
武蔵大学の千田有紀教授(左、桐山弘太撮影)と東京国際大学の小田切紀子教授(右、小野田雄一撮影)【拡大】
--共同親権が導入された場合、別居親と子供の面会交流の原則的義務化が同居親に課される可能性がある
「機械的な面会交流の実施は危惧する。暴力や虐待の問題が懸念されるためだ。さらに子供が別居親と会うことを嫌がっている中で裁判所が面会交流を命じると、将来的に関係が破綻しやすいという米国の調査もある。別居親が子供に会いたいと思うのは当然だが、一歩引くことが長期的には良い関係構築につながることもある」
--共同親権の導入については
「安易な導入には賛同できない。欧米とは異なり、離婚は避けるべきものと考える風潮が今も強い日本で離婚や別居に至るのは、配偶者仲が相当行き詰まり、強度の紛争状態に陥っている場合が多い。相手への未練や憎しみが募っている状態で『子供のためだけには協力しよう』と合意するのは難しい。面会時に配偶者や子供に危害が加えられる恐れがあり、実際に殺人事件も起きている。また、子供を監護していない別居親に法的な権利を与えることの是非の問題もある。離婚・別居後の子供との関係は個別ケースごとに考えるべきだ。個々の親の監護のあり方を第三者が監視・介入する制度がほぼ存在しない現状で、共同親権を法制度として導入するのはリスクが高い」
【プロフィール】
〈おだぎり・のりこ〉昭和36年、東京都出身。東京都立大(現首都大学東京)大学院人文科学研究科博士課程修了。児童相談所心理判定員などを経て、東京国際大人間社会学部教授。著書に「家族の心理」など。
〈せんだ・ゆき〉昭和43年、大阪府出身。東大大学院人文社会系研究科博士課程修了。東京外大准教授などを経て、武蔵大社会学部教授。専門は家族社会学。著書に「日本型近代家族」「女性学/男性学」など。