「望まない仕事」が人を磨く あのジャーナリストからみる「左遷の効能」 (1/4ページ)

 異動に不満をこぼす「3割増し」の原則

 3月は人事の季節。花形部署への異動が決まって喜ぶ人もいれば、希望がかなわず落ち込む人もいるだろう。「低い役職や地位に落とされる」という意味で、「左遷」という言葉も使われる。しかし、これは不思議な言葉だ。私は著書『左遷論』(中公新書)で徹底的に考察した。

※画像はイメージです(Getty Images)

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 そのひとつは「社長経験者も左遷されている」という点だ。日本経済新聞の朝刊には「私の課長時代」という人気連載がある。過去の記事が『それでも社長になりました!』『同2』として書籍化されており、2冊で計77人の企業トップが登場している。この2冊で「左遷」の登場を調べてみると、文言が直接使われていたのは2カ所だけだったが、数人が「窓際部署」に「飛ばされた」といった不本意な人事を受けた経験を述べている。

 登場する77人は、結果的に全員が社長に抜擢されている。大企業の厳しい出世レースで、役職や地位を落とされたとは考えづらい。抜擢の反対が左遷だと思われるかもしれないが、抜擢は対外的にも明確であるのに対して、左遷は社内の組織やポストに対する受け止めの問題なのだ。

 周囲からの評価に対して自己評価は高くなりがちだ。かつて私は保険会社の支社次長時代に20人程度の人事異動を行った。業務に支障はなかったのに、異動になった社員の7~8割が不満を持っていた。納得がいかなかったので、対象者1人1人に改めて話を聞いた。すると、私や人事部の把握する評価に対して、社員自身の自己評価は3割程度高いことが分かった。会社員は「上司が自分を正当に評価してくれていない」とよくぼやく。その心情には、この「3割増しの原則」が隠れている。

日本独特の雇用システムが左遷を呼び込む