【著者は語る】エッセイスト、女優・一青妙氏「『環島』ぐるっと台湾一周の旅」

 ■新しい旅のスタイル・概念を提案

 「環島」は中国語で、ホワンダオと発音し、島を一周することを意味する言葉だ。

 台湾の面積は九州ほどの大きさ。中央には台湾山脈が通っているため、都市は山を巡るように形成されてきた。海岸線に沿って道路や鉄道が走っている。一周すれば約1000キロメートルだ。

 台湾で環島は、10年ほど前からはやりはじめた。今では、成人式や大学卒業の際に行う一種の通過儀礼となるほど定着している。

 一方、日本では、3・11東日本大震災をきっかけに、台湾ブームが起きた。年末年始の人気海外旅行先でナンバーワンとなり、台湾特集を組む雑誌やテレビ番組も後を絶たない。台湾リピーターが増えるなか、もっと人と違う台湾を楽しみたいと感じている人も多くなってきたのではないだろうか。

 本書は、筆者の自転車による8泊9日の台湾一周の体験記が中心となっている。なぜ環島という行為が台湾人の心をつかんで離さないのか。環島にまつわる台湾の歴史も織り交ぜつつ、環島で出会った台湾のリアルな姿を伝えたつもりだ。鉄道やバス、車に乗った環島の方法も書いている。

 台北や高雄など、台湾の西側では見ることのできない壮大な景色が、東側には広がっている。山の奥地に入らなければ出会えない先住民の暮らしがある。台湾のおいしいものは、小籠包やマンゴーのかき氷に限らない。台湾をぐるっと一周すれば、各地の文化の違いや食の豊かさ、美しい風景など、新しい台湾が見えてくる。

 また、2月に地震によって大きな被害を受けた花蓮を、環島で訪れてはどうだろうか。花蓮は観光が産業の中心だが、地震でキャンセルが相次ぎ、大きな打撃を受けた。地元の人々にとっての励みは、被害への対応が一段落したあと、花蓮を人々が訪れ、活力をもらうことだ。

 日本からの開拓移民が残した神社や移民村を回り、日本と深い繋がりのある花蓮スイーツを堪能するのもいい。自転車を借りて、平原地帯「花東縦谷」のグリーンの美しい景色の中を疾走するのも気持ちがいい。

 台湾を旅する新しいスタイルとして、「環島」という概念をぜひ取り入れてもらいたい。環島の先に、必ず、もっとワクワクがいっぱいの、あなただけの特別な台湾が見つかるはずだ。(1404円、東洋経済新報社)

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【プロフィル】一青妙

 ひとと・たえ エッセイスト・女優・歯科医として活躍。台湾人の父と、日本人の母との間に生まれ、幼少期を台湾で暮らす。現在、台南市親善大使に任命され、日台の架け橋となる文化交流活動に力を入れる。家族や台湾をテーマにエッセーを執筆し、著書の『私の箱子』『ママ、ごはんまだ?』(ともに講談社)を原作にした日台合作映画『ママ、ごはんまだ?』がある。趣味はサイクリング。台湾をはじめ、日本各地を走り、四国一周サイクリングPR大使も務める。他の著書に『わたしの台南』(新潮社)など。