なぜ自衛隊は休むことを「命令」するのか ビジネスマンが知らない戦力回復とは (6/7ページ)

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 ここでは具体的に、東日本大震災のときの「戦力回復」についてお話ししましょう。未曾有の被害をもたらした大震災という「戦争状態」において、自衛隊はどのように「戦力回復」を行ないつつ、10万人の隊員のパフォーマンスを最大限に上げたのでしょうか。

 東日本大震災の災害支援では、活動の長期化が予測されていました。実際に「戦力回復」が行なわれたのは、任務の中心が人命救助・探索活動から被災地支援に移りつつあった、発災約2週間後の3月下旬。それまでは給食や入浴を制限され、余震の恐怖、二次災害の危険性、さらにはほとんどの隊員が経験したことのないご遺体と直接向き合って収容・搬送を行なうという、とてつもなく厳しい環境下で自衛隊は任務を遂行していたのです。

 自衛官はスーパーマンではありません。隊員個々の心身のリフレッシュを行なうことが「戦力回復」であり、その手立てとは、睡眠と、新鮮で美味しい食事、そして休養でした。その拠点として、被災地外の遠距離ではない、比較的多数の部隊を収容できる施設がある大規模な七つの駐屯地を「戦力回復センター」に指定して開設しました。

 大所帯のセンターでしたが、現場から離れて少しはリラックスできたものと思います。個人ごとに休めればベストですが、逆に、ご遺体と直面してきた経験やつらさを、同じ経験をしてきたグループで車座になって話し合うことで、精神的に解放されたという話を、当時はたくさん聞きました。

「休む」ことの真髄は「戦略の成功確率を上げる」