組合の集まりに顔を出しても「おれが、おれが」 旧職の地位にしがみつく“定年あるある” (6/6ページ)

 私が在職中、退職した人が会社に立ち寄ることはあった。そのときは、懐かしかった。が、ほとんどの人は退職後、一度も来なかった。潔い人たちである(なかには顔を出しにくい人もいたと思うが)。のこのこと会社に顔を出していたのは私ぐらいだったのではないか。本人にそのつもりがなくても、「OBヅラ」をしていると見られてもしかたないのである。会社がうまくいかず、他社に買収されて移転してからは行かなくなった。いまでもその会社のことが気にはなっているのだが。

 定年退職に際して、こういう言動も避けたいものである。定年直前は、こんな会社さっぱり辞めてやるよ、となんの未練もないようなことをいっていたのに、定年後も何食わぬ顔をしてちゃっかりと居座ることである。さっぱり辞めていったなあ、と思ったら、定年前からあちこち動いて、しっかりと転職先を決めていたヤツもいる……。

 ■勢古浩爾(せこ・こうじ) 1947年大分県生まれ。明治大学政治経済学部卒業。洋書輸入会社に34年間勤務ののち、2006年末に退職。市井の人間が生きていくなかで本当に意味のある言葉、心の芯に響く言葉を思考し、静かに表現しつづけている。1988年、第7回毎日21世紀賞受賞。著書に『結論で読む人生論』『定年後のリアル』(いずれも草思社)、『自分をつくるための読書術』『こういう男になりたい』『思想なんかいらない生活』『会社員の父から息子へ』『最後の吉本隆明』(いずれも筑摩書房)、『わたしを認めよ!』『まれに見るバカ』『日本人の遺書』(いずれも洋泉社)など。