ワンルーム投資は「年金代わり」になるか 結論は「検討にすら値しない」 (2/2ページ)

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 成功者であれば一顧だにもしない

 年金代わりになるという文句も、大いに疑わしい。35歳からの30年でローンを返済するとして、手元に残るのはローン負担の分目減りした老後資金と、築30年の老朽物件だ。新築時と同じ家賃では借り手はつかないだろうし、リフォームすればその費用の回収にまた時間がかかる。

 いやになって売りに出しても、投資用ワンルームマンションはほかのタイプの物件より買い手がつきにくく、その分買い叩かれやすい。最近のマンション市場が高値圏で推移していることを考えれば、10年後には売り値が購入価格の半額以下になっていてもおかしくない。

 地方でのセミナーで参加者から相談された中に、ある一家のご主人が、家族に黙って東京のワンルームマンションに投資していた事例があった。

 一家で自宅の建て替え話を進めていたところ、問題の投資のローンが残っていたせいで新しいローンの審査が通らず、発覚したらしい。ご主人はそれこそ「老後の足しに」と思ったのかもしれない。だが、遠隔地だからと物件を見もせずに投資を決めただけあり、立地も収益性もいまひとつ。しかもその時点での売り値はローンの残債分にも満たず、老後資金を取り崩して穴埋めしなければ売ることもできない状況だった。

 投資金額が大きく、流動性も低い不動産投資には、ほかの金融商品とは異質のリスクがある。業者の口車に乗らない自信がないなら、そもそも手を出すべきではない。

 「サラリーマン大家」の中でも達人と呼ばれる人々は、常に勉強や物件見学を怠らず、プロも顔負けの鑑識眼と熱意をもって物件を選び、資金計画を立て、管理している。不動産投資を心から愛するそんな彼らも一顧だにしない案件が、新築のワンルームマンションなのだ。

 (ファイナンシャルプランナー 深田 晶恵 構成=川口昌人)(PRESIDENT Online)