企業の基幹システムからオフィス空間のデザイン、学校現場のICT(情報通信技術)環境の構築など、ICTやネットワーク事業を展開する内田洋行が、企業の“働き方変革”をサポートする取り組みを強化している。1989年、次世代のオフィスや働き方を考えるための専門研究部門「知的生産性研究所」を創設した。それから30年。人口減少などへの対策として打ち出された“働き方変革”への対応は、今や時短ではなく、その先にある“新たな価値創造”を促す働き方、環境、体制づくりが注目されている。
実績をもとに最適な働き方を提案
IoT(モノのインターネット)、ビッグデータ、人工知能(AI)、ロボットなど最先端のテクノロジーによって産業構造が大きく変化している。働き方変革の狙いは、従来の働き方では急速な社会環境の変化に対応しきれなくなったということが、その根底にあると考えられる。残業を含む長時間労働の是正と、勤務する時間に縛られない多様な働き方を可能にすることで女性や障がい者らの経済社会での活躍を促すことにある。おのずと、生産性を高めるオフィスづくりや組織のあり方が求められることになる。
ところが、この組織力の強化を突き詰めていく過程で、働き方の変革に対して「多くの企業が時短を超える大きな目的を持っている」(平山信彦・執行役員知的生産性研究所所長)ことがわかってきた。
知的生産性研究所が2010年から17年までの間にコンサルティング・サービスを提供した160件以上の実績をもとにまとめた「働き方改革」に関する研究発表によると、改革の目的を「時短・業務の効率化」としていた案件は全体の2割(複数回答)に満たなかったのに対し、トップの「社内コミュニケーションの強化」は同5割(同)に迫る。これに続く「イノベーション創出力・創造性の強化」も4割(同)を超えている。