不動産もシェアする時代
カーシェアリングやシェアハウスなどに代表されるシェアリングエコノミーが益々拡大しています。サービス内容も多様化し、「モノを持たず利用したい時だけ使う」ものから、「個々のスキルを相互活用する」、「空いた時間を他人に売る」といったものまで登場しています。
解釈を広げれば、「自分だけではとても買えない高額の財産をシェアして持つ」という考え方も、シェアリングエコノミーのひとつでしょう。競走馬の一口馬主、養殖の一口権利等は以前からありましたが、最近では絵画等の美術品やワインの元となる葡萄の木をシェアするサービスも登場しています。とかく趣味的色あいの濃いものが多い中、純粋に資産形成目的を叶える手段として、「不動産の一口オーナーになる」という選択肢も、いま増えています。
不動産小口化商品とは何か?
株式や債券等の金融商品(有価証券)ほどではありませんが、不動産も投資対象として依然人気があります。
不動産は有価証券ほど価格が日々激しく値動きするわけではなく、売却益を狙う目的もありはしますが、賃料収入という比較的安定した不労収入を得る目的で考える方がほとんどと思われます。しかし、大抵の投資対象は数千万円規模のマンション・アパートの一室等であり、マンションやオフィスビルに一棟まるごと投資するなんて個人では中々難しいものです。このような不動産のオーナーになるための方法として注目を集めるのが不動産小口化商品です。
例えば、10億円するマンション一棟でも100人で共同出資すれば、一人あたり1,000万円の投資で足ります。この物件の年間賃料が5,000万円とすると、共同出資者100人で案分した一人あたり取り分は50万円となります。
不動産小口化商品も単純に考えるとこうしたしくみですが、実際に不動産を所有する際には物件の維持や管理等の手間や諸費用がかかるほか、何より立地や利便性等の個別条件で価値が大きく異なる不動産は、どの物件に投資するのかという選択眼が非常に重要となります。
不動産小口化商品とは、不動産会社や不動産運用会社等のプロの事業者が選別した物件を小口化し広くオーナーを募るしくみですが、物件の維持管理等の手間も事業者が行ってくれるので、投資家は賃料等の収益から事業者へ支払う報酬や手数料を差し引いた残りを、所有割合に応じて分配金として受け取ることになります。
昨今では、商品やサービスを規定する法律の規制緩和により事業者が参入しやすくなったほか、インターネット等で手軽にモノやプロジェクト等に出資するクラウドファンディングが身近になったことも手伝い、商品数が飛躍的に増えています。
不動産小口化商品のメリット
不動産のプロの目利きによる物件を維持管理の手間なく所有できる点は述べましたが、他にも不動産小口化商品のメリットとしては以下も考えられます。
- 個人では投資するのが難しい高額不動産のオーナーになれる
- 個人では投資するのが難しい事業用不動産のオーナーになれる
- 不動産投資におけるリスクを分散できる
- 税制面でのメリットを享受できる
▼不動産投資の利回り、2つの視点
まず、不動産投資においては利回りが重要な判断材料となりますが、これには「高利回り物件」と「中~低利回りだけど安定した物件」という、2つの視点があります。
高利回り物件は、例えば中古物件や格安物件を購入し一定の賃料を得ることで達成できますが、ただでさえ人口減や今後は世帯数減が予想されるなか、特に居住用物件(レジデンシャル)に対する物件選びの選択眼がより厳しく求められます。
一方の中~低利回りだけど安定した物件は、例えば人気の高い街のレジデンシャルや、都心一等地(東京都内でいえば 千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区等)に所在のレジデンシャルやオフィスビル等が該当します。こうした物件は高額なため相対的に利回りは低くなりがちですが、景気や地価等の変動を受けづらく、常に一定のニーズがあるので安定した利回りを期待できます。
不動産投資では規模の効率化も働くため一室よりは建物一棟が費用面でも効率よく、レア物件よりは誰もが認める付加価値の高い物件に投資するのが安定します。こうした希少かつ高額な物件でも、小口化された商品に投資することでその恩恵を受けられることはメリットといえます。
また、商品によっては、保育園や病院等の施設、各種レジャー施設やホテル、さらには観光やレジャー施設の建築を目的とする事業用地等が小口化し販売されることもあります。こうした事例では不動産を活用した事業へ出資するという側面が強くなりますが、個人が手を出すことは難しいものでも購入できる点は、不動産小口化商品ならではでしょう。
▼一口あたり数万円から購入可能な商品も
さらに、不動産小口化商品は、商品にもよりますが一口あたり数万円から数百万円単位の少額で購入できます。
マンション一室を現物不動産として持つのと比べ、同じ投資額でも複数の不動産に分けて所有できるので、空室リスクや災害等に遭うといった投資リスクを分散することが期待できます。
ただし、不動産小口化商品は金融機関融資(ファイナンス)が利用できないため、全額自己資金(フルエクイティ)で購入しなければなりません。このため、現物不動産のように融資を最大限活用して少ない自己資金でレバレッジを効かすような投資を行うことができない点に留意する必要はあります。
▼相続税対策にもなる
最後に税制面として、とくに相続対策として効果を発揮する点が注目されています。ちなみに、相続税や贈与税の課税対象となる財産は、その種類に応じて所定の評価方法で算出する決まりなのですが、有価証券を含む金融商品や現預金は時価で評価するのに対し、不動産は総じて時価より低い評価方法で算出できます。つまり、現預金や有価証券から不動産に資産替えすれば評価額を減らせるため相続対策にはよく不動産が活用されています。
不動産は分割・換金するのが難しい点がネックなのですが、不動産小口化商品を複数口所有していれば、各相続人に分割して渡すことが可能となります。
REIT(不動産投資信託)との違いは?
個人で投資するのが難しい大型物件や高額物件、あるいは希少な事業物件等に少額から投資できるのが、現物不動産投資に対する不動産小口化商品の強みです。しかし、こうした物件に少額分散投資できる商品としては、不動産投資信託(REIT)もあります。両者はしくみこそ似ていますが商品性は全く異なります。
不動産小口化商品を検討する場合はREITとの違いも抑えておくべきでしょう。
まず、両者で一番異なる点は「資産としての価値」の違いといえます。不動産小口化商品は文字通り現物不動産を分割して所有するので、原則としてその価値は「不動産」です。一方、REITは投資信託商品という有価証券であり、資産価値は「金融商品」です。この違いは、商品を規制する法律や監督官庁の違い(不動産は国交省、金融商品は金融庁)となり、定期的に受け取る分配金や売却時の税制の違いとして影響します。
また、上場されているREITは証券取引市場等で売買できますので、流動性や換金性に優れる反面、景気等や売り買いの受給関係等の影響で価格が大きく変動することもあります。不動産小口化商品は不動産なので、流動性や換金性は劣るものの、有価証券のような価格変動は起こりづらいといえます。
さらに、REITは大規模に資金を集めて複数の不動産等に分散投資するので、投資先が見えづらい面もあり、「〇〇区にある△△オフィスビルを小口所有している」と認識できる不動産小口化商品とは大きく異なります。
不動産小口化商品を選ぶ際のポイント
これまで不動産小口化商品をひとくくりで述べてきましたが、実は規定する法律やしくみにより3つに分けられます。
法律別では、不動産特定共同事業法(不特法)を根拠として事業者と投資家とで組合契約を結んで共同事業形式で互いに出資する「不特法商品」と、信託法等を根拠として事業者・信託銀行・不特定多数の投資家とで信託契約を結び事業を行う「信託法商品」があります。
さらに「不特法商品」は共同事業(組合)の構成上、投資家も不動産の所有者となる「任意組合型」と、投資家が不動産の登記簿に登記されない「匿名組合型」があります。
事業者数や商品数でいうと、概ね「匿名組合型」、次に「任意組合型」の「不特法商品」が多く、「信託法商品」はまだ僅かです。これら3つの不動産小口化商品では微妙な違いがありますが、重視するポイントに応じて選別する必要があります。
▼最も金融商品に近い「匿名組合型」
まず、利回りや流動性・換金性を重視するのであれば、これらの中で最も金融商品に近い「匿名組合型」を選ぶことになります。先に述べたクラウドファンディングによる出資方法も、簡素なしくみの「匿名組合型」ならではで、一口あたり出資額も数万円と最も少額で済み、運用期間も比較的短めです。
また、このスキームだけは、他と異なり、賃料として受け取る収益(分配金)にかかる税金が個人年金保険等と同じ雑所得の対象で、一般の不動産投資における賃料収入に係る不動産所得とはなりません。不動産の所有者となるわけでないので取得等にかかる税金負担がなく、他に手数料等として必要経費に計上する出費がなければ、事業者から振り込まれる分配金がそのまま課税対象となり、とてもシンプルです。なお、この分配金は20.42%が源泉徴収されているので、必要に応じて確定申告をすることになります。
私感ですが、「匿名組合型」はより金融商品に近いものの、金融庁の管轄商品ではないため、金融商品課税されるREITと比べ税制面での魅力は薄く、利回りも流動性・換金性も本家の金融商品であるREITに軍配があがると考えます。とはいえ、希少価値の高い物件に投資できる商品であれば、考え方によってはこれらのデメリットを覆す有力な選択肢になり得ます。
▼「信託法商品」は不動産取得税が非課税
次に、「匿名組合型」と概ね対局位置にあるのが「信託法商品」です。このスキームは事業に関わるプレイヤーが多い分、報酬も高めなので利回りは3つの中で最も低くなります。また、商品にもよりますが流動性や換金性において融通の利かないケースが少なくはありません。その代わり、不動産取得税が非課税であり、かつ登録免許税も「任意組合型」のスキームより格段に安く、信託商品は財産評価方法が通達により明文化されているため、特に相続対策には他のスキームに比べて絶大な安定感があります。
相対的に利回りが劣るとはいえ、商品により異なるので、より高めの利回りが期待できる商品であれば税制面においても、最も安心できるスキームといえます。
▼「任意組合型」にも一定の相続対策効果
最後に「任意組合型」はこれら2つの中間的な位置づけとなります。すなわち、「信託法商品」と同様、出資分に応じた不動産の所有者となるので、一定の相続対策にも有効であり、「信託法商品」よりは高い利回りを期待でき、流動性や換金性の融通も効きます。
ただし、小口持ち分は不動産として評価されるのが現時点での一般的な解釈ですが、不特法の対象となる財産の評価方法には明文化された規定がないため、将来的に通達の変更があって、評価方法が変更されるかもしれない不安定さはあります。ですが、不動産小口商品の性格を良くも悪くも反映しているのが「任意組合型」スキームといえるでしょう。
▼「信託法商品」と「任意組合型」に特有の税金の留意点
「信託法商品」も「任意組合型」も、分配金は不動産所得の課税対象ですので、不動産取得等にかかる各種税金等や、取得(出資)額に対する各年の減価償却費を経費に算入することができます。しかし、現物不動産における不動産所得のように、収入から経費を引いた所得が赤字の場合に給与所得等の他の所得と相殺できるしくみ(損益通算)が適用できないとされています。
不動産所得の利点のひとつが損益通算なので、これを使えないのは残念なところです。
また、売却(償還)時は不動産の譲渡所得の扱いとなりますので、所有期間が5年以下だと短期譲渡とみなされて税率が非常に高くなってしまいます。中途解約する場合には注意が必要です。
▼事業者が倒産した場合は?
いずれのスキームにおいても、投資商品である以上、元本割れリスクを伴いますが、昨今の不動産小口化商品のほとんどには事業者が倒産した場合でも、各オーナーの持ち分を分別管理し保証する措置が取られています。
投資を検討する際には、この措置の有無もチェックしておくことをお勧めします。
不動産小口化商品の魅力とうまみ
筆者の雑感ですが、昨今増えている不動産小口化商品の一番の魅力は、投資物件、あるいは不動産を活用した事業プロジェクトの個別性に応じて、自分で選別して少額資金で出資できる点にあると考えます。
現物不動産のようにファイナンスを活用したダイナミックなレバレッジ効果は期待できませんが、裏を返せば借金なしで大規模プロジェクトに関わることもできます。また、ゆかりのある地域の創生に寄与する目的で、小口化商品を通じて地方の不動産や事業プロジェクトに投資するという考え方もあります。REITのように市場に連動する金融商品としての値動きや税制メリットはないものの、特異な物件のオーナーとして名を連ねる妙味はあるでしょう。
何かひとつの方法に特化するのでなく、不動産に投資する選択肢がまた広がっていると考えれば、その興味は尽きません。
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