廃止が決まり、口座数28%増
NISA(少額投資非課税制度)には、一般NISA・つみたてNISA・ジュニアNISAの3種類があります。上場株式や株式投資信託の配当金、譲渡益が非課税になる制度です。3種類のうちジュニアNISAが2023年12月末に廃止されるのはご存知でしょうか? 廃止されるなら関係ないと思われた方も多いかもしれません。しかしながら、ジュニアNISAは廃止が決まったことにより、格段に使いやすくなりました。
この1年間(2019年12月末から2020年12月末)で実に口座数で約28.5%、買い付け残高は約54.1%も増加しているのです。ひそかな人気と言ってもいいのではないでしょうか。今回は使い勝手の良くなったジュニアNISAの魅力についてお伝えしようと思います。
ジュニアNISAとはどんな制度?
まずは現行の制度を見ていきましょう。
- 対象者:日本在住の0歳から19歳まで
- 口座開設:一人1口座
- 保有期間:最長5年間
- 投資金額:年間80万円まで
- 投資対象:上場株式・株式投資信託・ETF・REITなど
- 投資可能期間:2023年12月末まで
- 運用管理者:親権者が代理で管理、運用
- 途中売却:自由
- 払い出し制限:18歳まで※
- 金融機関変更:変更不可
※3月31日時点で18歳である年の前年12月31日まで
▼一般NISAやつみたてNISAと異なる点
一般NISAやつみたてNISAと異なる点は、①対象が未成年であること、②代理で親権者が管理・運用すること、③金融機関の途中変更ができないこと、④払い出し制限があること、などです。制限解除前に途中で払い出しをした場合は、災害等やむを得ない場合を除き、過去に非課税で支払われた配当金や売却益に対しすべて課税(遡及課税)され、ジュニアNISA口座は廃止されてしまいます。とても厳しい制限です。
その他NISAの共通注意事項として、①他のNISAや特定口座、一般口座との損益通算や損失について3年間の繰り越し控除はできないこと、②投資金額(ジュニアNISAは年間80万円まで)の未使用分は次年度に持ち越しはできないこと、③途中売却をした場合の枠の再利用もできないこと、があります。
これらの条件を見ていくと、使いにくいと感じる方が多いと思います。これがジュニアNISAの利用が少なかった原因だと考えられます。
どこが変わった? 使いやすくなったジュニアNISA
ジュニアNISAはすでに2023年12月末で廃止が決まっていますから、新たに投資ができるのは2021年~2023年の3年間という期間限定です。
▼払い出し制限がなくなる
では、どこが使いやすくなったのでしょうか。実は最大の難関だった払い出し制限が撤廃されるのです。今までは、「18歳である年の前年の12月31日まで」という払い出し制限がありました。
例えば大学の受験費用で使おうと思っていても、現在は大学受験も多様化し、AO入試や推薦入試など一般入試より早く合格が決まり、年内に入学金を納めなくてはならないケースも多く、この払い出し制限がネックになっていました。それが2024年1月以降、年齢に関わらずいつでも払い出しが可能になり、かつ遡及課税(遡り課税)されなくなります。
「せっかく○○年間預けておいたのに、払い出し制限解除まで待てず払い出し、すべて遡及課税される」などという事態に陥らなくてすみます。期間限定ながら、いつでもペナルティなしで払い出せる魅力的な制度に生まれ変わったのです。
▼非課税保有期間が終了したらどうなる
従来、ジュニアNISAは5年間の非課税保有期間が終了すると、①引き続き非課税で新たな非課税枠を利用する(ロールオーバー)か、②売却して課税ジュニアNISA口座(払い出し制限あり)に移す方法があります。もちろん5年間保有せずに途中売却をしても構いません。その場合は課税ジュニアNISA口座に入金しておくことになります。
2022年末までに期限が来るジュニアNISAに関してはロールオーバーが可能ですが、2023年以降終了するものに関してはどうなるのでしょうか。5年の期限が終わると「継続管理勘定」という移管専用の勘定が設けられ、ロールオーバーと同じように引き続き非課税で、成人まで保有が可能となります。
つまり、例えば今年7歳の子が2021年にジュニアNISA口座で株式投資信託を80万円購入し、2025年末に期限を迎えるものの、2026年以降成人するまで引き続き非課税で保有できるだけでなく、売却も可能ということです。
成人年齢の引き下げでNISAの年齢も引き下げられる
民法の改正で、2022年4月1日より成人年齢が20歳から18歳に引き下げられます。それに伴いNISAの対象年齢も2023年1月より自動的に変更されます。未成年が18歳未満に引き下げられ、ジュニアNISAの対象年齢が0歳から17歳、一般NISAとつみたてNISAが18歳以上になります。
継続管理勘定の上場株式等は、成人に達すると自動的に特定口座に移管されます。2022年末までに18歳を迎える方は、ジュニアNISAの対象外になりますので注意しましょう。
ジュニアNISAどう活用するのが賢いか
金融庁が発表している2020年12月末時点の「利用状況調査(速報値)」(PDF)による、ジュニアNISA、NISA、つみたてNISAの口座数と買付額を比較してみましょう。
ジュニアNISA
・利用口座数 45万4614口座
・買い付け額 2550億2450万円
NISA
・利用口座数 1221万1468口座
・買い付け額 21兆3337億1270万円
つみたてNISA
・利用口座数 302万8259口座
・買い付け額 6878億1691万円
表のとおり、一般NISAやつみたてNISAに比べると大幅に利用の少ないことがわかります。しかしこれは、今まで使い勝手が悪かったためだと考えられ、冒頭でも書いたように最近は飛躍的に利用が増えています。
実はジュニアNISA以外に、子や孫に非課税で贈与できるものとして、「教育資金の一括贈与」(上限1500万円、2023年3月31日まで)という別の制度があります。「教育資金の一括贈与」は、名前の通り教育資金等に使途が限られていますが、ジュニアNISAは使途が自由なため、例えば卒業旅行や引っ越し費用などにも使えます。
自由度がさらに増し、短期間運用して払い出すことも長期で時間を味方にして運用することも可能となりました。今からでも最大80万円×3年=240万円というまとまった金額の運用ができます。
ただし、払い出しの際は一部を出すことはできず、すべての商品を払い出さなければなりません。そして、払い出すとジュニアNISA口座は廃止されます。ですから、払い出しの際はタイミングを見計らう必要があります。
廃止まであと3年しかないと考えるのではなく、あと3年もチャンスがあると考えて、使いやすくなったジュニアNISAを今から利用してみてはいかがでしょうか。