人口構造に合わせ医療再編必要 産業医大・松田晋哉教授

 2025年のあるべき医療の体制を各都道府県が示した「地域医療構想」で、構想策定に向け政府の専門調査会で中心的な役割を担った産業医大の松田晋哉教授に聞いた。

 --なぜ医療提供体制を再編すべきなのか

 「これから日本は経験したことのない人口構造の変化を迎える。75歳以上の人がものすごく増え、医療のニーズが変わってくる。要介護高齢者の脳梗塞や肺炎、骨折などが増え、退院後の在宅医療を支える病院が重要になる。それに合わせて将来の提供体制を変えないといけない。病院と在宅医療、介護がネットワークで動く必要がある」

 --政府の専門調査会が15年に示した病床の将来推計は、25年に15万床以上の病院ベッドが不要になるとの内容で、医療現場から反発が出た

 「『医療費抑制のための病床削減計画』と報じられたが、違う。人口構造の変化や、疾患ごとに医療機関にかかる人の割合から推計すれば、重症患者向けの急性期病床のニーズはおのずと減る。地方では人口減で既に過剰な病床も見られる」

 「推計で示した数字を実現することが地域医療構想の目的ではなく、それぞれの地域で将来どういう医療提供体制が必要になるか、みんなで考えようということだ」

 --構想の実現に向け医療や介護、行政の関係者が話し合う各地の「調整会議」は議論があまり進んでいない

 「各病院の機能別の病床数や稼働率、疾患ごとの治療実績などさまざまなデータをきちんと分析し、皆で冷静に課題を話し合うことが調整会議の一番重要な役割。それがまだできていないところが多い。各地の医師会がリーダーシップを取って議論を進めてほしい」

 --構想実現の見通しは

 「公立病院が主体の欧州のように国が強制的にシステムを変えるのは難しい。日本は民間病院が中心だが、民間は需要に応じ柔軟に変わる賢明さを持っている。データを基に情報を提供すれば徐々に進んでいくと思う」

 --住民は病院の縮小に不安を感じている

 「例えば一つの病院を維持するのにどれだけお金がかかっているのか、受益と負担の関係の透明化が必要だ。私たちは赤字国債を発行して子供たちに借金を背負わせている。病院の適正配置について国民も正しい理解を持ってほしい」

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【プロフィル】松田晋哉

 1960年岩手県生まれ。産業医大卒。京都大で博士号取得。専門は公衆衛生学。