【ミラノの創作系男子たち】アイデアの源泉はどこに…? とあるデザイナーの日常を覗く (4/4ページ)

 さて彼が気を遣うのは、自分の精神を安定した状態にどう維持するかである。当然ながら、生活をしていれば嫌な目にあうこともあるし、仕事で他人と議論して頭に血がのぼることもある。そうした状態では気持ちのよい作業ができないし、よい判断もしづらい。

 そのとき、ジムに汗をかきにいく。身体を動かすことで、精神的平穏をとり戻す。ストレスを吐き出すメカニズムを「オン」にしておくのだ。週末にスキーやカヌーをやることもあるが、これらは彼にとっての旅と同じで、あまり目的をはっきりさせない気分転換、というのが興味深い。

 ここまできて話が戻るようだが、そういえば、彼は何か規則的にやること、習慣と言ってもよいが、その時間にアイデアの源泉があるようだ。時間の積み重ねのなかで浮上してくるものを一瞬にしてつかみ取るのだろうか。

 毎週土曜日、髭を整えるのも、その1つだ。日曜日の靴磨きもそうである。彼が歴史ある街をクリエイティブ活動の拠点とする理由も、これらの習慣と何か繋がってくるような気がする。

 非日常世界に触れて刺激的なアイデアが出る。人はこう考え期待しやすい。しかし、彼の場合、実は反対だ。日常世界にネタのすべてがある。人に深く問いかけるようなデザインでは、特に、だ。

【ミラノの創作系男子たち】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが、ミラノを拠点に活躍する世界各国のクリエイターの働き方や人生観を紹介する連載コラムです。更新は原則第2水曜日。

 安西さんがSankeiBizで長年にわたり連載しているコラム【安西洋之のローカリゼーションマップ】はこちらから。

【プロフィル】安西洋之(あんざい ひろゆき)

安西洋之(あんざい ひろゆき)モバイルクルーズ株式会社代表取締役/De-Tales ltdデイレクター。ミラノと東京を拠点にビジネスプランナーとして活動。異文化理解とデザインを連携させたローカリゼーションマップ主宰。特に、2017年より「意味のイノベーション」のエヴァンゲリスト的活動を行い、ローカリゼーションと「意味のイノベーション」の結合を図っている。書籍に『イタリアで福島は』『世界の中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』。共著に『デザインの次に来るもの』『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか?世界で売れる商品の異文化対応力』。監修にロベルト・ベルガンティ『突破するデザイン』。
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ローカリゼーションマップとは?
異文化市場を短期間で理解すると共に、コンテクストの構築にも貢献するアプローチ。