゃにされながら育ちました。弟はそんなタフな環境で、自分なりの生き抜き方や付き合い方を学んだのかなと思います。

一人ひとりの違いを大切にするということ

 「平等」や「和を大事にする」ことも大切です。それも一つの価値観ですし、大事な考え方。日本人の美しい文化でもあります。それはそれで大切にしつつ、「違い」とどうつきあっていくか…このバランスが難しい!

 教育施設としてある程度の「平等」が必要なことは承知していますが、GGISでは生徒どうしを平等に扱うことが目標ではありません。それぞれ違うから。違いを享受できる人になってほしい。

 エリート主義や「強者が偉い!」とは違いますし、「できる人=正義」とも違います。重複になりますが、学校(保護者・大人)としてできることは、それぞれの子が輝ける場所を用意すること。「同じ=平等」じゃないけど、それでいいのです。

 これまた、熱くなってしまったところで…GGISに通う我が子について、「平等性」という観点から見ると、息子たちにとってGGISに通うことは時として不平等かもしれないと思うことがあります。

 先生のおかげで基本的には他の生徒と同じように日々生活をしていますが、母が運営している学校のため、誰かが「犠牲」にならないといけない場合は、真っ先に息子を犠牲にしています。

 例えば、発表会のご褒美として、全員がお楽しみバッグを貰えるはずが、色々アクシデントが発生してバッグが足りないとき。誰かが貰えないとなったら、息子が貰えない立場になります。このような小さな犠牲は他にもあります。あまりここでは書けないですが(笑)

 息子たちがどの程度その「不公平」を認識しているかは、わかりません。しかし一方で、息子たちは、私の息子(運営者の息子)だから得しているところもきっとあるでしょう。「犠牲」になった息子たちには、

  • 「人生そういうもの」

 と伝えつつ、母は別の場面でフォローします。息子たちはわかってくれると信じて(笑)

最後は愛が勝つ!(笑)

 長くなってしまいましたが、どのような環境に置かれても、ポジティブに捉える力・スキルが大切です。色々なことにチャレンジできるよう、環境として大人が用意できる、最強のツールはなんでしょうか?

  • 愛です。
  • Loveです。

 臭いようですが、本当のこと! 愛されていることを実感していれば、多少失敗したって、多少悲しくったって、多少凹んだって、立ち上がれるからです。基盤となる愛があってこそ、根拠のない自信につながる。だから、本日も心のソーシャルディスタンスは取らず、たくさん愛して、たくさん生徒たちを揉みくちゃにします!

龍芳乃(りゅう・よしの) 株式会社G&G 代表取締役
日・英・中のトライリンガル。大学卒業後、PR会社、外資系コンサルティング会社を経て2013年に起業。世界で通じる「人間力」の基礎を育む「GG International School」を経営。「Art to Science」をベースに0歳から小学校高学年まで学べるプログラムを用意し、人格形成の根幹となる揺るぎない自信を育んでいる。2児の母。

【グローバルリーダーの育て方】は、100%英語環境の保育園やアフタースクールを経営する女性社長・龍芳乃さんが、子供が世界で通じる「人間力」「国際競争力」をどう養っていくべきかを説く連載コラムです。アーカイブはこちら