新時代のマネー戦略

ムダな税金は払わない! 年末までにやっておきたい7つの節税チェック

中島典子

 今年もあと2カ月、年末調整の時期になりました。「年末調整って、税金が戻るアレですよね」とよく聞かれますが、なぜ戻るのか、どのくらい戻るのか、をきちんとチェックしていますか? 実は、税金が戻ることを知っているだけでは、知らずに損をしているということがあるのです。

 壷にいくら水を注いでも、気づかなかった穴が底に空いていては溜まりません。自分ではしっかり溜めていたはずと思っていたのに、実は溜まっていなかったのでは、せっかくの苦労も水の泡になってしまいます。

 税金の知識も同じです。自分ではわかっていると思っていても、意外に仕組みをしっかりとは理解しておらず、勘違いをしていたということもありえます。また、仕組み自体、税制改正で変更になることもあります。そのため、知識のメンテナンスが必要。そうすることで、今まで気づかなかった「穴」を埋めることができるのです。

 そこで、今回は、税金の仕組みを再チェックして、税金で損をしないための知識の「穴」を埋めていきましょう。

税金の支払い、ココで損をしている

 税金と言えば「節税」というコトバが頭に思い浮かんだ方も多いのではないでしょうか。確かに、「節税」はとても大事なことですが、それだけではありません。税金で損をしないためには、2つのポイントがあります。

税金で損をしないための2つのポイント

 1つは「ムダな税金を払わない」、2つめは、「早めにキャッシュバックする」です。では、具体的に見ていきましょう。

1.ムダな税金を払わない

 税金で損をしている方には、「本当なら使えるはずの仕組み」を使っていないという場合が多く見受けられます。よくわからないし、忙しい、面倒…と、ついつい放っておいていませんか? 「使える制度はフル活用する」意識を常に持ちましょう。意識のアンテナを張っておくことで、情報に目が行きやすくなります。

2.早めにキャシュバックする

 税金の仕組みを使うことで、年末調整や確定申告で税金を戻す(または税金を減らす)ことが可能です。支払った税金を戻す(還付)=「キャッシュバック」です。支払った税金が戻れば、そのキャッシュを運用や他の資金に回すことができます。還付にはならず納税するという方でも、手元のキャッシュが残りますので、同様の効果が期待できます。しかも、来年よりも今年に、のように、より早くキャッシュバックすることができれば、早く運用に回せますので、より早く運用益を得ることも可能になります。

税金で損をしないための7つの「節税チェックポイント」

 「やっておけばよかった…」と、税金で損や後悔をしないために、節税を実現するための7つのチェック項目を見ていきましょう。

【7つの節税チェックポイント】

(1)税金の仕組みを再チェック

(2)昨年の税金をチェック

(3)3つの控除をチェック

(4)経費の控除を活用

(5)所得からの控除を活用

(6)税額からの控除を活用

(7)贈与の活用

 (1)~(7)の流れでチェックしていきます。

(1)税金の仕組みを再チェック

 所得税は税金の仕組みの基本です。働き方で所得の種類が異なりますが、一般に、サラリーマンの方なら「給与所得」、自営業の方なら「事業所得」、不動産賃貸業の方なら「不動産所得」になります(図1参照)。あわせて給与所得の税金の流れも再度チェックしておきましょう(図2参照)。

(2)昨年の税金で控除できたはずのものはないか

 次に、昨年の税金チェックをしましょう。節税ポイントは「控除」です。源泉徴収票(図3)や確定申告書(図4)で、どの控除に金額がいくら入っているかをチェックします。

《チェックのポイント》

・控除欄に金額の記載のない「空欄」のものがないか?

・控除欄に金額は記載されているが、「控除限度額」までフル活用されているか?

《チェックの方法》

【源泉徴収票の場合(図3)】

A 社会保険料等の金額欄→社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除(控除がある場合には、社会保険料等の金額欄に内書されている)をチェック

B 生命保険料の控除額・生命保険料の金額の内訳欄→生命保険料控除をチェック

C 地震保険料の控除額→地震保険料控除をチェック

【確定申告書の場合(図4)】

A 社会保険料控除の欄→社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除をチェック

B 生命保険料控除の欄→生命保険料控除をチェック

C 地震保険料控除の欄→地震保険料控除をチェック

《控除について》

・社会保険料控除

健康保険、厚生年金、介護保険、国民年金、国民健康保険などについて、その年中に支払った保険料全額が控除できます。扶養している実家の両親の国民健康保険や大学生の扶養家族のお子様の国民年金などを支払った場合に対象となる場合があります。

・小規模企業共済等掛金控除

iDeCoや自営業者の方の小規模企業共済等掛金が対象になります。その年中に支払った掛金全額が控除できます。

・生命保険料

支払った生命保険料は、①一般の保険料(新・旧生命保険料の金額)、②介護医療保険料(介護医療保険料の金額)、③個人年金保険料(新・旧個人年金保険料の金額)に区分して計算します。①~③合計で12万円まで控除できます。

・地震保険料控除

 マイホームの建物や家財、賃貸物件の家財の地震保険料を支払った場合、最高5万円まで控除できます。

(3)「3つの控除」があることを知る

 控除には、「経費の控除」「所得からの控除」「税額からの控除」の3つがあることを把握しましょう(図5)。この3項目で受けられる控除はないか、と今年1年間を振り返ってみてください。この控除をフル活用することで、税金のムダ払いをなくし節税することができます。

(4)「経費の控除」の活用 消耗品や備品を購入したか

 「経費の控除」とは、収入からの控除です。前に触れたように、自営業者の方や不動産賃貸業などの方は、収入から「必要経費」を控除することができます。また、青色申告者の特典である青色申告特別控除は10万円、55万円、65万円のいずれかになります。オンライン手続きであるe-Tax(イータックス)で申告するなどの要件を満たせば、最高65万円も可能です。

 なお、青色申告特別控除を受けるには、あらかじめ青色申告の承認申請が必要で、提出期限は3月15日(1月16日以後開業等の場合には2カ月以内)までです。今年控除がムリでも、来年受けられるように準備しておきましょう。

(5)「所得からの控除」にあたる枠が残っていないか

 所得からの控除は「所得控除」で15種類あります。昨年の源泉徴収票(図3)や確定申告書(図4)で控除の枠に金額の記載がなかったり、控除限度額に達していない場合は、今年の年末調整や確定申告で控除を受けることができる場合があります。また、iDeCoや小規模企業共済掛金など支払った金額が全額控除になるものをフル活用することで、節税することができます。

《所得控除15種類一覧》

1.雑損控除

2.医療費控除

3.寄附金控除

4.社会保険料控除

5.小規模企業共済等掛金控除

6.生命保険料控除

7.地震保険料控除

8.配偶者控除

9.配偶者特別控除

10.扶養控除

11.障害者控除

12.ひとり親控除

13.寡婦控除

14.勤労学生控除

15.基礎控除

(6)「税額からの控除」にあたる支払いはないか

 税額からの控除は「税額控除」です。税額控除は、税額からストレートに控除できるものです。そのため、他の控除よりも、節税効果が期待できます。税額控除の対象には、上場株式の配当金やマイホームの住宅ローンの住宅借入金等特別控除(図中では「住宅ローン控除」と表記)などがあります。

 上場株式等の配当金は、一般に源泉徴収だけで済みますが、配当金を申告することで、配当控除を取るほうが有利な場合があります。配当控除は年末調整できませんので、確定申告の手続きが必要です。

 上場株式の配当金は、通常15%の所得税が源泉徴収されます。仮に課税所得が500万円で所得税の税率を20%、配当控除の税率を10%とした場合、「配当金の源泉徴収の税率15%>所得税の税率20%-配当控除10%=10%」となるため、配当控除を選択したほうが所得税が少なくなるため有利となります。ただし、この有利不利は、その年の収入によっても変わります。また、通常住民税の負担が増えるため、所得税とは別に住民税の申告をした方が有利な場合があります。

(7)年内に受けられる/できる贈与はないか

 贈与の基礎控除などを年単位でフルに活用することで、税金を節税することができます。具体的な活用法は後ほどご説明します。

年内に済ませたほうが節税できる各種支払い

 税金で損をしないためのポイントの2つめとして先ほど、ムダな税金を払わずに、「早めにキャッシュバックする」とお伝えしました。早めにキャッシュバックするためにはまず、支払いを年内に実行することです。受けられる控除枠や控除上限額をフル活用するのです。

 年内に支払いを済ませると、確定申告などによって早めにキャッシュバックできる項目は例えばこちらです。控除の種類別に列挙します。

【所得からの控除】

  • 国民年金、国民健康保険
  • 生命保険、損害保険(地震保険)
  • 医療費
  • iDeCo、小規模企業共済掛金
  • 寄附金※(ふるさと納税など)

【税額からの控除】

  • 寄附金(一定の認定NPO法人や公益社団法人などへの寄附金)※

【経費の控除】

  • 自営業・副業のパソコンや備品、消耗品などの経費

【その他】

  • 贈与

※寄附金は、寄附金の種類により、所得控除と税額控除とのいずれか有利な方を選択できるものがあります。寄附先発行の受領書(領収書)やHPで確認しましょう。

▼未払いの国民年金・健康保険料を支払う

 自営業の方などは、国民年金や国民健康保険、介護保険の支払いをチェックしておきましょう。国民年金や国民健康保険、介護保険は、支払った全額が「社会保険料控除」となります。所得税だけなく、住民税、国民健康保険・介護保険の金額も変わってきます。払うなら年内がおすすめです。

▼生命保険・損害保険(地震保険)の金額を増やす

 生命保険料や地震保険料で、生命保険料控除や地震保険料控除の金額を増やすことができます。ただし、控除には限度額がありますので、控除の枠がどのくらいあるかを、まず確認しておきましょう。

 この機会に保障を見直して、新たな保険に加入したり、掛金を増やすなどで控除を増やすことができます。ただし、年末間際の加入の場合、年末調整に間に合わないこともありえます。保険料控除証明書の発行については、契約の際に保険会社に確認して手配しておきましょう。勤務先で1月に年末調整をやりなおしてもらうか、確定申告で税金を戻す手続きが必要です。

▼医療費…気になる箇所の治療を受ける

 医療費控除は、その年に支払った分が医療費控除の対象になります。もし、年末に病院で治療して年明けに治療代を支払った場合、年内で未払いだと支払った翌年の医療費控除の対象になります。所得金額にもよりますが、通常10万円を超えた金額が医療費控除になりますので、未払分があれば年内に支払っておきましょう。

 また、気になる箇所の治療を受けておくのもおすすめです。「あと少しで10万円だった」ということもあります。今のうちに通院の交通費や家族の分の医療費の領収書もまとめておきましょう。

▼寄附金、ふるさと納税をする

 ふるさと納税など寄附金控除を活用できます。

 また、税額控除の対象の寄附であれば、所得控除と税額控除とのいずれか有利なほうを選択できます。寄附金控除は寄附先から証明書が発行されます。該当する寄附かどうかは、寄附先のHPや事務局で事前に確認しておきましょう。

 なお、寄附金は年末調整できませんので、ワンストップ納税か、確定申告を行って税金を戻す手続きが必要です。

▼iDeCo、小規模企業共済等掛金に加入する

 iDeCo(イデコ=個人型確定拠出年金)や、自営業の方などが加入する小規模企業共済掛金は、支払った掛金全額が小規模企業共済等掛金控除になります。未加入などで控除の枠がある方は、加入や増額を検討しておきましょう。小規模企業共済等掛金は、1年分を一時払いすることも可能です。月払いから年払いへ変更して来年分を前払いすることで、控除を先取りする方法もあります。ただし、年内の手続期限がありますので、早めがおすすめです。

▼贈与を受ける・贈与をする

 子どもの教育費や住宅購入の頭金など、様々な資金で活用できるのが贈与です。親や祖父母から贈与を受ける、あるいは子どもに贈与をする場合があります。

贈与税は1~12月までの暦年単位で計算され、1年間に110万円までは税金がかからない基礎控除があります。年単位で使えますので、贈与の計画がある方は年内におこなうことを検討されるとよいでしょう。

 また、贈与は110万円までしかできないと思っている方がいらっしゃいますが、そんなことはありません。贈与自体は200万円でもOK、ただし贈与税がかかります。200万円の贈与の場合、贈与税は9万円(=〈贈与額200万円-基礎控除110万円〉×贈与税率10%)です。手元に残る金額を考えると191万円(200万円-9万円)になります。親の相続税が大変で、贈与税を払ってでも、できるだけ早く財産を移転したいという場合に活用される方もいらっしゃいます。

▼配偶者や扶養家族の収入を計算する

 所得控除のうち、配偶者控除や扶養控除は、奥様やお子様の収入によって金額が異なります。

 アルバイトやパートだけでなく、自営や副業の収入も、今のうちにチェックしておきましょう。年末のアルバイトで、大学生のお子様の収入が思ったより多くなり、扶養に入れなかったということもあります。

 もし可能であれば、シフトを調整して年明けにずらすという選択肢もありますが、ムリはせず勤務先での周囲への配慮も忘れずに。

▼所有する賃貸不動産の修繕やリフォームをする

 賃貸不動産を所有の場合、修繕やリフォームを年内に行うことで、不動産所得の経費(修繕費や減価償却費など)を増やすことで、税金を減らすことができます。

▼自営業・副業…年内に備品の買い替えをする

 節税チェックポイント(4)でお伝えしたように、自営業や副業をされている方は、必要経費が控除の対象になります。請求書・領収書は必ず保管しておきましょう。交通費など細かい金額だからと放っておいては、もったいないです。塵も積もれば山となる、です。事業や副業で使うパソコンやプリンタ-など、必要に応じて年内の買い換えを検討しましょう。

 このように、年内に支払ったり「経費に費やす金額」を増やすことで、控除の枠を使い切ることや控除対象額を増やすことができ、節税につながります。ただ、コロナで突然収入が減ったという方もいらっしゃるでしょう。節税になるからと、ムリに購入して、生活費や事業の資金繰りで困ることのないように注意しましょう。

税金の仕組みで「ノーリスク・ハイリターン」

 税制すなわち「税金の仕組み」は、資産運用と同じ効果が期待できます。しかも、「ノーリスク・ハイリターン」です。税の仕組みは条件が合えば適用できる制度で、しかも、確定申告後1~2カ月という短期間で税金が戻る仕組みです。所得税と住民税で合計20%の税率なら、20%の運用利回りで、税金をキャッシュとして手元に戻すことと同じ効果になります。

 「やっておけばよかった…」と後悔する前に、今できることを、一つでもやってみませんか? 是非、知識を味方に付けて、賢くお得に節税しましょう。

中島典子(なかじま・のりこ) 税理士
財産コンサルタント
中島典子税理士事務所 代表。大手外資系会計事務所で国内・国際税務・相続業務等に携わる。独立後、税務・労務・金融・保険のプロフェッショナルとしてオーナー経営者を20年以上支援。現在、起業から税務・CF(キャッシュフロー)経営・資産形成・相続事業承継支援の他、マネーやFP関連書等の執筆監修、企業研修、大学等での金融経済教育講師も務める。社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP)の資格ももつ。

【新時代のマネー戦略】は、FPなどのお金プロが、変化の激しい時代の家計防衛術や資産形成を提案する連載コラムです。毎月第2・第4金曜日に掲載します。アーカイブはこちら