【著者は語る】法政大教授・水野氏「閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済」 (1/2ページ)


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 □法政大学教授・水野和夫氏

 ■日本のポスト近代化 英知学ぶ一助に

 グローバリゼーションとは、ヒト・モノ・カネの国境を越える移動のこと。中心に富(資本)を収集することで、社会秩序を維持してきたのが西欧文明です。周辺国から富の収奪を続け、常に膨張し続けてきた経緯が、歴史には刻まれています。

 例えば、16世紀のスペイン帝国による陸の帝国(中世封建システム)からオランダや英国による海の帝国(近代世界システム)への大転換、19世紀の動力革命(鉄道と運河の時代)、20世紀のIT革命など。資本主義は「より速く、より遠くへ、より合理的に」を目指して、成長し続けました。しかし20世紀後半、テロリズムの激化(政治不安)、ゼロ金利という危機を迎えると、米国は自国第一主義を前面に打ち出し、英国は欧州連合(EU)を離脱しました。グローバリズムの旗振り役だった英米両国が、共に世界に対して「閉じる」選択をしたのです。この資本主義の終焉(しゅうえん)という危機を乗り越えるために、どんなシステムが必要なのか。中世・近代の経済史を参照しながら、現在の世界情勢を把握し、そこから日本の進むべき方向を探るのが本書の狙いです。

日本の役割は「よりゆっくり、より近くに、より寛容に」