【滝村雅晴のパパ料理のススメ】(10)酒の肴作る姿で「魚食育」

 幼少のころ、京都の祖母宅に父の兄弟家族が集まり新年を祝うのが恒例だった。京都で食べた雑煮といえば、白みそ・丸もちだ。作り方はシンプル。昆布(こんぶ)とカツオ節でとった出汁(だし)に白みそを溶き、丸もちを入れて煮る。具はもちだけ。器によそいカツオ節をかければ出来上がり。このカツオ節を大晦日(おおみそか)に削るのが、小学生だった私の仕事だった。

 血合いの部分はガリガリと音を立てながらキラキラしたカツオ節が削りだされる。市販のカツオ節のようにフワッとしたものではなく、粉になったカツオ節をたっぷりかけるのが、滝村家の雑煮だった。

 お節料理作りは母たちの仕事だったが、酒の肴(さかな)は父が仕込んでいた。数の子、ナマコ酢、白子ポン酢。どれも子供の頃から食べて、馴染(なじ)みの味になっている。特にコリコリとした食感のナマコが父は大好きだった。私はコタツの上に置かれたナマコ酢を、つまようじで刺しては食べ、大人の楽しみを奪っていた。

 今思うと、随分と海の幸にあふれた正月だった。大人はお節料理と日本酒を楽しみ、子供は酒の肴を食べて大人びた。これがきっかけで、ショウガ、ニンニク、ネギといった薬味が好きになった。父に料理を教えてもらったわけではないが、同じものを作るようになった。先日も、魚屋をのぞいてナマコがあったので買ってしまった。

 子供ながらに記憶に残っているのは、大人が自分で食べたいものを作り、おいしそうに食べている姿だ。子供が好きな料理もいいけれど、自分だけが楽しむ海の幸料理を作っておいしそうに食べる姿を見せることが、一番の「魚食育」なのかもしれない。(パパ料理研究家)