住民が1人もいない"タワマン保育所"の怪 (3/5ページ)

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 世の中では、「認可保育所至上主義」、要するに認可のほうが認可外よりいい(認可外保育施設はダメ!)という考えがはびこっています。しかし、それは必ずしも正しくありません。いや、もっといえば、認可保育所にこだわりすぎると、実はかえって損をする場合もあるのです。

 まず、一口に認可外保育施設といってもピンキリであるということをみなさんはご存じでしょうか。確かに、認可外保育施設の中には、雑居ビルの一室を託児所にしているような、あまり保育環境の整っていない施設もあります。一方で、認可保育所の厳しい基準のうちわずかな点を満たせないために認可になれない「惜しい」レベルの認可外保育施設も多数あります。

 さらにいえば、認可保育所に準じた保育環境を持ち、認可保育所を目指せるにもかかわらず、特定のマンション住民などを優先的に受け入れるためにあえて認可外のままでいる施設すらあるのです(認可保育所であれば公営民営を問わず、地元の役所から割り当てられた園児を受け入れなければならないため)。

認可と認可外、保育サービスに差

 実は、両者にはこのほかにもう1つ大きな違いがあるのです。それは保育サービスの質。

 誤解しないでいただきたいのですが、ここでいう保育サービスの質とは、保育環境のことではありません。保護者が子どもを預けるという面からの利便性のことをいっています。認可保育所は、繰り返しになりますが、保護者が仕事等で子どもの面倒を見られない時間帯がある(保育に欠ける)から、子どものために多額の税金を投入した「福祉」の一環として預かりますよ、という施設。ゆえに、制度設計や運用がガチガチです。

認可外保育園は保護者ファースト

 一方の認可外保育施設も、子どもの保育を目的としてはいますが、どちらかというと(なんらかの事情で子どもの面倒を見られない)保護者の利便のために子どもを預かるサービスという面が前に出たものです。このため、認可保育所に比べると、さまざまなルールが柔軟で自由度が高くなっていて、保護者にとっての負担が少なく、利便性に優れます。もちろん、各保育園で程度の差はありますが、関係者の間でよくいわれる認可保育所に対する優位性を総合するとざっとこんなところです。

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