特にキャラクターづけにはこだわった。たとえば衣装。勝家側は青がベースで秀吉側は黄色、どっちつかずの恒興は緑にしている。織田家の人々はみな鼻が高く、羽柴家は耳がでかい。特殊メークなどを用いてありとあらゆるビジュアル面の工夫を施し、「時間はかかったが、歴史ファンとしては楽しくてしようがない。いくらでもいじっていたかった」と振り返る。
もう一つ、映画6作目で初めて役者の芝居を肉眼で間近に見てOKを出した。今までの作品ではモニター越しだったが、「俳優である以上、誰かに見せたいはず。その最初の人物は監督であるべきでしょう。僕のために演技をしてほしいと思ったんです」と言う。
その結果、役所広司が持つコメディアンとしての天性の間(ま)を映像に刻み込むなど、最高の芝居を随所に残すことができた。
「舞台と映画を両方やっていて気づいたのですが、それぞれの強みと弱みがある。舞台はその日限りで、うまくいってもいかなくても次に頑張ろうでいい。でも映画でうまくいかなかったシーンに僕がOKを出したら、永遠に失敗した演技が残る。逆に完璧におもしろいカットが撮れたときは永遠におもしろいわけで、宝物をもらったような気持ちです。いい芝居を引き出すということでは今回、かなりいいところまでいっているんじゃないかという気がしますね」