【ニッポンの議論】「法的制度の構築不可欠」「導入には多くのリスク」…共同親権導入是か非か (2/4ページ)

武蔵大学の千田有紀教授(左、桐山弘太撮影)と東京国際大学の小田切紀子教授(右、小野田雄一撮影)
武蔵大学の千田有紀教授(左、桐山弘太撮影)と東京国際大学の小田切紀子教授(右、小野田雄一撮影)【拡大】

 --子供の連れ去りや配偶者間紛争の深刻化の防止、別居親と子供を定期的に会わせる面会交流の円滑な実施のためにも、日本は共同親権を導入すべきだという声がある。欧米での共同親権とはどのようなものか

 「子供は両親からの愛情を受ける方が心身ともに健康に育つという科学的知見に基づくものだ。ただし注意すべきは、欧米でも『選択的共同親権』だということだ。DVや深刻な薬物依存などの問題を抱えた親がいる場合は、単独親権が選択されたり、面会交流が制限されたりする。しかし日本では、親権とは『親の子供に対する権利』だと考えられがちだ。そのため配偶者間で親権の奪い合いが起きやすい。しかし欧米では、親権とは『子供を監護・教育する義務』とされる。だから両親が持つのは当然だと考えられている」

 --日本も今後、共同親権の導入を検討すべきか

 「親権をめぐる対立を防ぐためにも将来的には導入が望ましい。共同親権とは要するに、配偶者間の葛藤が強い場合でも、『子供に関しては、父親と母親が協力して育てましょう』という制度だ。ただし、導入の前提として、共同親権を支える法的制度の整備が不可欠だ。面会交流時に子供の安全を守るための公的機関の関与制度や、金銭トラブルを防ぐための国による養育費の立て替え制度など、整えるべき社会インフラは多い」

武蔵大教授の千田有紀氏に聞く