始まる「がんゲノム医療」(下)血液で細胞の変異把握 (4/5ページ)

血液検査で個々の患者に最適の薬を見つけられるか。リキッドバイオプシーに期待が集まる(写真はイメージです)
血液検査で個々の患者に最適の薬を見つけられるか。リキッドバイオプシーに期待が集まる(写真はイメージです)【拡大】

 大腸のがんを切除した後、一般的に使われる抗がん剤が効いて腫瘍が縮小。肝臓と肺のがんも切除できた。だが、半年程度で再発。別の抗がん剤を使い、しばらくは落ち着いていたが、2年前、再びがんが大きくなり始めた。また別の薬剤を使ったり、以前に効いた抗がん剤も使ったりしたが、効果は出ず、大腸がんに一般的に使われる抗がん剤のほぼすべてを使い果たした。

 主治医から「乳がんの薬が効くかもしれない」と言われたのは今年1月。血液検査や細胞検査の結果、ある種の遺伝子異常があることが分かったからだ。

 大腸がんの患者には少ないが、乳がんの患者には多い遺伝子異常で、乳がんには保険で使える薬がある。同じ薬を大腸がんでも保険で使えるようにするための「医師主導治験」に参加を打診され、即答で承諾した。鈴木さんは「もう薬はなかった。別の治療法があるというだけで希望を持てた」と振り返る。

 遺伝子異常が同じなら、場所の異なるがんにも同じ薬が効くかどうかは今後、一定規模での治験による検証が必要だ。鈴木さんの場合は、1カ月後には、それまで上がる一方だった腫瘍マーカーの数値が下がった。肝臓の腫瘍の画像も見て分かるほど小さくなった。その後、数回の投与を受け、今は基準値にまで下がった腫瘍マーカーもある。

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