藤田尚弓の最強の話し方

上司の「偏った記憶」が意欲を削いでいる 部下の満足度をあげる話し方とは (1/2ページ)

藤田尚弓
藤田尚弓

 気持ちがうまく伝わらない。悪気はないのに相手を不快にしてしまった。皆さんも、そんな経験はありませんか? この連載ではコミュニケーション研究家でアップウェブ代表取締役の藤田尚弓が、ビジネスシーンでの「最強の話し方」をご紹介していきます。

 第17回は、「職場の満足度を上げる話し方」がテーマ。新年は気分が変わり、新しい習慣に取り組むのに適した時期です。この機会に部下に気持ちよく働いてもらうための話し方を意識してみませんか。

 職場への満足度に影響を与える要素については様々な調査があります。経験でわかっていることも多いため、かえってどこから手をつけていいかわからないという人も多いのではないでしょうか。今回は、新年に意識したいポイントとして「印象の偏り」と「部下への無関心」に絞って解説します。

公平なつもりでも印象が偏る!?

 部下の不満を増やしてしまう要因の一つが、上司の評価です。

 「そういえば前にもこれで失敗したよな」「あいつは○○が苦手だからな」など、部下を思い出すときにネガティブなことばかりを思い出してしまうことはありませんか?

 逆に「あいつに任せれば大丈夫だろう」とよい部分ばかり思い出してしまう部下もいると思います。公平に評価をしている人でも、記憶が原因で、私たちは部下に偏った印象を持ってしまうことがあります。

部下への印象が偏る!? 「検索誘導忘却」とは

 私たちは日常の様々な場面で、記憶を呼び起こすという行為をおこなっています。このとき、ある記憶を思い出すという行為を繰り返すと、似ている別の情報が思い出しにくくなるという現象がおきることがあります。

 この現象は「検索誘導忘却」と呼ばれます。これは1994年から1995年にかけてアンダーソンらが発表した論文で示されました。

 部下Aさんの例で解説しましょう。Aさんには、数字に強い、面倒見がよい、粘り強いといった特徴があります。上司が「Aは数字に強かったな」と思い出すことを繰り返すと、その影響でAさんの、面倒見がよい、粘り強いといった他の特性を思い出しにくくなることがあるのです。

 自分は公平な評価をしているつもりでも、検索誘導忘却のせいで、部下の印象が偏ってしまうことがあります。

 プライベートでも「あなたは、いつも遅刻する」といったように、数回の失敗をあたかも毎回かのように言う人がいます。これも「記憶特性」が引き起こした印象の偏りなのかもしれませんが、改善しないと関係性が悪くなるのは誰もが想像できると思います。

 新年は、部下のネガティブ評価についてはあまり口にしないよう気をつけてみてください。評価の高くない部下にも、意識して探せば思い出しにくかった良い部分が見つかるかも知れません。

関心を持っているつもりでも伝わらない?!

 「上司の無関心」も職場への満足度に影響する大きな要因です。さすがに部下の名前と顔が一致しないという人はいないと思いますが、皆さんは部下に関心があることが伝わるような声掛けをしているでしょうか。

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