最近、日本は好景気といわれます。しかし、どこか上っ面な感が否めません。これからの日本にとって何が一番大切なのか。それを考えるための最良の一冊が本書です。
「日本人の強みは何か。これまで、いろいろな機会を捉えては、そのことについて語ってきた。だが、いの一番を挙げるとするならば、やはり『情』ではなかろうか」
日下公人先生は、本書の冒頭で、そう喝破されます。
なぜ「情の力」が日本にとって大切か。それは、以心伝心、直観力、情報読解力、組織力、仲間意識など、これまで日本が得意としてきた数多くの能力が、「情」から生み出されるからです。「情」を知った人間こそが、相手の心を感動させ、味方にし、動かすことができます。さらに「情」こそが、創造力やひらめきをも生んでいくのです。
「情」は、なかなか文章では表しにくいもの。しかし日下先生が数多くの事例を挙げて「情の力」の重要性を論証していく流れは圧巻です。「情の力」は、合理性や効率化、論理的思考などといった西洋流の思考法よりも、はるかに高度な手法で、日本が世界で圧倒的に強かったのも、日本人がこれらの手法の達人だったからだ-そう心の底から納得できる、日下「日本論」の新境地といえます。