【甲信越ある記】長野・旧三笠ホテル 避暑地に集った賓客 息遣い今も (2/3ページ)

軒を支えるブラケット(腕木)は、湾曲していて実に手が込んでいる。太い縁の窓枠と幾何学模様のガラス窓も特徴的だ=長野県軽井沢町
軒を支えるブラケット(腕木)は、湾曲していて実に手が込んでいる。太い縁の窓枠と幾何学模様のガラス窓も特徴的だ=長野県軽井沢町【拡大】

  • ホテルのロビー。14日まで軽井沢彫家具展の会場になっている。訪れた際には、ツルとマツの組み合わせが浮彫りされたカーテンボックスをきちんと見ておきたい。三笠の意匠も施されている

 壁に掛けられたキーボックスも当時のままで、30室あった客室分がそろっていた。ボックスごとに部屋番号の紙が貼られていて、どれも色あせている。すでにはがれ落ちたのもある。そのままにしているからこそ、味わいもまた格別である。

 レンガ造りの暖炉には、黒いすすが染み込んでいた。ホテルの営業は夏の間に限られていたのに、それでも肌寒かったのだろう。避暑地としての軽井沢が、ここからも見て取れる。

 トイレが水洗なのには驚かされた。当時、水洗トイレが日本国内にどれほどあっただろうか。しかも白色のタイルが敷き詰められていて、ピカピカと光り輝いている。聞けば、タイルは英国製なのだそうだ。

 スイートルームが1階に2部屋あって、ベッドや応接セット、洋服ダンスが置かれている。佐藤さんは、家具は当時のものなのだが、おそらくはこんな感じだったのだろうと配置した、と教えてくれた。

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