【書評】『墓が語る江戸の真実』岡崎守恭・著 愛憎と恩讐の物語を読み解く

 日本経済新聞社で北京支局長や政治部長を務めた著者は、歴史エッセイストとしての顔も持つ。その著者が全国で見て回った墓の中から、特に印象的な墓石と、それにまつわる人物たちの愛憎と恩讐の物語をつづったのが本書である。

 収録は全10話。江戸城「大奥」を確立した女傑、春日局の墓には死後も徳川将軍家を見守るとの執念から穴が空いていたり、幕末に起きた薩摩藩のお家騒動「お由羅騒動」の中心人物となった側室と藩主の墓石は隣り合っていたりと、墓石にまつわる「なるほど」情報が盛りだくさん。墓巡りの案内書としても役立ちそうだ。(新潮新書、799円)