【健康カフェ】(141)アスピリン 心血管病の一次予防効果は?

 他の医院で投薬を受けていた70代女性が私のクリニックを受診しました。薬の内容を確認すると、血圧やコレステロールの薬の他にアスピリンも処方されていました。「脳梗塞の予防のために飲んでおきましょう」と医師に言われたそうで、何年間も飲んでいるとのことでした。

 心筋梗塞や脳梗塞など心血管病を起こした人ではアスピリンが再発を予防することは数多くの研究で示されています。ただ、女性はこれらの病気と診断されたことはないそうです。病気を起こす前に、予防することを一次予防と呼びます。一次予防目的のアスピリン使用は意見が分かれていますが、決定打となりそうな研究結果が9月に著名な医学誌に発表されました。

 研究は、中年以降の欧米人男女1万2千人を対象に、アスピリンの一次予防の効果を5年間にわたり観察したものです。対象者は、高血圧や脂質異常といった動脈硬化の危険因子をいくつか持つ、そこそこリスクの高い人です。この人たちをアスピリンを飲む群と偽薬を飲む群に分け、効果を比較しました。結果は、心血管病による死亡や心筋梗塞といった病気の発症に関して、アスピリン群と偽薬群で差は見られませんでした。一方、アスピリン群では消化管を中心とした出血が増えていました。

 この研究とは別に、糖尿病患者に限定してアスピリンの一次予防に対する効果を検討した研究結果も最近発表されました。結果は、アスピリンを飲むと、心血管病の予防効果を上回る数の出血性の病気が発症していました。

 さらに、健康な高齢者にアスピリンを投与した別の研究でも、明らかな効果が認められなかったことが報告されています。

 これらの結果から、一次予防としてのアスピリン使用は慎重に行うべきでしょう。糖尿病があればしっかり治療し、血圧や脂質の数値をきちんと管理し、禁煙することが心血管病を予防する上でとても大切です。

 冒頭の女性には、血圧も脂質も十分管理できているのでアスピリンはいったんやめることを提案しました。女性は「なぜ服用しないといけないのか、ずっと気になっていたの」と、薬を減らせることを喜んでいました。(しもじま内科クリニック院長 下島和弥)