受験指導の現場から

毎日塾通い or 5割は自主勉…どちらが向いている? 我が子の夏の過ごし方

吉田克己

 本稿が公開される頃には夏期講習会も真っ盛り。多くの受験生は、来春の本番に向けて、スタートダッシュを図っていることだろう。

 今回は、その夏期講習会を含めた夏の過ごし方について考えてみたいのであるが、対象とするのは現・受験生ではなく、来年・再来年に「受験生の夏」を迎える、今の小5・小4生とその親御さんである。

夏期講習会の負荷は塾それぞれ

 最初に、四大中学受験塾の夏期講習会スケジュールを概観しておきたい。それぞれの夏期講習日程(小6)は、ざっと以下のようになっており、授業日数では大きく二つに分かれる。

  • 【SAPIX】授業:18日(400分/日)、テスト:1日
  • 【四谷大塚】授業:16日(400分/日)、テスト:2日、8月特訓:10日間
  • 【日能研】授業:24日(350分/日)、テスト:4日
  • 【Wアカ】授業:24日(380分/日)、テスト:2日、夏期集中特訓:5日間

 多少の補足説明をしておくと、四谷大塚では「8月特訓」は必修となっているため実質28日間となり、早稲田アカデミー(Wアカ)でも9割前後の生徒が「夏期集中特訓(合宿)」に参加することから実質31日間となる。また、日能研は実質28日間であるが、校舎によっては70分×5コマ/日に加えて、同じ日に70分の特別授業が設定され、フル参加だと420分/日となったりする。

 「受験生にとっては勉強が仕事」と考えるなら、SAPIX以外の3つの塾では、5日間程度のお盆休みを挟んで、週休1日で7時間/日(休憩・昼食時間を含めれば拘束時間としては8時間以上)の日が5~6週間続く、ということにあたる。

 「うちの子、体力がもつのか?」―不安に駆られる保護者は少なくないはずだ。筆者の経験に照らせば、普段からの授業で集中が途切れがちな生徒や居眠りをしてしまうことがあるような生徒には、相当にきつい。体力的にきついだけでなく、フル参加する価値があるのかという面でも。

 一方で、受験生の中には強者もいて、たとえば17時に授業が終わるとすると、19時まで復習してから帰宅する生徒も何割かいたりする。実際問題として、授業のあった日に、帰宅・夕食・入浴後にまた勉強を始めるというのは、大半の生徒にとっては、とてもではないがハードルが高い。であれば、家に帰ってから勉強することは諦めて、その日の授業で分からなかったところを1~2時間復習してから帰宅しよう、というのはむしろ合理的だろう。

塾漬け or 5割程度は自己管理 入塾前に判断を

 翻って、本稿の主題であるが、「塾のカリキュラムどおりに、通塾漬けの夏を送らせる」のか「自由に勉強できる(個別対応できる)日を半分くらい確保する」のか、どちらが我が子には向いているのか、受験本番まで通わせ続ける塾を決める前に判断しておきたい。

 後者に該当する塾は、じつは少なくはない。「うちの子にはある程度自由に、受験勉強であっても楽しくやってほしい」と考えているなら、大学受験で有名な塾にあたってみるとよいかもしれない。それらの塾は、大学受験こそ本番中の本番と位置付けているので、先々までの相談にも応えてくれる。夏期講習も10日間(2科目・4時間/日程度)×2ターム、計20日間程度のところが多い。

「やり切る」にチャレンジしよう

 ただし、ある程度自由にやらせるぶん、事前の計画がより重要になってくる。

 塾に日頃の学習計画を相談すると、しばしば曜日×時間帯のマトリクスが出てきて、「何曜日の何時から何時はこの教科をやる」といった具合に、細かな週間スケジュール立てを勧められることが珍しくない。が、率直なところ、筆者はお勧めしない。計画倒れになりやすいばかりでなく、さぼってしまった時間をリカバリーしづらく、さぼったぶんだけやる気も下がってしまう。

 大事なことは、「いつどれをやるか」ではなく、「いつまでに何をどこまでやるか」である。数学に乗っているときに、「あっ、時間がきたから次は英語」といった具合にわざわざ集中を切るのは愚拙、手段が目的化してしまっている。

 小4・小5(中1・中2)のうちは、夏期講習会にフル参加しても、夏休み期間中は時間に余裕がある。ゴールデンウィークも同様である。細かなスケジュールを立ててあれもこれもちょっとずつではなく、「これとこれは全部やる!」と、このタイミングで何かをやり切ることにチャレンジさせたい。

 ちなみに筆者の場合、中学の英語はこの方法でキャッチアップできた。数学には不安がなかったので、中3の夏休みには書店で買ってきた英語の分厚い問題集(書き込み式)1冊に集中したら、それまでずっと70点前後だった定期テストの点数が、次の中間テストでは90点を超えた。

 なお、小3~小5が1冊を短期間でやり切る教材としては、各塾の公式教材以外では、「日本一の算数ドリル」シリーズや「天才ドリル」シリーズが面白い。

京都大学工学部卒。株式会社リクルートを経て2002年3月に独立。産業能率大学通信講座「『週刊ダイヤモンド』でビジネストレンドを読む」(小論文)講師、近畿大学工学部非常勤講師。日頃は小~高校生の受験指導(理数系科目)に携わっている。「ダイヤモンド・オンライン」でも記事の企画編集・執筆に携わるほか、各種活字メディアの編集・制作ディレクターを務める。編・著書に『三国志で学ぶランチェスターの法則』『シェールガス革命とは何か』『元素変換現代版<錬金術>のフロンティア』ほか。

受験指導の現場から】は、吉田克己さんが日々受験を志す生徒に接している現場実感に照らし、教育に関する様々な情報をお届けする連載コラムです。受験生予備軍をもつ家庭を応援します。更新は原則第1水曜日。アーカイブはこちら