
武蔵大学の千田有紀教授(左、桐山弘太撮影)と東京国際大学の小田切紀子教授(右、小野田雄一撮影)【拡大】
武蔵大教授 千田有紀氏
--親権をめぐる配偶者間の争いは従来、母親側が有利とされてきた。しかし最近は父親側に有利な判例が出るなど、潮流が変化している
「母性優先の原則の消滅は国際的な潮流だ。以前は父親しか取れなかった親権が、先の大戦後、母親にも拡大された。諸外国ではその後、共働きモデルへの転換があり、父親の権利拡大運動が起きた。日本でもここ10年ほどで同様の転換があった。現在は親権者決定に際して養育環境など多くの要素が考慮されており、母親という性別に親権が与えられているわけではない」
--父親が「母親に子供を連れ去られた上にDVを捏造され、不当に親権を奪われた」と主張する事例が多い
「虚偽のDVや『親権を不当に奪われる』ケースがどれほどあるのかは不明なのが実情だ。DVの線引きは容易ではないという問題もある。加害者にDVをしている認識がない場合や、被害者がDVを受けていると認識しておらず、DVチェックリストなどを見て初めてDV被害に気付く場合もある」
--国内外から「誘拐である子供の連れ去りを日本は容認している」との批判も出ている
「ある意味で一面的な見方だ。欧米では、裁判所の命令などによりDV加害者を自宅から引き離す法律が制定されている。しかし日本ではDV被害者は自ら自宅から避難するしかない。その際、子供を置いていけばネグレクト(育児放棄)になってしまう」