【著者は語る】木通秀樹氏 『IoTが生み出すモノづくり市場』

日本総合研究所創発戦略センター部長・木通秀樹氏
日本総合研究所創発戦略センター部長・木通秀樹氏【拡大】

 □日本総合研究所創発戦略センター部長・木通秀樹氏

 ■11業種の取り組み俯瞰し本質を理解

 本書のテーマは「モノづくり企業がIoTでいかに成功するか」をお伝えすることです。

 IoT(Internet of Things:モノのインターネット)というと、IT業界の新たな商品を想像する人が多いかもしれません。確かに、「IoTで蓄積したビッグデータをAIで分析」や「自動運転車へのプラットフォーマーの参入」など、IT業界の話題が多いのが現状です。しかし、本質を理解すると、IoTはモノ(Things)側の発展にこそ真価を発揮することが分かります。

 IoTの理解には、同業他社の取り組みに限らず、多くの業界の動向把握が有効です。そこで、本書では11業種でどのように取り組まれているかを俯瞰(ふかん)的に紹介しています。

 大きく2つのことが分かります。一つはIoTの事例はいくつかのパターンの組み合わせでできていること、もう一つは、いくつかの業界が類似の展開をして新たな事業領域が生まれようとしていることです。

 IoTはさまざまな企業のバリューチェーンが直接結びつくことで新たな事業領域を生み出します。現在のIoTの盛り上がりは、ベースとなる技術の急速な進化に支えられて生み出されています。進化の必然性がどこにあるかを把握すると、今後どのように進化していくかも見えてきます。本書では、こうした技術に関する視点も紹介しています。

 また、IoTの発展にはステップがあります。まず、事業価値を構成するモノについて徹底的に理解し分析します。次に、顧客や関係者の信頼性を確保してデータを直接連携し、新しい価値を提供する事業が始まります。その上で、新たなバリューチェーンに対応することでモノの改革を行って価値を拡大していきます。

 こうした変革の中で、モノの価値はモノを含むサービスなどの仕組みの価値に変化します。その過程でモノづくり企業はサービスなどの事業も展開していくことになります。新たな事業展開の中、モノづくり企業にとってIoTは事業リスクを最小化するツールとなります。

 大企業だけでなく、モノづくり企業全体を巻き込んだ事業環境の変化に向けて、本書をご参考に準備を進めていただければと思います。(1944円 日刊工業新聞社)

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【プロフィル】木通秀樹

 きどおし・ひでき 日本総合研究所創発戦略センター部長(IoTシステム推進担当)。慶応大学理工学研究科後期博士課程修了(工学博士)。1988年石川島播磨重工業入社。知能化システム研究開発、各種ロボット、プラントの制御システム開発を歴任。2000年日本総合研究所入社。新市場開拓を行う社会システム構想や新事業開発を担当している。著書に「『自動運転』が拓く巨大市場」(共著、B&Tブックス)、「IoTが拓く次世代農業 アグリカルチャー4.0の時代」(共著、日刊工業新聞社)など。