パーソナライズしたクルマをもつオーナーは、クラシックカーや派手なスポーツカーなどのコレクターでないかと勝手に思っていた。
しかし、カロッツェリアのカスターニャ・ミラノのオーナーで、チーフデザイナーのジョアッキーノ・アカンポーラから話を聞き、ぼくの認識が間違っていたことを知った。
ジョアッキーノはこう語る。
「私たちの顧客は、ガレージに数台のクルマを置いているが、何十台とコレクションする人ではない。ベントレーやロールスロイスをもち、それにレンジローバーやミニ、そしてスマートやフィアット500のカスターニャ版を持っていたりする」
そして、次のように続ける。
「美術品も美術館にあるような作品が広大な自宅に何気なく飾ってあるが、膨大な量というほどでもない。特徴としては、それぞれの作品の入手にストーリーがあることかもしれない」
カスターニャ・ミラノは1848年設立の歴史あるカロッツェリアである。王侯貴族の馬車の製作からはじまり、サボイア王国女王がカーレースに出場するためのクルマもカスターニャ製なら、アルファロメオのクルマをベースにした世界で初めてのミニバンもカスターニャが作った。1930年代にはイタリアの最大手でもあった。
第二次世界大戦後、重要市場であった米国でのビジネスを失う。1980年代にカスターニャ・ミラノは窮地に陥る。ミラノ工科大学で建築を勉強し、フィアットで仕事をしながらカーデザインを学んだジョアッキーノは1994年、カスターニャを買い取る。