こだわりの味を届けたい、静岡「由比缶詰所」 昔ながらのツナ缶が人気 (1/2ページ)

コンベヤー上でマグロのうろこや小骨を取る作業員=静岡市清水区の由比缶詰所
コンベヤー上でマグロのうろこや小骨を取る作業員=静岡市清水区の由比缶詰所【拡大】

 濃厚なにおいを漂わせる蒸した魚が、コンベヤー上でうろこや骨を取り除かれていく。駿河湾に面した小さな港町、静岡市清水区由比で戦前から缶詰を作り続ける「由比缶詰所」。従業員約100人の工場で昔ながらの素材にこだわって作られるツナ缶が、地元の人だけでなく、全国の消費者から広く支持されている。

 工場はブランド名にもなっている白い帆船のイラストが目印。ここで作られる「ホワイトシップ印 まぐろ油漬」は、日本近海で取れるビンチョウマグロと、綿の実から作られる綿実油を使用。魚肉と油をなじませるため出荷まで半年ほど倉庫で寝かせ、あっさりと仕上げているのが特徴だ。「このツナ缶だけは胸焼けせずに食べられると言ってくれるお年寄りもいる」と、営業課長の川島大典さん(37)は胸を張る。

 昭和8年の創業間もない頃、主に欧米向けに作り始めたが、45年前後にいったん途絶えた。円高で輸出が下火となり、国内向け生産にシフトした大手メーカーの下請けに入ったためだ。

 安く大量に生産するため、魚は赤身のキハダマグロやカツオに、油も安価な大豆油に置き換えられた。ツナ缶になじみのなかった当時の日本に広く流通させる狙いもあったが、かつての味わいは失われてしまった。

「せめて自分たちの友人、親戚に胸を張って渡せる一品を」