減酒外来 半年間体験、自分に向き合う 正直に記録、体の変化を実感

酒量を記録したスマホの画面を見ながら「減酒外来」担当の湯本洋介医師(左)と話す鎮目宰司記者=3月、神奈川県横須賀市
酒量を記録したスマホの画面を見ながら「減酒外来」担当の湯本洋介医師(左)と話す鎮目宰司記者=3月、神奈川県横須賀市【拡大】

 酒の飲み過ぎは毒。知ってはいるが適量が分からず、「しまった」と思う場面も増えてきた-。そんな記者(44)が、国立病院機構久里浜医療センター(神奈川県横須賀市)に国内で初めて昨年開設された「減酒外来」に半年間通い、自分の飲酒行動に向き合った。

 もともと酒は強くないが飲む機会は多く、40歳前後から酒量が増えた。仕事帰りの電車で500ミリリットル入りの缶ビールを空け、駅前のコンビニで追加購入も。夕食後はウイスキーを何杯か。合計アルコール量は100グラム近い。これをほぼ毎日繰り返していた。

 夕方になると飲みたくなる。酔っぱらって財布をなくした。小学生の息子をナイターに連れて行ったが、球場で飲み過ぎてその後の記憶がない。「ブラックアウト」と呼ばれる危険な症状だ。

 さすがに不安になったのが昨年春ごろ。ネットで見つけた問題飲酒判定のテストをやってみたら「依存症疑い」をぎりぎり下回る「危険な飲酒群」。大ショック。自分の飲酒が危険な領域にあると初めて自覚した。そんな時、取材した医学関係の学会でアルコール依存症に対する減酒治療が話題になっていた。

 ◆「依存症の疑いなし」

 依存症の治療は断酒が基本だが「それだけで十分か」「依存症予備軍の人たちに、いかに早めに治療を受けてもらうか」。議論の内容が人ごととは思えず、同年7月、久里浜医療センターの減酒外来を取材で訪ねた。

 担当医の湯本洋介さんらの話を聞いて記事を書く一方、「自分もこれで変われるかも」という気持ちが芽生えた。受診を申し込み、10月にスタート。通常は、約2カ月ごと計4回の通院で“卒業”となるという。

 初回は家族構成や飲酒歴のほか「お酒とどう付き合いたいか」など大量の質問票。採血に検尿、血圧や身長、体重も測る。続いて看護師さんと面談。家族の飲酒や病歴、同居かどうかなど、立ち入った質問も多い。

 そして診察。前夜の飲み会でかなり飲んでいたため緊張したが、優しい低音の湯本医師は患者を責める言い方はしない。

 「依存症の疑いはありません」「ただし、1回に飲む量は多いです」

 ◆量を気にし歯止め

 一般に「適切な飲酒量」とされるのはアルコール量20グラム程度まで。500ミリリットル缶ビール1本分だ。「毎日40グラム飲むと体に害が出ます」と湯本医師。

 ほかに勧められたのは「アルコール量は多くても週210グラム、1日60グラムを超えない」「酒量を記録する」「たくさん飲んでしまっても正直に話す」などだ。

 実はスマホで昨年5月末から飲酒量の記録を始めていた。アルコール量も計算してくれる。量を気にして入力すると確かに歯止めがかかりやすい。アルコール量は月500グラム前後に落ち着いてきた。かつては1週間で飲んでいた量。以前よりも少量でいい気分になれるようだ。診察で湯本医師は「今のペースでいいですよ」など、良い点を見つけて助言をくれる。

 今年3月の4回目の診察で一応の区切りを迎えた。半年で10キロほど体重が減るおまけもついた。

 振り返ると、怖いのは自分につくうそ。飲酒量を少なめに記録したくなるが、取材した依存症と闘う患者さんたちの体験談を思い出し、うそはつかずに済んでいる。

 仕事がらみの飲み会では1日で100グラムを超えたり、自分で決めた「2日飲んで2日休む」が守れなかったりすることもある。ビールはめったに口にしなくなり、ノンアルコールビールと和菓子が新しい相棒になったが、この先も減酒を続けられるのか不安はある。もっともこんな記事を書いた以上、後戻りできないのだが。(共同 鎮目宰司)