【きのうきょう】セミの兄弟

 東京都豊島区 橋本寿美子 75

 猛暑の日。ベランダの壁にドスンと、何かがぶつかる音がした。戸を開けてみると、腹を上にしたセミが横たわっていた。返すために手で触れようとしたが、バタバタ騒ぐ。網を使って押さえたら、しばらくは腹ばいになっていたが、飛ぼうとしない。長方形の植物の鉢の上に置いた。噴霧器で1メートルほど上から水を吹きかけたら少し動いた。噴射を何度かするとセミはグァグァと小さな声を出しゆっくりと動く。が、飛ばない。鉢の縁まで来て、前足を交互に上げてグァグァと鳴いている。夜になっても小さな声が聞こえていたが、朝には聞こえない。急いでベランダに出てみた。セミを手に持ち杉の木につかまらせると2、3度羽ばたき動かなくなった。

 1週間ほどして近所の路地で、セミがいたので近寄ったがセミはすぐ飛び立った。が、すぐ戻ってきて私の右肩に少し止まり、飛んでいった。猛暑の日のセミの弟があいさつに来てくれたのかな。