【書評】『素子の碁 サルスベリがとまらない』新井素子・著


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 ■伝統文化に未経験者いざなう

 囲碁歴15年、現在の実力を二級と謙遜する著者が、囲碁の専門週刊誌に連載した作品をまとめた。

 漫画「ヒカルの碁」をきっかけに、40歳を過ぎてから夫と始めた趣味。仲間ができて少しずつ強くなっていく過程や、プロ棋士を目の前にして興奮するさまなど、筆致は喜びにあふれている。

 一方で、タイトルにもなっている特殊な用語の数々に、入門当初は混乱したことを率直に記す。そんなドタバタさえSF&エッセーの名手が愉快な読み物に昇華させた。強くない立場での視点を貫き、未経験者を伝統文化へいざなう。(中央公論新社、1836円)